第百十四話 『天刺鳥狩猟作戦』
アンジェリナの中毒を治すため、諸葛夢は徳川聡佑の教え通り、天刺鳥を狩りに行く
天刺鳥、攻撃性の高い肉食の魔獣。何でも貫く鋭いくちばしから命名されたが、この怪鳥の本当の脅威は、あの精神攻撃だ。獲物が強力だと判断した場合、特殊の精神波を叫び声の音波と混ぜて相手の精神を破壊する。この攻撃でやられた猟魔人は結構多いらしい。
仕留めるだけなら、気づかれる前に強力な遠距離攻撃するだけで済むが、諸葛夢の目的、天刺鳥の宝玉を手に入れたいなら、話は別だ。
天刺鳥の胸辺りに、丸い宝石がある。その宝玉は、それなり高級な魔道具として知られている。精神属性の呪術とたくさんのマナを保有し、これさえあれば、初心者の覚醒者でも、高度な精神属性の魔法が使える。
そのためか、その宝玉を求めて、天刺鳥を狩る命知らずが結構いるが、ほぼ返り討ちをくらって命が落とされる。
理由として、天刺鳥の戦闘力の強さももちろんだが、一番大きな問題は宝玉の性質だ。天刺鳥の宝玉は、持ち主の怪鳥が死んだ瞬間、ただの石になる。だから生きるまま剝脱する必要がある。
諸葛夢は、徳川聡佑の教えて、天刺鳥の群を見つけた。しかし、十羽ぐらいいて、この数量だと、迂闊に出れば、宝玉を手に入るどころか、やられる可能性すらある。
そこでいろいろ下準備した。天刺鳥好物の生肉を用意し、二日間不眠不休でずっと身を隠して観察した。これで、やっと、たまに単独行動する一羽を特定した。
三日目の朝、ほかの数羽は獲物を探しに出かけて、残されたのは三羽だけ。事前用意した生肉をその中の二羽の注意を惹いて、目当ての一羽が、廃墟の中でうろついていることを確認し、諸葛夢は怪鳥を尾行する。
息を殺して、またしばらく天刺鳥の動きを観察する。キョロキョロしている怪鳥は、やっと正面が向いてくる。これがチャンスだ。
諸葛夢は一瞬で接近して、右手が宝玉を引っ張ると同時に、左手で鳥の首を掴む、これで精神攻撃ができなくなる。驚いた天刺鳥はくちばしで諸葛夢に攻撃するが、精神攻撃よりはるかマシなので、ここで我慢するしかない。
ぽっ!
うまく抜き取った。これで左手が力を入れ、天刺鳥の首をへし折った。生き物の命を奪ってまで救われたことを知ったら、あの小娘はまた拗ねるのだろう。しかし、平気で人を襲ったり食べたりする危険な魔獣だ。後のことを考えて、やっぱり殺したほうがいいだろう。
今すぐ長沙に戻りたいが、諸葛夢はそのまま地べたに座って、休憩し始める。二日間も寝ないうえ、背後は数個大穴が開けられたから、休憩と治療が必要だ。
「よ、兄ちゃん、ここでなにやってる?」
後ろから、人の声がする。しかも、微かにマナが感じる。たぶん、猟魔人だろう。諸葛夢はちょっと振り返ってみて、男二人がやってくることを確認した。が、別に返事する気はない。
「あれ、銀髪と赤い目、もしかして、あの嘘つきのG級猟魔人?」
「え? あ、ああ、風熊を倒しましたって嘘ついて、大会予選でやられたやつか? って、ちょっと待って、こいつ、天刺鳥を倒したぞ!」
「何やってんだ。俺たちはわざわざ狩に来たのによ」
二人はすぐ慌てて天刺鳥の死体を確認する。
「おい、どうしてくれんの、G級。俺たちが遥々ここに来たぜ。手ぶらでかえれるかっつうの」
「そうだ。せめて慰謝料ぐらい払えよ、慰謝料」
傷口の治療は大分済んだ。諸葛夢は立ち上がり、
「天刺鳥ならこの辺りまだ数羽いる。だが、言っとくが、お前たちの実力では、死ぬぞ」
二人の態度から、わざわざマナを抑えているとは考えにくい、それに、天刺鳥の死体を確認するとき、宝玉のことを全く気にせず、言及もしないから、諸葛夢はそう判断した。
「な、なにを!!!」
「俺たちはD級だけど、お前より何個も上だぞ。なんだその態度は?」
二人がまた諸葛夢にちょっかいだそうとするその時、遠いところから、羽ばたきの音が聞こえる。諸葛夢が生肉で遠ざけた二羽は仲間を探しているのだろう。これを聞いて、D級の二人はすぐ興奮して、音の方面に走った。
アホの二人をほっといて、長沙に戻ろうとする諸葛夢だが、すぐ二人の悲鳴を聞こえた。駆けつけてみたが、案の定、何の対策もしなかったD級猟魔人だと、天刺鳥の相手じゃなかった。
幸い、二羽の天刺鳥も、二人の実力を見透かしたのように、くちばしと爪だけで攻撃して、精神波を放たなかった。
「チッ、世話を焼けるやつらだ」
愚痴ながら、諸葛夢はすぐ突進して、一羽の後ろから重い一撃を下ろす。そしてすぐ倒された怪鳥のくちばしを手刀で切り落とし、飛び道具として投げ、もう一羽を仕留めた。
地べたで座り込んだ二人は、驚愕な顔で諸葛夢を見て、しかしすぐ立ち上がり、
「へ、へえ、お、俺たちの囮と削り作戦のおかげで、じ、G級もうまくやったもんだな」
「で、でも、言っておくが、こ、こいつらは俺たちの獲物だぜ。ま、まあ、先の一匹はあんたのものでいいよ」
そして、くちばしが切られた天刺鳥のところに行って、
「手こずらせやがって!」
と罵りながら、怪鳥の死体を踏んだり蹴ったりする。
「この辺りならまだ数羽が生息している。のちにここに戻るのだろう。狩りたければ、どうぞご自由に」
「「え?」」
二人はすぐやめて、怪鳥の死体から何か証拠になれるものを探して、戻って報酬をもらおうとする。しかし、くちばし切られた怪鳥の“死体”をひっくり返すと、諸葛夢はびっくりする。
怪鳥の胸元に、宝玉はまだ宝石のままだった。
一羽の天刺鳥はまだ生きているのか。果たして諸葛夢の運命は?
次回を待て!
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