第十三話 『スクリーマー』
薄暗い学校鬼路、三人の学生がそれぞれの目的で何かを探している。だが真っ先に発見したのは、恐怖であった。
キムチェヨンの悲鳴にびっくりするアンジェリナとカイ、すぐさまキムチェヨンの方向に向かう。
キムチェヨンは震えながら尻餅を食らっている。懐中電灯で懸命に前に照らして、何を探そうとしている。
「チェヨンさん、どうしたの?」
恐怖で言葉が出ないキムチェヨン。
仕方なく、アンジェリナとカイも懐中電灯であっちこちサーチしてみる。
蜘蛛だ。
三つの光は一点に集中する。焦点にいるのは、巨大な蜘蛛かなにかの生物だ。
たぶん蜘蛛ではないだろう。二十センチの高さで、横幅は四、五十センチにも及び、こんなにでかい蜘蛛は聞いたこともない。足も八本ではなく、左四右五で全部九本あり、固く尖っていて、まるで地面に刺さるナイフのようだ。
そして何より蜘蛛と違ったのは、体の部分は蜘蛛のよくある前体や腹部などはなく、一個纏めた躯幹で、上には人の顔がついている。
「チェヨンさん、気を付けて!」
アンジェリナはなるべく小さい声で話す。
パッと見ると、目や触角などの器官はなく、聴覚で周りの環境を把握しているのではないか、とアンジェリナは判断する。
懐中電灯の光に無反応の上、先から三人は黙り込んで静かになったから、“蜘蛛”は先キムチェヨンが座っているところに途方をくれた。この判断はおおむね間違いはないだろう。
獲物が失ったせいか、“蜘蛛”は急にその場でグルグル回りながら動き始めた。
三人はびっくりして、息を呑んで散開する。
落ち着いたのか、キムチェヨンの中に、好奇心は恐怖心に上回ってしまった。こんな珍しい生き物を見逃すわけがないと思い、カバンからこっそりとでかい白い布を持ち出し、“蜘蛛”を生き捕まえようとする。
この命知らずの行動に対して、アンジェリナとカイは完全に言葉を失った。幸いそもそもこの場で話せない。
“蜘蛛”の動きは止まった。今はチャンスだ。と思いながら、キムチェヨンはこっそり“蜘蛛”に近づく。
しかし、“蜘蛛”の動きが妙だ。足を縮んで体を丸くする。疲れて動けなくなったのか、獲物をあきらめたのか。いいや、むしろ全力で周囲の音を聞き取るために警戒態勢に入ったのようだ。
これはまずい。
「チェヨンさん!やめて!」
アンジェリナ思わずに叫んだ。
本来キムチェヨン微かの足音に向かおうとする“蜘蛛”は、振り返ってアンジェリナの方向に襲い掛かる。
猛毒持っているかもしれない。鋭い足でアンジェリナを八つ裂きにするかもしれない。カイはすぐ危険を察知し、手元の懐中電灯を飛び道具のように投げる。
ごつん!
“蜘蛛”はこの一撃で吹き飛ばされた。それなり重い一撃で、動きが完全の停まった。
「嬢様、下がって」
まだ生きているかもしれないから、カイはまず自分が確認しようとする。
しかしキムチェヨンは慌ててカイより先に布で“蜘蛛”を包む。生きて捕まえなかったが、やっぱり大発見だと思って、生き生きしたキムチェヨンであった。
「何やってんだ?」
諸葛夢の声だ。そう遠くないところの隙間から入ってきた。後ろに古天仁もついている。
「ムウ、あたしたち、おっきいい蜘蛛を捕まったよ!」
「蜘蛛?」
「もう死んだんだけど、今チェヨンさんが持ってる」
キムチェヨンはトロフィみたいに布の包みを上げ、この場の全員に見せようとする。
しかしまだ頭も超えてないところ、包みは急に動き出した。次の瞬間、蜘蛛は包みから逃げ出し、黒き液体を垂らしながら、あちこちに、猛スピードで走りだした。
“蜘蛛”をちらっとしか見てないが、この金属の足音は諸葛夢がよく知っている。
「絶叫蟲だ!早く逃げろ!」