第十六話 『明珠山』
絶叫虫という魔獣で、未知の惑星に飛ばされた諸葛夢とアンジェリナ。諸葛夢の知っている限り、絶叫虫は人を何百何千光年以外のところに飛ばすほどの力を持たず、精々数キロのはずだ。
それを元に、アンジェリナは今回のワープで、さらに巨大な空間の裂け目にちょうど入ってしまい、結果的にこの惑星にたどり着いたと推測した。
もしそうであれば、逆にこの惑星にも空間の裂け目に入れる手段があるかもしれない。これを見付けば、地球に戻れる。ただ、地下に埋めたり、空高くに浮いたりはしないように祈る必要ある。
一晩休憩して、二人は荷物をまとめて第一の目的地に目指す。東方明珠を連想させる奇抜な形だから、明珠山と名付けた山に、出発した。
直線距離的に20キロぐらいだが、森を通る必要がある。しかし、森の中では視界は制限され、毒のある小動物に噛まれたら一巻の終わりだ。
二人はあえて遠回りして、森と草原の境を沿って進軍することにした。これで視野は大分よくなり、危険だと判断したら逃げれる。ただ、移動距離は倍以上になる。
地球上なら、40キロの距離はそこまで大変ではない。マラソンと思えば逆に楽勝と思う人もいるのだろう。しかし未知の惑星の場合では話が全然違う、何でもかんでも新鮮味があり、アンジェリナは完全に遠足モードに入ってしまった。
家のワンちゃんは心配しないかと聞いたら、カイは何とかしてくれると言い返してきた。
諸葛夢自身も満更でもない。地球上だって、異国に旅するときどうしてもこの一味違う風景や文化に惹かれる。ましてや今は異星、うまく地球に戻ればたぶん二度と来ないところだ。
工業の汚染も、戦争の破壊もない草原、黄色の草と紫色の森の二色ででき、その上に、あちこち動物を載せている。
草は色以外地球上の草と大した区別はないが、樹のほうは結構違う。幹は上下細く真ん中太く、錘の形をしている。枝は細く、上に紫色で、貝殻形の葉が付く。葉っぱがなければ、何となく地球のサボテンを連想させる。
森はほぼこのタイプの樹で構成されているが、一本だけ、明らかに他より高い樹がある。同じく錘形だが、枝も葉っぱもなく。そして一番異常なのは、吸収されていくのように、周りの樹の枝がこの樹に向いて成長し、そして一体化する。
アンジェリナはもっと樹を観察しようとするが、動物、人間まで吸収するかもしれないから、諸葛夢に止められた。
動物のほうは、地球上の動物とそれなりの違いがあるものの、どこかに似たような種類がほとんどだ。特に羽の付いた爬虫類が多く、もしかして、地球の恐竜も本当にこの姿ではなかろう。
今までの二百年間、人類はずっと移住できる惑星を探し続けているが、結局見つからない、たどり着けないの二拍子の繰り返しだけだった。幸か不幸か、絶叫虫死ぬ前に発動するワープで、空間の裂け目を通して、若者の二人が先にたどり着いた。
「ムウ、この子、かわいいいいい!飼っていい?」
アンジェリナはピンク色の羊みたいの動物を抱いて諸葛夢に聞く。
「できるわけないだろう」
「ムウは全然ロマンじゃないんだから」
「ここの動物との接触を避けたほうがいい」
「あたしたちの免疫システムは防御できない細菌やウイルスを持っているかもって、これぐらいアンジェリナだって分かってるわよ。でも本当にかわいい……」
しかたなく、アンジェリナは小動物を置いた。小動物もポテトに名付けられる運命から逃れられた。
「ねえ、ムウ、アンジェリナ眠い。ちょっと寝ていい?」
アンジェリナは諸葛夢のジャージを引っ張って聞く。
「冗談か?」
「冗談に聞こえる?本当に眠い。」
確かに、カイはアンジェリナの持病のようなものって聞いた。頭を掻いてやむを得なく、諸葛夢は装備をアンジェリナに渡し、しゃがんだ。
「おんぶするよ」
アンジェリナは顔真っ赤で、
「い、いいよ。二十分、いえ、十分で十分よ」
「……」
「ダジャレじゃないよ。本当だよ。」
「いいや、時間がないんだ。暗くなる前に休憩の場所を探さないと」
「……、わかったわよ……」
アンジェリナは装備を背負い、諸葛夢はアンジェリナを背負った。
軽い、そしていい香りがする。ずっと無表情の諸葛夢も思わず顔がちょっぴり赤くなる。
おんぶしたアンジェリナはすぐグーグーと寝た。今は好機、遠足小娘の邪魔が入らない今なら素早く進める。
アンジェリナが目覚めたとき、太陽はすでに沈み、そして二人はもう明珠山の遠くないところにたどり着いた。
松明を二つ点け、諸葛夢は降ろしたアンジェリナと一緒に再び森に入る。ここの森はさほど茂てないから二人は素早く通ろうとする。
突然、諸葛夢はアンジェリナの腕をつかむ
「む、ムウ、なに?」
「し、後ろになにがついてきた」
すでに暗くなった森に、レーザーポインターみたいに、二つの点が光。
はて、なにが出てくるのだろう