第二十二話 『鉄甲人二号』
やっと地球に戻ったアンジェリナと諸葛夢だが、隔離のため入院した。
しかし、入院したって、穏やかに過ごせそうにない。
新元4年9月10日ネオシャンハイ。晨曦総合病院、3人の来訪者が、アンジェリナの病室に訪れる。
軍人風貌、50代後半の中年男性、名前は尹萩天、ネオシャンハイ防衛部部長、実質軍隊を掌握している人物だ。
すぐ後ろについてきた、30代のメガネをかけている男は、李迫水。2個のカバンと見舞いの果物を持っている彼は、尹萩天の秘書だ。
この二人はアンジェリナとカイもよく知っているが、最後の一人、若い男性は初対面だ。
洋服姿の二人と違って、Tシャツと短パン、青い髪の毛とピアス、軍人とは思えない姿だ。初対面なのに、挨拶もなしで、ふらふらと中に入り、見舞いのリンゴをかじり始める。
李迫水はちょっと嫌そうな表情したが、椅子を用意し尹萩天を座らせたら、すぐにっこりとアンジェリナに話をかける。
「いやあ、司馬さん、お体のほう、大丈夫ですか。本当に災難ですね。学校も雑物などちゃんと管理しないと、司馬さんの身に何かあったら、ネオシャンハイ、いいや、人類の損失ですよ。」
「その学校って、おじいちゃんが経営してるんですけど……」
「い、いや、けっしてわがネオシャンハイの誇り、新元学園を批判するつもりはございません!」
「じゃあ、やっぱりこの子娘がドジっ子、倒れた雑物でケガして、ざま見ろってこと?」
「い、いや……」
「司馬君!」
茶番を見る気がない尹萩天が急に話し出す。
「単刀直入問おう、わが防衛部の兵器開発プロジェクトに協力するの件、答えはいかがかな?」
「お断りさせていただきます」
「理由聞こう」
「単純に興味ないですから」
「いまネオシャンハイは復興の真っ最中だ。個人の興味で動いてどうする?」
「兵器開発はネオシャンハイの復興とどんな関係あるんですか?戦争終わったし、なんで新兵器開発しようとするんですか?」
「いまわれわれはネオシャンハイを守る剣が必要だ。さもなくば、市民の幸せは守れん!」
「じゃあ、まず小娘一人の趣味をちゃんと守ってくださいね」
「あなたが普通の女子ならな!あなたはネオシャンハイナンバーワンの頭脳だよ」
「そりゃどうも」
「力を持つ人間なら、この力で社会に貢献すべきだ」
「アンジェリナはスパイ○ーマンじゃないし、貢献なら学校でいっぱいやりましたよ。」
「それはもちろん知っている。だがインタネットだの、記録メディアだの、しょせんはあなたの才能を大器小用に過ぎん」
「いいの、アンジェリナは一つ一つ小さな幸せを大事にしたいです。それに、アンジェリナはほかに重要なことをやってる、尹部長もよくご存じのはず」
「あ、あれは……でたらめだ!」
「でたらめじゃないですよ。」
「たとえ本当だとしても、我々の技術力を一層強化していれば……」
「おおおおい、司馬のお嬢様!」
尹萩天が話している途中、外から呼び声が聞こえてくる。
青い髪の若者以外の4人は窓から下を見る。病院の前に大きな草地があり、そのど真ん中に、ロボットが止まっていて、運転しているのは、林宇だ。
ロボットはどうやらオープンカーを改造したのようで、車の一部に手足を付けた形をしている。腕の前に手が付いておらず、代わりに鉤爪を装備した。
面白さですでに散歩中の病人と看護婦が集まっているところだが、最上階から六つの頭が自分を見ているのがわかると、林宇は得意気にロボットを操縦し始めた。
確かに、この前同業中学のと大違いだ。素早いとはまだ言えないが、結構スムーズに動ける。
「尹部長、アンジェリナはまだ用事がありますから、先に失礼します。病室ですけど、適当にくつろいでください!カイやん、いこ」
すぐカイを連れて、ロボットを見学しに行った。
病室に残ったのは、訪問者の三人だけになった。
尹萩天の顔色が非常に悪い。
「部長、かつて劉備が諸葛亮を誘うのにも三顧の礼が必要です。こちらはまだ二回目……私は必ずあの小娘を引き抜いてやります。」
「この前の計画は大失敗じゃない?おかげでこちらの損も大きい!」
「あ、あれは途中で邪魔者が現れて……」
尹萩天は頭を振って、下の林宇をみて、
「あの若造は?」
「いや……その……」
「すぐ調べろ。使えるかもしれない」
と言ったら、尹萩天は病室から出る。李迫水は慌てて二個のカバンをもってあとを追う。青い髪の若者も、一個の梨をもって、ゆっくりと出る。
晨曦総合病院の草地で、アンジェリナは林宇のロボットをあちこちチェックしている。確かに彼女の言う通り、電磁式の関節を採用した。
「どうだ、俺の鉄甲人二号は?」
「すっごおおおい!かっこうよすぎる!でもネーミングセンスいまいち」
「ほっとけ」
「こんな短時間で新型を作れるなんて……」
「まあ、現存のガラクタを合わせたものだ。関節さえ換装できれば、そんなに時間かからない」
「じゃあ、二号機じゃなくて、本当はゼロ号機じゃない?」
「ぎ……、ほ、ほっとけ」
「ねえ、林宇……アンジェリナにも乗らせて、操縦してみたい」
「だめだめ、壊れたらどうする?」
「お願いってば、ねえ、頼むよ!」
アンジェリナは駄々こね始める。全力でロボットを揺らす。倒れたら怖いし、そもそも関節の助言をしたのはアンジェリナなので、仕方なく、林宇はアンジェリナにも乗せ、操縦の方法を教え始める。
複雑な動きはまだできないせいか、操縦自体は簡単だ。歩くだけなら自動車運転とさほど変わらない。アンジェリナすぐコツを掴め、うまく動けるようになった。
「わーい、巨大ロボのパイロットになった!」
「何がパイロットだ。AI完成したら、自動操縦に戻るよ。」
「林宇は全然ロマンじゃないんだから」
「何がロマンだ。こういう二足歩行ロボットは操縦に向いてないんだよ。第一、酔うし」
「じゃあ、林宇は操縦するとき酔った?」
「いや、それは……」
「あ、この赤いボタンは何だろう?押しっちゃおう、ポチっとな」
「バカ!これは自爆スイッチだ!!!」
間違って自爆ボタンを押してしまったアンジェリナ。自爆の危機を免れるのだろう。
次回を待て!




