第二十話 『ストーンヘンジ』
異星人の壁画を発見し、ちょっと口喧嘩した二人だが、地震を感じて洞窟から抜け出す。しかし洞窟の外はすでに地獄と化した。
洞窟の外は、地獄だ。
血と肉片と内臓の海。二十数匹の猛獣は、百個以上のパーツに分解され、散らばる。原形に留める死体は、一匹もない。
この景色を見て、アンジェリナは吐いた。今まで食べてきた肉を、全部吐き出すように。
やっと収まったところ、アンジェリナは聞く。
「こ、これは、ムウが?」
「あ……」
諸葛夢は淡々と答える
「な、なんで?」
「こいつらは俺らを殺そうとしている」
「前のと同じ、気絶させればいいでしょ!」
「バカなこというな。目覚めて再び攻めてきたらどうする?」
「だとしても、やりすぎだよ!ここまでやらなくでもいいじゃない?」
「やるなら徹底的にやるんだ。一匹も残さずにな」
「なんでこう軽々く命を奪うの?」
「おまえの言う命は俺の命の邪魔になったんだ」
「自分を生き残るために、他人の命を奪うなんて、最低!」
ムカッと来る諸葛夢、片手でアンジェリナの首輪を掴み、持ち上げる
「ああ、生き延びるためなら、俺はなんだって殺せる。いいか?人は他人の骸を踏まえて生き残れるんだ。愛と正義だけで世界を救えるのは漫画だけの話だ!」
「漫画を信じて、何が悪い!」
アンジェリナは諸葛夢を振りほどく、
「アンジェリナは死んでも命を奪わない!」
「死にたければほかのところで死ね!俺の見えないところでな」
「そうするよ!この人でなし!ガンドゥ※!」
と叫んで、森に走り出した。逃げたのように。
「ち……」
洞窟の前に一人になった諸葛夢は、舌を打つ。
そもそも体力のいい女の子だが、なぜか全然疲れないように、遠く、遠く走った。途中で数回地震起こしたが、全然気になってない。
どれぐらい走ったのか。森の出たところで、アンジェリナは目の前の景色に驚く。
「ストーンヘンジ?」
目の前の石でできた遺跡は、地球上のストーンヘンジと形はそれなりに違うが、一目で見るとすぐ連想できるぐらい似てる。
月明りの下に、ストーンヘンジの真ん中に、三つの石塔があり、石塔の中心に、水蒸気があるのように、なぜか歪んでいる。近づくと全然熱くないし、水蒸気らしい気体ももちろん、ない。
「もしかして、これって、空間の裂け目?」
しかし、この空間に石を投げても、別にワープされたわけでもない。
壁画を思い出す。場所的に、ここは原住民たち、石や材木を切るため使うツールの場所だ。もしかして、これらの固いものを切断する力って、ワープの力?
これなら、このストーンヘンジは装置みたいに、起動する方法はあるかもしれない。
ぐるっと回ると、スイッチらしきものはない。しかし、ストーンヘンジ外回りの石柱に、きれいに切られた痕跡はある。これは天然的なものではない。
石柱は、どうやら上に持ち上げれるのようだが、いくら頑張ってもアンジェリナの力では、びくともしない。
「手伝うか?」
うしろから、諸葛夢の声が聞こえてくる。
「む、ムウ?なんでここに?」
「適当にぶらついたらここだ。別にお前のために来たわけでは……」
危ない!
ある気流は、アンジェリナの腹から鼻につく。このテンプレ的なツンデレ発言は、もう少し笑いだすところだ。
アンジェリナはそれを我慢して、
「じゃあ、この石柱を持ち上げてくれる?」
二、三メートルの石柱は諸葛夢にとってどうということもなく、軽々く持ち上げた。
アンジェリナはすぐこの隙間を確認する。中には紫色の宝石がはめられている。これを見て、アンジェリナ思わずに尻餅を食らう。
(ゾ、ゾルド水晶?)
ガララ、ゴロン
諸葛夢は石柱を放して、
「どうした?」
「う、うん、何でもない。」
ここでゾルド水晶を見たのは、アンジェリナにとってはあまりにも衝撃が大きかった。
イデン出血熱は第三次世界大戦の発端だとは一般的な認識だが、実は起因がもう一つある。これはこのゾルド水晶だ。一般人は決して知ることのない、悪魔の水晶と呼ばれる品物だ。
角砂糖サイズのゾルド水晶一個で、地球十年間ほどの電力が発生できる。しかも汚染なしで。災後のネオシャンハイはそれなり余裕の生活ができるのは、米サイズの水晶が所有しているからだ。
この水晶の出現により、地球上国々の経済、軍事バランスは大きく崩れ、水晶自体も争奪対象となったため、国間の関係はずきずきになってしまった。まさに一触即発の状況だった。
一般人に知られてない理由は不明だが、一番の噂だと、このゾルド水晶は異星人が持ち込んだもので、これが世に知られたら、信仰崩壊の恐れがあるからだ。
万能で絶対たる造物主は、自分をモデルで我々地球人を作ったが、姿の違う異星人を作るはずがない。
でも、もし異星人が地球人とほぼ同じ姿だったら?
アンジェリナはすぐ壁画の女性を思い出す。
「ムウ、お願い、石柱をもう一回!」
もう一度確認する。間違いなく、ゾルド水晶は魚骨状の石に遮って、露出した部分の一部は、まさしく八卦、いや、あの異星女性が捧げる大きな丸にある記号そのものだ。
「ムウ、ちょっと石とか、枝とか、とにかく、ここの石柱を全部持ちあげたい!」
しばらくと、二人は作業完成した。八本石柱のゾルド水晶は全部見えるようになり、アンジェリナはさらに魚骨石の上下を調整して、壁画版八卦を完璧に再現させた。
……
数分待ったが、奇跡は起こらなかった。
ガラララララ、ゴロン
数個の柱に挟む木の枝は重さに耐えずに折れた。
溜息しながら、アンジェリナは頭を上げ、夜空を見る。
二個一体の月が、小さい月は大き月からどんどん離れていく。
まさか、壁画の二個の丸はそういう意味だったのか。もしかして、二個の月が重なった時だけ、空間の裂け目が開かれる?
しかし、次はいつになったら月が重なるかはわからない。
「とりあえず帰ろう。洞窟で物食って休憩しよう」
あの地獄のようなところに戻るのは嫌だが、今は仕方ないか。
もくもくと、二人は洞窟に向かう。
もうすぐ到着したところに、しばらく起こってないから、もう収まったと思われる地震が、再び起こす。しかも今までより大きく、森の動物たちも異変に気付いて騒ぐ。
夜空は急に明るくなる。二人は振り返ると、地平線から、とてつもなく大きく、そして素早く動く月が登り始める。
この月は、前の大きめの月よりさらに二十倍以上大きく見える。これは実際のサイズではなく、ロッシュ限界を超えるのではないかと心配するぐらい、近いからだ。
「この星の月は三つ……、あの壁画の二個の月は、これかもしれない!ムウ、早くストーンヘンジに戻って!」
二人は猛スピードで走る。しかしこれは間に合わないかもしれない。なぜなら月の移動速度はあまりにも早すぎる。
仕方なく、諸葛夢は再度アンジェリナを挟み、木の上でジャンプしながら移動する。
ストーンヘンジにすぐ到着した。しかし、やはり何も起こってない。
確かに、前は数本の枝が折られ、八卦陣はなくなったはず。二人は再び石などを集め、図形を完成させようとする。
月が近いから重力のせいか、石柱は軽くなる。アンジェリナすらぎりぎり持ち上れるぐらい軽くなった。共同作業したら、すぐ元に戻った。
クワーン
大きな音とともに、中心部石塔の真ん中に、空間の歪みが非常に激しくなって、先アンジェリナが投げ込んだ小石も消えてなくなる。
これだ!諸葛夢はすぐ中心部に向かうが、アンジェリナは来ていない。周りを見ると、ある巨大な猛獣が、アンジェリナを咥えている。
この猛獣の顔には、数本の傷跡があり、あれは最初倒したやつだ。口の中のアンジェリナは、自ら叫ばないように全力で口を塞ぐ。
猛獣は諸葛夢に発見されたと気づき、すぐ森の中に逃げ込む。
「あのバカ!本当に死ぬ気か?」
巨大な月はすでに大きい月を遮った。この調子じゃ、ワープゾーンが消えるのも、あと数分。
「チ!」
諸葛夢はやはりアンジェリナを追う。幸い巨大月の光で、森の中は朝のように明るく、猛獣の姿はちゃんと追従できる。
アンジェリナのほうだが、猛獣の咥える力はそう強くない。たぶん生きたまま巣まで連れ帰って、子供たちに捕食の練習でもさせるつもりだ。
そう考えているとき、急に猛獣はアンジェリナを放した。
目を開けると、諸葛夢は猛獣の首を絞め、はっと声を出したら、猛獣は無気力でバタッと倒れた。
「貴様!死にたいのか!」
諸葛夢は怒鳴る。
「アン、アンジェリナはただ……」
「死にたければ俺の見えないところで死ねって言ったはずだ!」
「ご、ごめんね。でも、ムウだけでも、早くストーンヘンジで地球に戻って、月は……」
巨大月の縁から、すでに大きい月がちょっとだけ見える。残り時間はたぶん数十秒しかない。
「イブだけじゃ、新人類は誕生できないぞ」
諸葛夢は再度片手でアンジェリナを挟む。
「アンジェリナと一緒じゃ、間に合わないよ!」
「黙れ!目を瞑れ」
もう片手は、アンジェリナの目を遮る。
※上海語で、バカ、あほのこと。決して某ガ○ドゥムオンラインとは関係ない
ワープゾーンが消えるのはあと数秒、果たして二人は地球に帰るのか。
次回を待て!