第二十六話 『石造りの密室』
決闘の準備をしている諸葛夢。一方そのころ、掴まれたアンジェリナに何が起こったのか?
気が付いたら、すでに包囲されていた。目の前に、誰かが、自分をかばうように立つ。
人群れの中から、剣を持つ、白い影は歩いてくる。輪郭から見ると、老人のようだ。
ぶすっ
激痛が走る。白い影の剣が自分の体を貫く。
目を覚めたら、今はでかい部屋の中だ。アンジェリナは腹部を触ると、先の殺し屋が柄でぶつかったところは、まだ痛い。
何とか立ち上がり、周りの環境を確認する。
家具も飾りもない、でかい石で作られた空き部屋だ。面積は大体100平方メートルあり、四角形の形をしている。
部屋にもちろん電気もなければ、松明などもなく、しかし暗くはない、一番上のところに、かつて見たことのある、緑が光。
結構高いところにあるので、確かめる術はあるのか、アンジェリナは周りを再度確認する。その時、人声が聞こえてくる。
「意外と目覚めるが早いようだな。」
はわわっとびっくりするアンジェリナ、振り返ると、前の殺し屋が入り口のところに立っている。淡い光で、殺し屋の姿が確認できる。
日本の時代劇でよくある、白と紫二色、侍らしき服装で、同じく紫色の髪を慈姑頭にし、目隠しを着用している。
数歩後退し、深呼吸して、アンジェリナは問う。
「あなた、だれ?なんでアンジェリナを殺そうとするの?」
「殺し屋の前では、冷静だな。死ぬのが恐れんのか」
「取り乱したら、見逃してくれるの?」
「すまん。愚問だったな。拙者は百吼、見てるの通り、殺し屋だ。」
「なんでアンジェリナを殺すの?」
「じきに死ぬぞ?知ってどうする?」
「どうせ死ぬんだから、殺される理由ぐらいは知りたいもん。それに、死人に口なし、秘密は漏らさないわよ」
自分の刀は今まで数えきれないほどの命を奪ったが、死ぬとき命乞いしないのは、一握りの戦士や勇者しかない。
だが、今目の前のか弱い少女から、全く恐怖を感じない。勇敢のゆえか、愚かのゆえか、あるいはいまだに自分は死ねないと信じているのか。
「拙者は雇い主に裏切れぬ信条でな。唯一言えるのは、見てはいけぬものを見てしまった。」
「見てはいけないもの?」
アンジェリナは全力で最近見たものを回想する。異星の探検や、鬼路の調査、そして、殺された親友。
「ちょっと待って、その前に、一つ聞きたい。ベラ、最近ネオシャンハイで起こった六つの首切殺人事件、あなたがやったの?」
百吼はちょっとびっくりするが、すぐ答えた。
「たとえそうだとしても、おぬしは何ができる?あの銀髪の若造が代わりに拙者を成敗するとても?」
「え?うん、どうかな。ムウは来ないかもしれない。この前大ゲンカしたし。」
「助けたくない相手なら、最初の一振りを止めたりはせん。あの時拙者がもうちょっと力を入れたら、若造の指はもう残らん。」
ぼーっとしているアンジェリナを見て、
「そろそろ時間だ。おしゃべりはここまでだ。」
百吼は刀で高いところの石をたたいたら、
ガラララララ、ドカン
分厚い石造のドアが降りる。これと同時に部屋が微かに振動し始め、頭の上から埃が落ちってくる。
頭を上げると、少しずつ、天井が降りてくるのがわかる。
「完全に落ちるのに一時間ぐらい時間がかかる。そこまで若造が助けに来るのを祈るがいい。拙者を倒せたらの話だがな。」
ドアの向こうに、もう声も気配もない。たぶん諸葛夢と決戦しに行ったのだろう。
「えええ、アンジェリナは完全にピー○姫じゃない?あ、いいえ、年齢的に、アテナだね。美少年たちよ、早くアンジェリナを助け出して。
そうだね、ムウは誰ポジション?性格的に、一○かな、一○が一気にアンジェリナを助けた。なんちって」
この時、ダジャレは自分を救えないぐらい、アンジェリナもよく知っている。
どうせなら、この部屋をもうちょっと調査してみよう。抜け出す方法あるかもしれない。腹部はまだ痛いが、歩けないほどではない。
石室の中は、相変わらず何もない。部屋というより、牢屋のほうが正しい。本来なら、どっかに石像とかがあって、頭を正しい方向に捻じれば、ゴマダレっという効果音で隠し扉が開けると、アンジェリナは妄想した。
先確認したかった緑の光だが、4、5メートル以上高いところにあるから、今は確認しようもない。
ここで一つの疑問が浮かぶ。この石室は一体何のために作られたのか。神殿?貯蔵庫?牢屋?それとも墓?
神殿にしては素朴すぎて、なんの作りこみもないのが不自然だ。倉庫だったら降りてくる天井が意味不明すぎる。
では一種の賭けをしようと、アンジェリナは思う。ここはもしかして墓の牢屋ではないかと判断する。
墓荒れし対処のために作ったトラップの部屋、いいえ、ドアは1か所しかないから見ると、むしろ墓の持ち主が、自分の秘密や財宝を守るために、建造者を処分するための牢屋だ。
それなら、建造者はこっそり、内部からトラップを止める方法を残したかもしれない。
もう一度部屋の壁を観察したら、上の石が大きく、下の石が小さいと、不自然なところを発覚した。
下の石をいじったら、確かに若干緩いやつはあるものの、トラップを止めたり、外して外の出られることはない。
しかしやっぱり妙だ。天井のトラップも、扉も、かなり精密に作られているのに、なんで一番下に緩めの部分あるのか。
もしかして、 順番で押すと、扉が開く?
アンジェリナはすぐ緩めの石を全部確認する。
三十枚もある。スイッチオンオフで考えると、2の30乗、1,073,741,824通の解、順番押しで考えると、30階乗、2.65かける10の32乗通の解がある。試行錯誤は明らかに無理だ。
半ばあきらめようとするアンジェリナ、また座り込んで、適当に独り言で時間をつぶす。
「幸い水とか注ぎこんでなくてよかった。吸血壺もないし、胸に黄金の矢も刺されてない。アンジェリナはもうラッキーのほうかも。
でもあんなに深く刺さったのに、なんで死なないのかな。それに、おんなじ年なのに、あの胸はなんだよ。反則だよ反則。は!わかった。あれパッドだ、絶対。ふむふむ、これで、また一つの真実にたどり着いたね!」
ちょっと頭を下げ、自分を見てみると、
「虚しい、いいえ、胸だけに、むねしい」
急に、真っ暗になった。
「やば、ギャグが寒すぎてライトも引いたの?」
いや、天井の位置は、高いところの光源を遮った。
石室は完全に真っ暗の状況になり、微か埃の落ちる音しかないが、なぜか何かの気配がし、見られているのような気がする。
背筋が凍ったのように、アンジェリナは素早く壁際に移動する。
今よく考えると、もしここの製造者も同じ状況の落ちいたら、まず1個1個の石状況を確認したり、動いたりはできないはず。
真っ暗の状態で、一番確認しやすいのは、部屋の隅じゃない?と思って、アンジェリナは素早く壁を沿って、部屋の四角を確認する。
幸い家具など邪魔ものは一切ないから、すぐ確認できた。隅っこから、手が届ける、緩めの石は全部で4個しかない。2、1、1で配置された。
これで断トツとやりやすくなる。
数回の試しで、足元に突然穴が現れ、アンジェリナは穴から落ちた。
どれぐらい落ちたかはわからないが、幸い通路は斜めで、着地点にも土がいっぱい入っているので、ほぼ無傷で脱出した。
通路の中は同じく真っ暗だ。そして低い、アンジェリナの身長でもほぼ立てない。匍匐前進しかない。
外に出ても、次はどうすればいいのかはわからない。諸葛夢の決闘を阻止するのか、それとも何かの手伝いで百吼を撃退するのか。
考えながら匍匐したら、急に前に何か光っているものがあり、丸く、2個一対の光球が宙に浮かぶ。
これは、獣の目だ、いまだにアンジェリナを睨んでいる。
やっと石室から脱出したアンジェリナだが、野獣らしきものが通路に現れた。どうすればいい?そして諸葛夢と百吼の決闘は?
次回を待て!