第百十七話 『遥々の来客』
アンジェリナを救った、ちょっと変わった新しい友達とは?
まだまだ若いからか、全く興味ないからか、化粧品っていう言葉は、アンジェリナとは無縁の言葉だった。
しかし今日、手術まだ終わったばかりのアンジェリナは、朝一番で、店を通って、パウダーやファンデーションなどを入手する。が、これらは彼女自身が使うものではなく、肌色がちょっぴり変わった新しい友達のために買ったものだ。
フィクションのエルフほどではないが、ちょっと尖った耳と、白人より若干青い肌、それ以外は地球人と全く一緒の男女二人。フルネームは長すぎ上、地球人は到底発音できない部分があるから省略するが、男性はぺへスタ、女性はキョロロルっていう名前だ。
この二人は異星人。事故であるものの、ある意味、毒霧の発生、およびアンジェリナ中毒事件を引き起こした張本人であり、そして、彼女を救った人物でもある。
話はちょっと戻るが、病院でアンジェリナが危篤状態と通告した後、イチかバチかどんな治療薬でもいいから、カイはちょっと近くで魔族で探ろうと思って、一旦病院から離れた。が、すぐ防犯アラームから、マナの乱れを感じた。
「侵入者? イオ何とか教の野郎か?」
まさかこんな状況でも自分の嬢様を誘拐しようとするなんて、頭にきて、カイはすぐ病院に戻る。そして、病室の中にいるのは、ちょっとだけ外見が違う男女だ。
「な? 魔族か?」
相手はなにか注射器らしきものを持って、アンジェリナに注射しようとする。これを見て、カイはすぐ身を構え、自分の嬢様を守ろうとするが、
「まて、カイ君!」
徳川聡佑だ。まだ調査班や医者と一緒に金属の正体を研究している時、不審者の存在を感じ取って、すぐICUに駆けつけた。
「せ、先生?」
「客人よ。ここに来る理由、教えてくれんかのう。悪意は感じぬが、その手に持っているものは、ちょっと物騒じゃ。娘はすでに危険な状態じゃ、これ以上危険物が体に取り込まれると、本当に死ぬぞ」
すると、徳川聡佑は病室のドアを閉じ、あとに来る医者や看護婦が入れないように、指を振って、椅子が勝手に動いて、ドアを塞ぐ。
なぞの男女は互いを見て、男のほうが口を開ける。
「僕は、この少女を救いたい、いや、救ってみたいです。この薬品は、地球の方に効くかどうかはまだわかりませんが、ペルヘニィウムの血液結合症状を抑えるかもしれません!」
「そのぺるへにゅむとは?」
男と女は再度互いを見て、ちょっと躊躇ったら、男は答える。
「ペルヘニィウムは、僕らの宇宙船の……燃料です」
(宇宙船、初めて見たわけではないけど。しかし、毒の霧、巨大ロボットの辺りに宇宙船を発見するのは、さすがにびっくりするね。なんか嫌なことを思い出すな)
話はさらに遡り、毒霧の中、アンジェリナは慌てて諸葛夢が作った縄を分解し、その材料で壊れてパイプに緊急処置を施し、そしてすぐ戦闘音のところに行く。
戦場のすぐ近くに、まさか毒霧の発生源を発見した。小型の宇宙船だ。サイズは戦闘機の二、三倍ぐらいで、上に大きな収納スペースがあり、形はあのロボットもほぼ一致する。では、あのロボットは普段ここから出入りする、あるいはそのまま合体するかもしれない。ロボット自身も、ある種の警備ロボットだろう。
驚きを隠し、アンジェリナはすぐ宇宙船に入る。幸いかなり小さい宇宙船のため、内部をちょっと探索するだけで、毒霧の発生源を特定した。もしマク○スや、フォートレス・マキシ○スサイズだったら、一巻の終わりだ。動力炉らしき機械をシャットダウンし、同じ手法で壊れたパイプなどを塞げ、これで有毒物質の洩れは大分抑えた。
しかし、その時のアンジェリナは、すでに大量の毒を吸い込んでしまい、外の諸葛夢と合流したら、すぐ気を失った。
再度目を開けたら、カイ、林宇、見知らぬの老人と若い男女がいる。しかし、諸葛夢はいない。
ここ数日の出来事を、カイがアンジェリナに説明したら、まずは諸葛夢を追いだしたことで、めちゃくちゃ拗ねった。天刺鳥の宝玉を持って帰ってきたら、絶対彼を引きとめることを、カイと約束した。後、命の恩人の三人に感謝した。
しかし、アンジェリナの心の中に、一つの疑問が生み出した。
徳川聡佑の異星人対策だ。彼のちょっとした術で、二人の肌色を一時的に改変させ、地球人と変わらない色にした。これで、二人を連れ、研究班にペルヘニィウムの構造や特性を説明した。この詳細資料の下で、徳川聡佑はうまく外部から操作し、アンジェリナ体内の金属を血液から分離させ、金属片に変形させた。
まるで、一般人に宇宙人の存在を知らせることはできないことを、知っているのように。
しかし、単純に余計な混乱を起こしたくないかもしれない。それに、アンジェリナの手術後、徳川聡佑はすぐ帰ったため、これ以上の詮索もできない。
考えすぎたかもしれない、とりあえず、目の前の問体を解決しべきだ。特殊な力がなくても、化粧品を使えば、二人の肌色をなんとか地球人ぽくにできる。あと、髪の毛や帽子で耳を塞げば、パッと見ると、普通の地球人だ。
宇宙船が地球に墜落し、しばらく故郷に戻れない二人の異星人、しばらくはアンジェリナ達と同行することになる。なら、まずは地球文化を堪能させようと思い、手術後の回復も重なって、ちょっとした市内観光しようと、アンジェリナは決めた。
市内観光といわれても、最大のターゲットは一つだけ。とある無名のフリーマーケットだ。日本消失の時、大勢の日本人が中国に移住し、そのなか、長沙市に移住した人数がトップクラスに多い。
規模はネオシャンハイの三字バザールに及ばないものの、アンジェリナ目当ての日本の漫画やゲームなら、むしろこちらの品ぞろえがいい。前から噂が聞いたが、まさか実際に来れるとは。最初は嫌がっているが、実際の現場を見たら、諸葛夢も興味津々になってしまう。
「えええええええええ? 地球の昔って、こんなにすごいのですか? 一撃で太陽系を吹き飛ばせるのですか?」
地球地球、連呼したら怪しまれるから、ぺへスタはなるべく小さい声で、一冊の『ドラゴンボ○ル』を読みながら、思わず叫ぶ。
「そ、それだけではありません! 地球の方は、金色のパワードスーツを身に着けると、光速の動きができるんです! しかも、体内でビッグバンもおこせるんです!!!」
「ち、地球って、神秘ですね!」
どうやら、異星の友達に、間違った地球文化を植え付けたようだ。
毒霧中毒事件は一旦終了。しかし、異星人の到来は、新しい嵐を巻き起こす。
次回を待て!
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