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サイゴヒーロー ~魔を狩る人~  作者: 古蘭佐
第一章 新学期一日目は忙しすぎる
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第十話 『五つの事件』

 かつて学校鬼路で生徒失踪や発狂の噂が流行ってたが、実際に死人が出た噂はまだない。しかし、今日、大きな血だまりの上、首なし若い女性の死体が静かに倒れている。そして、遠くないところに転んでいて、恐怖の表情をしている頭は、この体の持ち主であった。


 数時間前に電気吸収できる魔獣と遭遇したが、目の前の景色と比べるとまだまだマシ。カイは思わず眉を顰める。


「エグいな。嬢様来なくて正解だ。ナイフ刺されたぐらいと思えばこれか。もう吐き気が……」


 対照的に、諸葛夢は無表情で死体をチェックし始める。


「これ、自殺かもしれないね。」


 こんな馬鹿気な話に相手する気はない。諸葛夢は引き続き現場を調査していた。


「あ、そういえば、お前なんで古さんと知り合いなの?もしかして、お前、犯罪者じゃないだろうな。何やらかした?殺人?強盗?強姦?」


 結局無視された。やることもなく、カイはあちこち歩きまわり始める。


「足跡も重要な手がかりかもしれないから、むやみに歩くな!」


「はいはい、馬鹿みたいに突っ立ってればいいだろう!ああ、来るじゃなかったな。いま嬢様は古さんと何の話をしてるんだろう?」


 9月のネオシャンハイはまだまだ暑い。午前中でも太陽の光は毒々しい。アンジェリナは古天仁と一緒に樹の影で座って会話している。


 古天仁はトレンチコートのポケットから、大きな封筒を取り出し、アンジェリナに渡した。


「なに?これ賄賂?アンジェリナを賄賂するなら、賄賂料一億万円、ローンも可、です。」


「え?なんで日本の金欲しいの?今流通してないぞ。」


「いや、つっこみどころがちがうよ古さん……」


「まあ、心配すんな。死体の写真など入ってないぞ。」


 アンジェリナはたぶん封筒の中に死体の映っている現場写真が入っていると心配してた、と古天仁は読んだ。


 話聞いて安心したアンジェリナは封筒を開け、中にクリップで分けた五つのファイルがあって、ファイルの上に写真が貼っている。


 写真のほかにもちろんいろんな情報が書いてあるが、素早く5枚の写真を確認したら、アンジェリナは思わず息を呑む。


「知っている人?」


「う、うん。しかもよく知っている人は二人いる。」


 アンジェリナは真ん中の二枚を取り出して、


「コ イミン、ゴ シソン、二人とも中古本屋のオーナーで、アンジェリナはそこの常連客ですよ。夏休み前なら、ほぼ毎週行ってたんです。」


「前の二人は?」


「アニタ・ヴァイセンベルガー、キム ジェンヨン、この二人も中古本屋のオーナーですけど、仕入先が違うか、絵本や雑誌などが多い。大した興味ないから、そんなに買ってません。一応知ってるってことですね。」


「中古本の仕入先とは?」


「地下から持ってきたのと、古い家から発掘されたものと、あと、外来の探検者が売ってきたものなど、いろいろなりますよ。」


「へえ、俺あんまり本読まないんでね。漫画でも字を飛ばして読んでたんで、本とか、全然詳しくないな。」


 古天仁は本好きのアンジェリナを感服しながら、


「で、最後の一人は?」


「ベンヤミン博士……」


 アンジェリナは写真のみならず、下の名前を再度確認して、


「心理学科の有名科学者です。確かに人類頭脳ネットワークをテーマにしたプロジェクトで研究していたんです。」


「頭脳ネットワーク?」


「要するに何等かの方法を使って、人と人の意識がインタネットみたいにつながれる技術」


「へえ、これはまるでSF漫画じゃない?」


「ええ、去年もここでスピーチをやりました。終わったら、アンジェリナとちょっと話した。」


「何の話?」


「スカウトの話。ぜひ頭脳ネットプロジェクトに来てほしって。」


「断ったか?」


「ええ、アンジェリナはまだほかのやりたいことがいっぱいあるし、このプロジェクトの課題自体がなんか苦手ですよ。」


「よし、話は大体わかった。次はこの五人の共通点だな……」


「前の四人は全部古本屋のオーナーだから、一応ちゃんとありましたね。でもベンヤミンはどうなんだろう……、あ!ありました!」


「なんだね?」


「全部アンジェリナが知っている人たちです。だから、アンジェリナが犯人です。逮捕してください!」


「はははははは、いやいやいや。」


「だってそうでしょう?古さんほどのベテラン刑事がいれば、わざわざ一介の高校生の力を借りる必要がないじゃないですか?今朝ここに来るのもアンジェリナは黒か、白か、見極めようとしたんでしょう?」


「まいったな……」


 自分の考え事はほぼ見抜かれてしまった古天仁は、さらにアンジェリナを感服する。


「で?アンジェリナは黒ですか?白ですか?」


「完全に白だよ。君に完璧すぎるアリバイがあるからね。」


「やっぱり調査したんですね。」


「これも仕事だからね。気にしないでくれ。」


「ふんだ!アンジェリナ怒ったよ!もう警察局のことは知らない!システム故障しても修理してやん……」


 古天仁をからかうながらアンジェリナは続けて被害者の資料を読むが、死因のところに目が留まってしまった。すぐさま五人全部確認したら、愕然した。


「そうだ。この五人の死因も、俺は君が白だと判断するの理由の一つだ……」


「首切……」


「ああ、今日鬼路の女子生徒の死因と一緒だ。ただ、一点だけが違う。」


「違う?」


 我に返ったアンジェリナは古天仁に聞く。


「この五人の頭はいまだに見つかってないんだ。」



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