第百二十三話 『Ash to Ash』
新しい来訪者は、敵か、味方か?
前回の続き、不意にも謎の男女に近づくランケンは、真っ先になられた。訳も分からないまま、一発でやられた。一部のマナは仲間たちの武器に使われたとはいえ、彼の鎧は決して脆くはない。なのに、一撃で粉々になった。ヒューイの治療魔法が一歩でも遅ければ、確実にあの世行きだ。
「な、何をするのです? 彼も猟魔人の仲間なのよ! なぜわれわれ人間を攻撃するのです?」
ソニアの問に、二人は拳で答えた。ランケンの時は早すぎて見えなかったが、今回はギリギリ見えた。無数蛇のようなものが飛んでいる。が、それだけだ。蛇の動きが速いうえかなり強力のため、防ぐのも避けるのも無理だった。
ドドドドドドッドン!!
何度も響く低い打撃音とともに、ソニアチームは全員戦闘不能に陥た。
一方千刃丸やゴブリンたちも同等か、それ以上の攻撃を受けた。千刃丸は黒い玉に分離して攻撃を避けようとするが、結局悉く撃ち落され、狼狽な姿で再度融合した。
一分も足らずに、ソニアチームの四人、千刃丸、そしてゴブリンの精鋭部隊数十匹、全部謎の男女によって倒された。
パチパチパチパチ
「さすがはレジェンド級の猟魔人、こんなザコどもは一殺しだね。回収して再調整の甲斐はあるよ。あんなエロ神父に渡すなんて、所詮は宝の持ち腐れ……」
「口を慎んでもらおう、行方不明になったとはいえ、あの人も我が教の立派な神父です。神職者を侮辱するような真似など、私は許しませんよ」
謎の男女のあとに、また二人の男がやってきた。謎の男女と対照的に、二人とも黒っぽい服を着用している。一人はボディガードみたいな黒いスーツ、もう一人は魔術師みたいな黒いケープを着用する。
「いやいや、とんでもない、わたしは信仰自由派だからね。ましてや、いまわれわれは協力関係、貴教を侮辱する気など、毛頭ございませんよ」
(それに、行方不明、ねぇ)
「リザレクション」
黒い男二人がやりとりしている間、ヒューイは力を絞って、ソニアチームに再度回復魔法をかけた。盾のおかげで、彼の受けたダメージは比較的に小さく、元々体の頑丈さもあり、これでやっと復活できた。
「おやおや、また立ち上がるのか。まあ、いいでしょう。私たちもちょっと聞きたいことがあってね」
「あなたたち、何者!?」
「これは失敬、名高いソニア殿にまず名乗らないとぉ。わたしの名はマイケル、まあ、科学研究者の端くれ、っていうところかな。そしてこちらは」
黒いケープの男は慌てて顔を隠し、
「私はいい」
「そっか、こちらの仲間はちょっと照れ屋でね。でも名前がないとやっぱり不便だから、そうねぇ、クロと呼んで構わないよ」
「ネコですか!」
黒いケープの男、もといクロの抗議を無視して、マイケルはソニアたちに語り続ける。
「今日の目的は簡単だ。司馬アンジェリナという小娘を探している。すぐこの辺りにいるはずだが、急に痕跡が消えてて困ってるんだよ。ご存じでないのかね」
「か、彼女に、何の用だ?!」
ヒューイほどではないが、千刃丸も一応回復魔法が使える。全治ではないが、これで、ゴブリンたちも再度立ち上がる。
(ほぉ……これは、妖怪? 仕留め損なったやつがいるとはな、まあ、いいだろう、それより今は……)
「おやおや、あなたは知ってるのようだね。教えてもらえないのかな? なぁに、悪い話ではないよ。これから、彼女はこちらの、イオ何とか教の某お偉いさんの妻になるんだよ」
「お、おい! なんでこちらの目的をばらす?」
「なぁに、別にいいだろう。ランス大教主様の妻になるんだ。盛大な式を挙げるんじゃないのかな?その時、みんな知ってしまうよ。
まさかと思うが、暗い地下牢で未成年少女を強姦したり、体をバラして生育マシーンに改造したりはしないよね? ね?」
「くっ、ぐうぅぅ……」
クロは反論できないと見て、マイケルは再び千刃丸に向かう。
「それとも、まだ痛めつけが足りないのかね?」
マイケルの合図を見て、白い男女は再び千刃丸に攻撃し始める。無数の白い蛇が空に舞うのような攻撃で、素早くて、軌道読みにくくて、そして命中精度が高くて。これで逃げるのも避けるのも無理だと判断し、千刃丸は魔法の防御壁を張る。
巨大な魔方陣は千刃丸の前に現れ、シールドのように攻撃を防ぐ。が、一見全く隙の無い防御だが、なぜか白い蛇は魔方陣を突破し、下の千刃丸達に攻撃を届く。
「や、やられる!!」
千刃丸は一瞬まずいと思ったが、なぜか急に魔法壁は強化された。視線を下ろすと、ソニアは彼の下に立ち、マナで支援している。
「た、隊長!? ゴ、ゴブリンだぞ」
ソニアの行動を見て、ランケンは真っ先に絶叫する。
「一時休戦よ。あんたたちも手伝いなさい! これは隊長命令よ」
すぐ手伝うヒューイと陳宝云を見て、不服だが、仕方なくランケンも加勢する。これで、魔法壁は大分強化され、漏れて入ってくる蛇攻撃は激減した。
「おや、これは奇観だね。あんたたち、猟魔人だろう? なぜ魔族の肩を持つ?」
「時に、人間は魔族よりはるか危険、これぐらいの心得はちゃんと持ってるわ。それに、私たちが助けているのは魔族じゃなく、妖怪よ。さっきあんたが彼を見たときの目つき、あんたも何か気づいたのではないのかしら?」
この言葉を聞いて、ずっと微笑んでいるマイケルの表情は一瞬変わって、
「勘のいい女は、嫌いだ」
再度合図を出す。白い男女はさらに勢いを増し、白い蛇は狂ったのように乱舞し始める。先と違って、今回は隙間から入ってきたのではなく、強化された魔法壁があちこち破られ、内側の者たちを攻撃し始める。
「も、もうだめだ、か、かんべんしてくれぇぇ、に、人間の小娘なら、あ、あっちの廃墟にいるよぉぉ」
猛攻に耐えられず、一匹のゴブリンはアンジェリナの在りかを報じる。
「ほう、そっか。なら、あんたたちはもう死んでいいよ」
三度目の合図を出そうとするが、クロはマイケルを止める。
「待って! あのゴブリンは嘘ついてるかもしれませんよ。殺したら、また一から探すことになりますぞ」
(嘘つき? 魔族が? とんだバカだねぇ)
「ではどうすればいい? ク・ロ・さ・ん?」
クロの両手から、怪しい光が放ち、
「しばらくはここで止まってもらいましょう。もし小娘がいなかったら、帰ってじっくりと聞き出します。アース・メイズ・ディメンション!!!」
すると、怪しい光は線に、線はキューブに化し、千刃丸やソニアたちに飛ぶ。
(ちっ、また仕留め損なったのか、妖怪の生き残りよ。でもまぁ、いいだろう。チャンスならまだいくらでもある。いまは、あの小娘のほうが興味深い。新しい上司もうるさいしな)
「っということで、わたしのパートナーの決定だ。皆さんはここでしばらく、待ってもらおう。寝心地はあんまりよくないかもしれないが、いい子にしてね」
飛んできたキューブは危険だとわかったが、千刃丸やソニアたちはすでに逃げる術はない。
次々つ命中された彼女たちは、体はバラバラになっていく。
一瞬でやられた千刃丸やソニアたち、そしてアンジェリナの運命は? 諸葛夢達は強敵たちを倒して彼女たちを救出できるのか?
次回を待て!
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