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サイゴヒーロー ~魔を狩る人~  作者: 古蘭佐
第一章 新学期一日目は忙しすぎる
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第十二話 『プレイボーイ』

 鬼路から出たカイは、すぐアンジェリナを見つけた。遠くないところの木の下に、眠っている。


 金、白、青、三色でできた可愛らしくて小さき生き物だ。何年も一緒に行動してきたのに、いまだに見飽きはしない。


 アンジェリナの下半身にトレンチコートが掛けられている。古天仁のものだ。さらに、隣に若い警察官が見張っている。


 警察官とバトンタッチして、座ろうとするカイであったが、周りの騒ぎでアンジェリナは目が覚める。


 そろそろ昼休みの時間だ。生徒たちは事件だと聞いて鬼路に集まり始める。警察と先生は全力で阻止するが、完全に逆効果で、噂はさらに広げられ、生徒が増える一方だった。


 鬼路付近には、キムチェヨン以外に、もう一人の生徒が来ている。やっぱりアンジェリナの知っている人だ。


 トレンチコートを綺麗に畳み、アンジェリナはこれを抱えて、かの生徒に向かう。


 警察の尋問を受けている生徒の名前は銭夕喆(せんせきてつ) だ。アンジェリナと同じく金髪の混血で、同じく金持ちの家庭出身だ。銭夕喆の父、銭震龍(せんしんりゅう)は現在ネオシャンハイ三番目の大富豪で、銭氏テクと銭氏製薬という二大企業を所持する。


 そこそこのイケメンで、金持ち、女にだらしない。典型的なプレイボーイだ。アンジェリナも彼の攻略対象であったが、全くの進展なしだ。


「やあ、マイハニー、僕のために来てくれたのね。」


 アンジェリナを見て、銭夕喆は言う。


「ハニーじゃないし、銭君のために来たわけでもないよ」


「相変わらずきついね。マイハニー、でなければ、何しに来たんです?」


「調査の協力だよ。」


「ああ、そうだよね。ナンバーワン才女のマイハニーの助力がなければ、この馬鹿警察どもが案件の一つも解決できないだろうね。」


 銭夕喆は記録をしている若い警察を見ながら、


「この僕がベラを殺すなんて……」


「ベ、ベラ?ベラって、ベラ・ジノヴィエヴァのこと?」


「ああ、こちらは被害者の彼氏のようで、ちょっと事情を確認したく、」若い警察は記録をしながら、「今日は簡単な事情聴取で、後程一度警察局にご足労願います。それまでに、ネオシャンハイから離れないように。」


「は?バカじゃないの?今ネオシャンハイから出たくても出られないじゃない?」


 さらに愚痴を言う銭夕喆。しかし、アンジェリナは沈黙に落ちた。


「ベラは、死んだ……」


 ベラ・ジノヴィエヴァ、高校二年生、ネット復旧研究専門のため、電脳研究室でアンジェリナと知り合った。


 そして、バスケットボールチームのスタメンで、アンジェリナにバスケを教えたり、よく一緒に練習の仲だった。


 学年的にアンジェリナの後輩だが、年が上のため、アンジェリナを妹のようにかわいがって、アンジェリナにとっても、ベラは親友かつお姉さん的な存在であった。


 身長はかなり離れていたが、猛スピードで腕を上げたアンジェリナは、いずれワンオンワン勝負でベラに勝てるかもしれない。だが、その日はもう永遠に来なくなった。


 古天仁と話していたとき、今回被害者は知り合いかもしれないから名前だけは絶対聞きたくない。しかし、これは結局掩耳盗鍾に過ぎない。


「嬢様?」


 カイの呼びかけにやっと我に返ったアンジェリナ。遠くないところに同じくぼーっとしているキムチェヨンはアンジェリナの注意を惹く。


 アンジェリナが見ているのは、キムチェヨンの首からぶら下げている、一台のカメラだ。


 記録メディアはほとんど使えなくなったため、災後は、デジカメから、フィルムカメラに逆戻りした。すでに使われてないフィルムの生産設備は、あんまり価値がないためか、戦争時に大した被害が受けてなかった。


 おかげて、生産はすぐ再開し、掘り出しもののフィルムカメラと一緒に愛用されている。フィルムの上に、小さき微笑みのロゴがプリントされている。


「チェヨンさん、このカメラ、借りっていい?」


 アンジェリナはすぐキムチェヨンに聞く。


「か、借りる?」


「うん、アンジェリナはちょっと鬼路に行ってみたい。何か手がかりになりそうなものがあれば、写真で撮りたい」


 キムチェヨンはカメラを抱きながら、非常に困っている様子だ。


「だ、ダメだったらいいよ。無理言ってごめんね」


「い、いいえ、貸してもいいよ。で、でも、わたしも鬼路に入りたい、です。」


「チェヨンさんはなんで?」


「こ、これ、ここは星型のアクセサリーがついてたんです。」


 キムチェヨンはカメラのストラップをアンジェリナに見せ、ストラップ以外にもう一個の金属の輪がついている。


「こ、これは大事な誕生日プレゼントです。こ、この前鬼路で死体を発見したとき、こ、転んじゃったから、ぜ、絶対鬼路に落ちたと思うんです。だ、大事なものだから、お、お願い!」


 ちょっと考えたアンジェリナ


「うん、わかった。一緒に行こ!」


 警察局では有名人なのか、入り口の警察と話したら、三人全部入らせた。


 三人もいるのに、鬼路の中はやっぱり怖い。寒気を感じるアンジェリナは、気をそらすため、キムチェヨンと雑談する。


「チェヨンさんってオカルト研究会の会長でしたっけ?」


「ふ、副会長です。」


「朝も心霊写真撮れるの?」


「ふ、普通は夜ですけど、夏休みはあんまりいかなかったから、きょ、今日はとりあえず行ってみようと思って。」


「何か撮ったの?」


「い、いいえ、入ったらすぐベラの死体を発見して、そして通報した。」


「来た時、チェヨンさん一人だけ?」


「う、うん、わたし一人で来たけど、は、発見したとき、ほ、ほかに警察二人がいたんです。こ、この二人の指示で、わ、私は……」


 朝一番で、なんで警察が鬼路にいるんだろう、とアンジェリナは思う。ちょうどこの時、三人は殺人現場に到着した。


 死体はすでに運ばれたが、地面にテープで死体と頭の輪郭をなぞったから、場所はすぐわかる。


 鼻はツーンとするが、亡き親友のためにも、アンジェリナは全力で現場を調査する。頭と体の距離、体の向き、死体から入り口の距離など、あらゆる情報を集めて、気になるところがあれば、カメラで写真を撮る。


 まだ二、三枚しかとってないところ、急に後ろから、キムチェヨンの悲鳴が聞こえてくる。


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