第百二十四話 『赤い瓢箪』
ゴールデンウイークは頑張って書きますぞ!!
新元4年10月28日、名無しの町に、諸葛夢達は再度戻ってきた。今回は、負傷した林宇と、大量の土塊と一緒に。
パッと見ると、泥人形を刃物でバラバラしたような形で、それぞれ、人間の一部に見えるが、全部泥だった。しかし、中には、一つだけ、しゃべっている口がある。
「ひっひっひ、ご苦労だったな。諸君」
カイは汗を拭き、すぐ「口」に聞く。
「で? 嬢様は? 一体どうなってるんだ。チンポウウンさん」
「ホウウンだ! ホウウン! ポウウンじゃねぇよ! 発音はちゃんとしなさい!」
その「口」とは、陳宝云の口であった、
「まあ、慌てんな。わしの知ったところでは、あの小娘はたぶんイオガンルブン教に捕まれたんだろう。もし、あいつの話は本当だったら、ねぇ、裏切者の息子さんよ」
「な、なに? てめぇ、ぶっ殺すぞ!」
林宇はブチ切れようとするが、傷のこともあり、現在パワードスーツはすでにエネルギー切れで、思い通りには動けない。カイは彼を抑え、
「ま、まあ、喧嘩すんなよ。で、林宇、一体何起ったんだ?」
林宇は再び地べたに座り込み、数時間前のことを語り出す。
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時間はちょっと遡り、なぜか急に自爆カウントダウンになった巨大な乗り物のすぐそば。アンジェリナと林宇は千刃丸の結界に閉じこまれ、逃げるも隠れる場所もない状態だった。
ではせめて乗り物の動力炉を再起動し、林宇のパワードスーツに電力を提供すれば、レールガンで結界を突破できるかもしれない。二人は頑張って作業をやっていたその時、謎の四人組がやってきた。白い服の男女と、黑い服の男二人。
「なんだ? お前らは?」
「あ、あの……どいてください! 今大砲発射するよ!」
アンジェリナの警告を聞いて、黑い男たちはちょっと笑って、左右に引いて、道を開ける。
ズーっという充電音のあとに、林宇のレールガンは再度結界に向かって発射する。次の瞬間、電流の音とガラス割れの音が混ぜたような異音、結界は破壊され、透明の破片は空気の中に蒸発されていく。
「ほぉぉ、大砲で結界を破壊するとは……ますます興味深い」
「小娘は私がいただきます。あんたにゃやりませんよ」
「へいへい、承知しました。どうぞ、クロさん」
しかし、悠長に二人の正体を探る時間もなく、アンジェリナはすぐ林宇を引っ張って、廃墟の外に逃げようとする。
「は、はやく! 逃げて!!」
「逃げる? させんよ」
走ってくるアンジェリナを見て、マイケルは合図を出し、白い男はすぐパンチを繰り出す。一撃でアンジェリナを吹き飛ばし、そのまま気を失った。
「おいおい、やりすぎじゃありませんか?」
「おや、ちょっと手加減失敗したようだな」
「まあ、いいでしょう。これで手間を省けたものです。暴れ出したら困りますし、噂じゃ、かなり狡猾な娘らしい」
といいながら、クロは服の中から、赤い瓢箪を取り出し、
「これで、おとなしくしてもらいましょう」
次の瞬間、瓢箪の口が妖しく光り、周りの空間が歪み始める。
「そうはさせんぞぉぉ!!!!」
突然、林宇とアンジェリナの前に、でかくて黒い物体が現れた。よく見ると、千刃丸だった。
「なっ、バカな、わたしのアース・メイズ・ディメンションから逃げてきたのですか?」
「闇土の上位魔法とは、やるな! しかし、俺には効かんぞ!」
「褒めてやるよ。すごいすごい、でもねぇ、あんたが来たって、俺のしもべたちに勝てるっとでもいうのか?」
千刃丸の出現に全く動揺しないマイケルは、悠々と語る。白い男女も、指令を理解したのように、前に歩き出す。
「見くびるな! 彼女を守るためなら、覚悟はとっくに出来ている! 今度こそ俺の真の力を、見せてやる!」
すると、千刃丸の体から、すごいオーラが湧きだし、黑い体も、赤く見える。
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「そしてすげぇ戦いだった。パワードスーツの自動防衛機能がなければ、俺もとっくに死んだかも」
「え? それなら、嬢様は? 彼女は気を失っただろう?」
「心配すんな。どうやら相手はあいつを生きたまま捕獲したいから、無事だったよ。あの時は」
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そう、確かに、しばらくアンジェリナは無事だった。激戦区の攻撃は全く彼女に命中しなかった。白い男女の故意なのか、それとも千刃丸の腕なのか。しかし、戦闘の門外漢である林宇でもわかる。千刃丸は段々と不利になっていくこと。六本の腕を持っていても、白い男女の攻撃を捌き切れない。
相手の正体はわからなくても、アンジェリナを吹き飛ばしたことから、友好的な輩でないことは、林宇もちゃんとわかっていた。パワードスーツはまだそれなりのエネルギーが残っている。一発でかいのなら、まだ発射できる。では、千刃丸、自分とアンジェリナを拉致してきた張本人を援護するのか。
まだ考えているその時、突然、白い男女の攻撃は止まった。二人は急に苦しみだし、何かを呟いている。
「く、くる、あの子が、来る……」
全部は聞き取れなかったが、この言葉だけ、林宇はちゃんと覚えている。
「おや、どうしたんだい? 調整不足かな? クロさん、これはちょっとまずいかも、さっさと片付けて帰ろう。私も疲れたからね」
「あ、あぁ……、言わなくても分かっています」
と言ったら、クロは再度瓢箪を捧げ、アンジェリナの方向に向かう。周囲の空間は再び歪みはじめ、そして螺旋の光線が発射された。
「させるかぁぁぁ!!!」
と叫びながら、千刃丸も口から光線を出し、瓢箪の光線とぶつかる。
激しい閃光、慌てて目を瞑っても、林宇の目は刺されたのような激痛を感じる。再度目を開けると、ぼやけている視線から、すでに石になって、そしてボロボロと崩されていく千刃丸を見えた。
「愚か者め、無駄死にを」
と、得意気にしゃべりながら、クロの手元から、なぜか大きな水晶が現れた。
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「で? いっぱいしゃべったけど、嬢様は?」
「知らねえよ!! あいつらが帰った後、すぐお前らが来たんだろう、あそこには、俺以外何にもねぇよ!!」
「まあ、そう慌てなさんな。もしうらっ、ケッホン、林君の話に間違いがなければ、わしは大体見当ついたよ」
喧嘩になりそうな雰囲気で、陳宝云の「口」がしゃべりだした。
「あの赤い瓢箪は、おそらく伝説の法宝、紫金紅葫蘆だよ」
「金鉱でゴロゴロ?」
「「言ってねぇよ!」」
不思議そうな顔しているカイを見て、林宇は、
「お前、知らないの? 西遊記で結構有名だぜ。相手を葫蘆の中に吸収して、そして溶かす。結構えぐい法宝だよ」
「えええええええ? じゃあ、嬢様めちゃくちゃ危ないじゃねぇか?」
「だから、慌てなさんって、林君は宝石を見たんだろう。たぶん、あれの正体は、小娘だよ」
目は別のところにあるが、たぶんカイと林宇はまだ状況把握してないと思い、陳宝云の「口」は引き続き説明する。
「ほら、まずこっちの状態を観ろ。あのクロってやつは、どうやら闇土の魔法が得意で、あのアース・メイズ・ディメンションっていう技は、相手の体を石や土に変化させ、そしてバラバラにする技なんだよ。別に殺したわけではない。まあ、わしはこういうのが慣れてるから、バラバラになってもしゃべれるけど、隊長たちはね……」
一行は、小さい山みたいな土塊を見る。あれは、諸葛夢達が頑張って持って帰ってきたものだ。確かに、人間のパーツだ。しかも、一部は気持ち悪く動いている。たぶん、陳宝云の物だろう。
「で、ここで重要なのは、石化しても、大きさは変わらんよ。むしろ、重量は増えたから、人を拉致するのに、向いてない技だ。そこで、紫金紅葫蘆の出番ってわけだ。あれは物を縮んで圧縮する力があるから、二つの力を合わせれば、小娘を小さい宝石に変化したわけだ」
「まあ、小さいっていうか、そこそこ大きい宝石だぜ。細長くて、そうだな、大体、100㎜口径の砲弾と同じぐらいかな?」
「おや、意外と大きな。まあ、とにかく、小娘はしばらく大丈夫だろう。あのマイケルの話では、イオガンルブンえらいさんの嫁にするつもりらしい」
「ああ、これなら知ってる」
カイもアンジェリナと諸葛夢と合流後、何度もイオガンルブン教の教徒とやりあったことがある。
「でも、嬢様は嫌がってたし、あれ、気持ち悪いよな。いくら安全とは言え、やっぱり早く奪還すべきだと思うよ。でも、やつらはどこに行ったのかはわからんだろう?」
三人は困っている時、ペへスタとキョロロルは別のところで相談している。
「ねえ、ペへスタ君、船はどこに消えたんだろう」
「さあ、信号は完全にロストだ。一瞬で受信範囲外に転送されたのか、あるいは」
「さっきの話どう思います? あのシキンコウコロは、ものを吸収して溶かす力があるでしょう? もしかして、あたしたちの船はすでに溶かされたかも」
あの宇宙船は二人にとっては思い出の品ではあるが、爆発で罪のない命を巻き込むより、消えたほうがいいと、二人は同時に思う。しばらくの沈黙で、キョロロルはちょっと悲鳴を上げる。
「きゃっ! ぺ、ペへスタ君、あそこに、人が!」
よく見ると、特徴的な銀髪ですぐわかる。諸葛夢だ。これで、ちょっと安心して、キョロロルはペへスタを連れ、諸葛夢に向かう。
「ねえ。諸葛君、一人で何してるんですか?」
近づくと、二人はちょっと驚愕する。出会ってからずっと無表情で口数も少なく、クールな印象の諸葛夢だったが、今は満面の汗で、そして呼吸も荒い。なぜか、苦しんでいる様子。
諸葛夢は一体? そして宝石になったアンジェリナの安否は?
次回を待て!
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