第二十三話 『晨曦総合病院』
一方そのごろ、諸葛夢側は何があったのか。
異星から戻ってきた二人、アンジェリナは異星から有害な微生物を持ってくるのを懸念し、隔離観察を申し出た。
イデン出血熱は人々の心にトラウマを残した。しかしそのおかげもあってか、今、伝染病対処の設備や技術はほぼ完備だ。
前車の覆るは後車の戒め、ネオシャンハイは外来者を全部病院で隔離観察してから、市内に入れるように規定している。
フェイスワンは一週間の厳重隔離だ。呼吸の空気すら厳しくチェックし、細胞レベルで微生物などを徹底調査する。ここで問題が発見されなければ、フェイスツーは数日の通常入院で、異常がなければ退院できる。
諸葛夢とアンジェリナは、幸い、すでにフェイスツーに入った。
外部にさすが異星で遭難したとは発表できない。鬼路の廃棄された雑物が倒れて負傷した、と誤魔化した。
ここ数日、見舞い可能だと聞いて、クラスメイト達はよく病院に来る。諸葛夢は全然ノックに返事しないため、女子たちは結構落胆した。
ある午後、諸葛夢は暇つぶしでゲームをやっている。現在動けるのは、ゲーム○ーイみたいな、カートリッジ式ゲーム機だけだ。
コンコン
多分またクラスの女子だ。と思って、諸葛夢は返事しない。ゲーム○ーイの音量もちゃんと消す。
「いるだろう、入るぞ」
古天仁は中に入る。ついでに数個の果物かごも一緒に。
「お前もいい加減しろよな。かわい子たちの見舞い品が山になってるぞ。」
「何しに来た」
「かわいい部下の見舞いに決まってるだろう」
「ほざけ」
「本当だよ。お前がいないと、こちらは寂しいんだから!」
古天仁は諸葛夢の頭を掻く。
「穴のほうはどうなったんだ?」
「よくぞ聞いてくれました。……お手上げだよ。本当にあの鬼路にあるのか?」
「わからん。だがこの前魔族出現の報告で判断すると、少なくともあのあたりに違いないはずだ。」
「魔族の出現ねえ……」
「俺のいないとき、魔族退治は誰がやってる?」
「あ、あれならカイ君がちゃんとやってくれたよ。彼の腕はなかなかのもんよ。それに成長も早い。お前を超える日も来るかもしれんよ。」
「どんな魔族?」
「ゴブリンだ」
「ゴブリン?棍棒の持つおばはんでも倒せるじゃない?」
「いや、ここが問題だよ。最近出現したゴブリンは妙に強い。ここで、『全魔宝典』を読んだ諸葛大先生に聞きたいんだが、ゴブリンは一体なぜ強くなったのでしょうか。」
「融合し始めた、か?」
「なにゆえ?」
「知るか。宝典にも書いてない。そもそもゴブリンという魔族の誕生も謎だ。」
「面倒だな……、もしこれ以上強くなったら、カイ君の手には負えない……」
「おおおおい、司馬のお嬢様!」
話している途中、下から呼び声が聞こえてきた。
下を見ると、ロボットを操縦している林宇だ。
「おお、同業中学の林宇君じゃないか。」
「知っているのか?」
「こう見えても俺は警察だぞ。それなりの情報は掴んでるよ。この林宇の父、林傑豪、聞いたことあるだろう?」
「ああ、確かに不動産屋だっけ、大富豪だ」
「だった。表向きはね。本当は死の商人、兵器を取り扱う戦争屋だった。しかし戦争時に兵器工場も販売ルートも全滅、不動産もダメになったんだ。林宇は確かに妹いるな。林娜って名前でしたっけ。遺子の二人は、今あっちの貧民窟で住んでるよ。」
古天仁は病院から遠くないところにある、乱雑に立てたボロボロの住宅地を指した。
「ネオシャンハイにも貧民窟があるんだ」
「もちろんだ。資源は限られてるんだ。地上に戻る時点の身分や資源で再分配されたが、結局差があるんだ。俺の計らいがなければ、お前も貧民窟行きだよ。感謝しろ」
「そりゃどうも……ん?」
下のアンジェリナと林宇は急に慌ててロボットから降りて逃げる。それとともに、大きな爆発音がし、煙もちょっぴり出た。
「だからあんたが絶対壊すって言ったろ?」
「ご、ごめんなさい……で、でも……」
「あ?何か言い訳する気?」
「なんでロボットに自爆装置つけるのよ!ウィング○ンダムか!しかもあんなにいかにも押してね、みたいないつでも押せるボタンで!」
「あったりまえだ。こちらの研究成果を守るためだ。同業の新メディア開発成果もあのアンデスミス高校に盗まれたんだ!あの学校の開発は難航したはずだ」
「だとしても自爆装置積む必要はないでしょう!しかもたくさん人が集まっているところに、本当に爆発したらどうすんのよ!」
果物を食べながら、二人の喧嘩を高みの見物している諸葛夢と古天仁。
「確かに妹いるって言ったっけ。」
「あ、同じ同業中学の高校二年生のはずだ。」
「あれじゃない?」
諸葛夢は人群れの中、林宇と同じ緑色髪の少女を指す。
少女は林宇に向かって走り、そして一発で林宇の耳を引っ張る
「バカ兄貴、研究なら学校や自宅でやるって何べん言えばわかるの?こんな危ないもの外に持ち出さないで!」
林宇の妹、林娜。整った顔の上に、同じく緑色の髪の毛で、ボーイッシュなショットカット。身長も長く、デニムジャケットとジーンズは細く見えるのか、兄の林宇より高い気もする。
「いててててててて、り、林娜放せ、お、俺は見舞いに来ただけだ」
「これは見舞いとは言わないの!」
林娜はアンジェリナに向かって、
「あ、アンジェ、お久しぶり!」
「林娜!久しぶり、元気?」
「うん、元気よ。アンジェも、より、美しく……」
ちょっとだけボーとして、林娜は再び林宇の耳を引っ張って、
「早く、帰るわよ!」
「いててててて、で、でも、壊れたよ。トラックで運ぶか、帰って予備パーツを持ってきて修理するしかないよ。」
「修理するなら、アンジェリナも手伝わせて」
「あったりまえだ。おまえのせいだからな。いてててて」
また耳引っ張られた。
「ううん、いいの。これぐらい、バカ兄貴にまかせりゃいいのよ。」
と言って、林娜は林宇を引っ張って、帰った。
これで、草地の騒動も一段落。
「面白いもの見た!今日は無駄足じゃないな」
「見舞いじゃないのか?」
「立派な見舞いだよ。お前も、よく休憩して、早く戦線帰服してくれよ。俺はまだ仕事あるから、お先に!」
「まて、ちょうど来たんだ。預けたもの返せ」
「おっと、ド忘れちゃった。ほい」
古天仁はトレンチコートから、金属のかけらを取り出し、机の上に置いた。
「さすがわがかわいい部下だ。仕事熱心熱心」
「単純にお前にあずかって心配なんだ。今は病欠中、仕事しない」
「へいへい。お大事に」
数個の果物をもらって、古天仁は帰った。しかし、結果的に、諸葛夢の病欠はあの夜で終わった。
夜、またライトの下でゲームをやっている諸葛夢。
ヴィィィィン
机上の金属かけらが、急に振動し始める。
「強力な魔族?」
諸葛夢の金属かけらは急に振動しだした。強力の魔族とは?
次回を待て!




