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サイゴヒーロー ~魔を狩る人~  作者: 古蘭佐
第七章 スーパーヒロイン誕生
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第百二十六話 『垣間見る諸葛夢の過去』

諸葛夢の過去について少し触れる回です。

 新元4年10月31日、廃墟の中に、珍しく美しい森がある。森を抜けると、ちょっとした滝と丘があり、丘の上に一軒の小屋が静かに立てられている。


 徳川聡佑はいつも通り、朝早く起きして、外の石卓で一人将棋をやっている。将棋を愉しんでいるというより、誰かを待っている。


「やっと来たか。おや、前回と同じく、ミイラコスプレしておる。新しい趣味かな?」


 徳川聡佑の独り言を聞いて、諸葛夢は慌てて繃帯を解く。明らか結構出血したのに、傷跡一つもない。


「おはようございます。徳川先生」

「おはよう。前回の訪問ともう一つの共通点があるな。全部あの娘さん、司馬アンジェリナちゃんのためじゃろう」

「なんで? あ、いや、今回は……」


 諸葛夢はちょっと躊躇ったら、ゴブリン襲撃事件の前後を徳川聡佑に説明する。


「なんと!! ロバートとユウコ、あの二人が?! まことか?」


 ロバート・ウィリアムズ、新島ゆう子、伝説の猟魔人の名前だ。


「ええ、実際に会っていませんが、あの猟魔人チームの証言や、戦った跡から見れば、間違いはないでしょう」

「……では、どうする気?」


 しばらく沈黙して、諸葛夢はやっと口を開け、


「あの二人を殺す」


 …………

 ……

 …


 ロバート、ゆう子、俺にとっては、恩人であり、師であり、そして両親みたいなもんだ。二度も俺を救った。命替えで。


 彼たちとの出会ったのは、俺がまだガキの頃だった。確かに、第三次世界大戦の真っ最中だった。


 第三次世界大戦勃発の時、だれもが世界が終わると思った。なぜなら、開戦いきなり、中国とアメリカはお互い核ミサイルを撃ち込んだから。しかし、あれ以来、核ミサイルどころか、戦闘機の爆撃すら滅多にない。というか、銃声や砲撃など、聞いた人も、見た人もほとんどいなかった。


 全世界を巻き込まれた大戦争なのに、毎日戦争によっての死亡者数は、百人を超えたのも極稀。レストランにショッピングモール、遊園地や学校も普通にやっていた。数年たったら、感覚がマヒしたのか、ほとんどの人が、戦争に無関心になっていた。


 ガキだった俺も、毎日テレビで垂れ流される戦況ニュースより、両親の喧嘩のほうが記憶に残る。確か、発端は親父は有名学者なのに、ずっと地下シェルターに入れてもらえなかったこと。あれ以来、何でもかんでも、喧嘩のネタになる。


 そして俺が小学生の時、二人は離婚し、お袋は姉を連れて日本に行ったらしい。親父は別に落ち込んだり、悲しんだりはしなかった気がする。離婚手続きが終わったら、彼はすぐ研究や論文に没頭した。


 そして、運命の日が訪れた。


 2〇28年、夏休み直前の頃だった。期末テストが終わり、俺は帰宅しようとしたら、親父から一通の電話が来て、今夜はクラスメイトの家で泊まれ、という、普段の親父なら、ありえない内容だった。


 研究に没頭とはいえ、親父は最低限の家事もちゃんとやった。料理の腕も悪くなく、簡単なものしか作れないが、いずれもおいしかった※。だから、親父の手料理を食べるのは毎日の楽しみだった。それに、いくら何でも戦争がまだやっていた。親父から夜遅くまで外で遊ぶのははっきりと禁止されたので、いきなり今夜は帰ってくるなって言われても……


 疑っていたのか、単純に親父の料理を食べたかったのかは、もうはっきりと覚えてない。あの日、結局俺は家に戻った。ドアを開けったら、待っているのは地獄絵図だった。


 すでにめちゃくちゃになった部屋中のあっちこっちが赤い色に染められ、そして親父は地面に倒れていた。ボロボロで、血まみれの姿になっていた。親父のすぐ隣にいるのは、巨大な怪物。ゲームやアニメで出てきそうなやつだった。


 俺のことに気づき、怪物はすぐ俺を襲った。首が絞められ、気が失いそうになったその時、空気の中に漂っている、幼少期からずっと気になってた光点が、俺の体に集まり、そしてあの時、俺は覚醒した。


 不思議な力で怪物の絞めを解き、たったの一撃で、奴を吹き飛ばした。


 ちょっと痙攣して、怪物の動きは完全に止まった。俺は慌てて親父のところに駆けつけ、彼の様子を確認した。意味深な話を残って、親父は息絶えた。


 温もりがどんどん消えていく、親父の前、呆然と座っている俺は、再起した怪物を気づかなかった。偶然で使った力はまだ慣れてないのか、怪物がちゃんと警戒したのか、今回は全く相手にならなかった。


 危うくやられそうになった時、あの二人がやってきて、怪物を倒してくれた。


 あとのことは覚えてない。気がついたら、警察局にいた。親父が死んだ以上、日本にいるお袋のところに送られるべきだったが、なかなか連絡が取れずに、結局あの二人は俺を引き受けた。


 二人が俺の保護者になってから、いろいろ世話になった。後で分かったが、二人は猟魔人。だから、親父以上に忙しく、家にいない時間が多かった。それでも、俺にいろんなことを教えてくれた。英語、日本語、サバイバル技術、マナの扱い方など、学校ではなかなか学べない知識だった。


 俺は戦闘技術も勉強したかったが、まだ子供だからという理由で、断られた。しかし、二人が朝練とかをやってた時、こっそり見て、物真似した。猟魔の現場も盗み見たことがあったが、結局、バレたり、巻き込まれて危険な状況に陥たりして、結構怒られた。


 だから、あの二人の戦闘スタイル、技のトリックなら、俺はよく知っている。


 …………

 ……

 …


「本当なら、二人の元に戻す方法を探したい、先生はご存じないでしょうか」

「できるかどうか、一番よく知っているのは、おぬしじゃろう?」


 確かに、無意味な質問だ。諸葛夢はただ、徳川聡佑から実は方法あるっていう答えを、心の奥で微かに期待していたかもしれない。


 諸葛夢は頭を振って、


「無理です。あいつ(諸葛元)と同じく、パルタ星人の精神改造は、元に戻す方法などない。特に、あの二人のように、精神改造ではなく、完全破壊された場合は、尚更……」


 徳川聡佑も、残念そうな溜息をする。しかし、突然何かを思い出し、


「そういえば、おぬしはなぜわしのところに? 娘さんの件でなければ」

「あ、そうですね。自分より強い相手に勝つ方法を、教えていただきたいです。昔、先生から少し勉強しましたが……」

「おぬしが慌ててこっち側に来て、修行は中途半端に終わった……揚げ句、DSの選抜大会で、予選であんなショボい男に負けた……」


 これを聞いて、諸葛夢はちょっと赤面になって、


「あ、あのおっさんの戦闘スタイルが変です。全然読めなくて、そしてついうっかり……」

「ふぉっふぉ、別におぬしを責めるつもりはないじゃよ」


 徳川聡佑はひげを撫でながらちょっと思う。一見クールな諸葛夢も、やはりまだまだガキらしい一面はある。しかし、すぐ表情が一変、


「じゃが、おぬしに残された時間もうあんまりないじゃよ」

「え? なぜ、なんです?」

「おぬし、娘さんのことは心配しておらんのか?」


 これを聞いて、諸葛夢は後頭部を掻く。表情もちょっと複雑になって、


「別に、ただ、他人の妻になるだけでしょう。まあ、未成年に手を出すなど、確かに許せない行為ですが……」

「本当に? 命がけでも救おうとするおなごじゃぞ? それに、なかなかの別嬪じゃ。わしから見れば、大人になったら、かなりの美人になるぞ。こんなおなご、ほかの男に譲って悔しくないのか?」


 諸葛夢はちょっと黙る。これを見て、徳川聡佑は切り札を出す。


「さらに、もう一つ。娘さんを狙っているランスという男じゃが、彼はおなごに興味ないじゃ」

「え?」


 諸葛夢の不思議そうな顔を無視して、徳川聡佑は続けて説明する。


「まあ、もしあいつが我慢して、娘さんをちゃんと妻として接し、普通に交合(こうごう)するなら、確かに命の保証はある。じゃが、あいつの目的は、どうやら新人類の父になることらしい。普通なら女性の一生、せいぜい十数人か、数十人の子供しか産めんよ。この数じゃ、新人類の父と名乗れんよ」

「!!……ま、待ってください!」

「もし、おなごを触らず、精子提供だけで、短期間で数百ないし数千人の子供を産ませる方法があるとしたら?」


 これを聞いて、諸葛夢の背筋が凍り、両手が震え始める。


「生育マシーン改造技術……バカな、パルタ星人はもう……」

「ええ、じゃが、技術だけ流出され、誰かが入手した可能性はあるぞ。まあ、わしが考えすぎたらいいんじゃがのぅ」


 ちょっとだけ、諸葛夢の心が乱された。恩人たちを今の状況から解放してあげたい。が、アンジェリナのこともかなり心配してきた。これを見抜いたのか、徳川聡佑は彼を慰める。


「なぁに、心配すぎると、判断力に響くぞ。正しい策を運用し、一点突破すれば、娘さんは必ず救える。短い間じゃが、おぬしはわしの立派な弟子じゃ、とてつもない素質も持っている。


 一日、わしのところでさらに一日修行すれば、四両発千斤(しりょうはっせんきん)※2ができるはずじゃ」


 ※上海では、家で男が料理を作るほうが普通

 ※2太極拳の極意、わずかな力で、とてつもない大きな力を引き出す、あるいは対抗するという意味。



修行とは? 諸葛夢は本当に伝説の猟魔人を倒せるのか?

次回を待て!

ぜひ、ブクマ、評価お願いします!!

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