表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイゴヒーロー ~魔を狩る人~  作者: 古蘭佐
第六章 戦え猟魔人3!主役はやっぱり諸葛夢&アンジェリナ
108/137

第百五話 『諸葛夢討伐共同戦線』

アンジェリナは安否は? 諸葛夢とカイの運命は?

 目が覚めたら、前に巨大な人影がいる。緑色の人影だ。目の焦点を調整し、今度こそよく見えた。オーガだ、たぶん。がんばって回想し、これで、アンジェリナはようやく状況を理解できた。


 話をちょっと遡り、アンジェリナはキースと左騎の陰謀を見破り、ミニレールガンで二人を気絶させたが、覚醒者の力を甘く見てしまった。普通の縄だけで縛って、あっという間に解かれた。これで形勢逆転になると思えば、キースが妖しい術を使う前に、巨大な影が別荘に入ってくる。そして強い衝撃を受け、アンジェリナは気を失った。


「ほう、目が覚めたのか、大したもんだ。こっちだって悠長に待つつもりはないんでね」


 しゃべっているその時、もう一匹のオーガが壁の大穴から入ってくる。両手に二体の死体を持っている。頭はすでになくなったが、服装から見ると、キースと左騎だった。


「な?! なぜ殺した? まだ聞きたいことがあるだろう!」

「いや、だから、こいつら抵抗しやがったんだよ兄貴。それに、オラ、お腹空いたよ」


 そのオーガは、むしゃむしゃと、左騎の体を食べ始める。これを見て、アンジェリナはすぐ吐く。


「まあ、人間の小娘にとっては、ちった刺激が強すぎたかな。だが、ああならないように、変な真似をするんじゃねえぞ」


 しばらくしたら、やっと吐き気が収まり、アンジェリナはオーガに聞く。


「い、一体何する気?」

「簡単だことだ。銀髪猟魔人野郎の在りかを教えろ。」


 銀髪猟魔人? 少なくとも、アンジェリナの知っているのは諸葛夢だけだ。


「ど、どいうことなの?」

「とぼけるな! この辺りに出現した情報が入ったんだ。銀色の髪に赤い目、間違いねえ! あいつは俺の大親友の息子を喰った! これは我々オーガ族によって、最も不名誉な死に方だ。俺は必ず、あいつを殺して、こわっぱの仇をとる!」


 あれは、確かに地下墓地の時、諸葛元が剣魔百吼を挑発するためにやったこと。


「さあ、早く吐け! さもなくば、痛い目にあうぞ!」

「か」

「「か?」」

「かっこいいいいいい!」


 アンジェリナはすぐリーダーオーガの手を握り、


「ついに、ついに来たのね! あのゲス野郎をやっつけていただける方が現れたのね! あっし、感謝感激だよ。ぜひとも、あのゲス野郎の討伐に、参加させてくだせい、旦那!!」

「お、おおう。か、顔ちかい」


 リーダーオーガはちょっとアンジェリナを押して、


「で? お前もあの銀髪野郎の被害者かなんかか?」

「そうだよ! あの銀髪ゲス野郎、名前は、しょ、猪鋼裂(ちょこうれつ)!」

「肛裂※①? なんか痛そう」


 まだ左騎の死体を食べているオーガが、お尻をボリボリ掻きながら口を挿む。


「あっし、昔、ネオシャンハイで、おじいちゃんとおばあちゃんと一緒に、幸せな生活を送っていた。しかし、ある日、あの猪鋼裂は急に現れ、あっしの家を占有した。おじいちゃんは抵抗してみたが、あいつに殺され、おばあちゃんは通報しようとしたら、あいつに犯された。およよ」

「お、おばあちゃん? あいつ、物好きだな」

「そして、ネオシャンハイはもう満足できなくて、無理やりあっしを一緒に連れてきて、外に出た。あっしは、そんなことや、あんなことや、いっぱいされた。ほよよ」

「え?そんなこと、あんなこととは?」


 アンジェリナはちょっと指で招いて、三つの大きな頭が揃っていく。


(はわ、もう一人いるの? 全然気づかなかった……ま、いっか)


 ちょっと小さい声で三人のオーガに説明したら、三人とも顔が真っ赤になって、そしてリーダのオーガはまた憤慨する。


「猪鋼裂! この人でなし! 小娘になんってことを!」


 そしてアンジェリナの両肩を掴み、


「どうやら、こわっぱの仇だけでなく、お前さんの純潔の仇も一緒に取るべきだな」

「では、同盟結成と考えていいな」


 アンジェリナとリーダーオーガは強く握手する。


「俺の名は強大、今まだ人を喰っているやつは強力、口数の少ないやつは強化。我ら三人こそ、オーガ三! 強! DIEだ!」


 三人のオーガはそろってポーズを取る。これを見て、アンジェリナはちょっと沈黙して、


「あ、あっしの名は、アンシガンドゥ※②、ヨロシク!」


 無理やり三人の中に入り、一緒にポーズをとるアンジェリナ。


「よし、なら、猪鋼裂の居場所を教え、一緒にやつを殺しに行こうではないか?」

「ちょっと待った! 本当にこのまま行く気? しょ、猪鋼裂は、かなり手ごわいぞ」


 これを聞いて、強大は大笑いして、片手で柱を掴み、ちょっと握ったら、大理石が粉々になった。そして再度筋肉ムキムキポーズを取る。しかし、これを見て、アンジェリナは頭を振って、


「強大の旦那は確かに強い、しかし、あの猪鋼裂はたぶんあんさん以上だよ。彼は何と、剣魔を倒したことがある」

「剣魔ってなに?」

「え? お前、剣魔も知らないの? ちょっと勉強しろよ」


 強大は強力にツッコムが、ちょっと考えて、どう説明するのかは、わからない。


「剣魔とは、いにしえの中高位魔族だ。戦闘能力だけなら、魔界では、魔竜族に次ぐ、二位とされる。魔界のみならず、人間界の多くの武術も、剣魔が開発して伝授したらしい。かの一族は一生修行して、最後は魂を剣などの武器に移るから、剣魔と呼ばれた。


 かつて剣魔たちも王国を築き上げたが、武道にしか興味ない種族のため、ちゃんとした国家の機能ができなかったうえ、国王と王子王女は全部失踪し、国自体は崩壊した。


 今となって、かなり珍しい種族なため、強力兄貴が知らないのも無理はない」


 三人は、ポカーンと、今まで全然喋らない強化を見る。しばらくすると、


「ケッホン! で、でしょう。猪鋼裂は剣魔をも倒したのよ。これでも勝てる自信があるの?」


 これを聞いて、強大はちょっと躊躇う。


「どうする兄貴? 菖蒲姉貴は全員集合って言ったし、復讐はあきらめよう」

「な、何言ってるんだ?」


 強大はまずきょろきょろと周りを確認して、


「あの女狐はゴブリンたちにしか興味ない。俺たちは完全にパシリ、雑務係だ。誰が行くもんか」


 そして、強大はアンジェリナに向かって、


「じゃあ、アンシガンドゥ、先は意気揚々同盟組んだが、お前は何か策があるのか?」

「ふ、ふふ、ふわははははは、よおく聞いてくれた! あっしは、あの猪鋼裂の弱点を知ってるのよ」

「ほ、本当か?」


 強大は態度が一変、まるで女神を見てるのような目でアンジェリナを見つめる。


「まあ、まずは聞くが、あんたたち、飛べる?」


 強大強力は頭を振って、


「ご先祖様なら少々」

「じゃあ、マナは扱える?」

「何がマナだよ、女々しい。魔力だ。俺たちオーガを甘く見たな。魔力ぐらいなら、いくらでも使えるぜ」


 すると、アンジェリナはポケットから、ボロボロのアメシストを取り出し、


「これに、マナ、もとい、魔力注入できる?」

「わっはっは。なんだ。安い御用よ」


 強大はアメシストを取って、ちょっと考えたら、また強化に渡す。


「強化、お前がやれ」


 強化はアメシストを取り、目を瞑って、力を溜め始める。たくさんの光点が、アメシストに集中して、そして眩しい光は放つ。


「できた」


 アンジェリナはすぐアメシストを取ろうとするが、どういうわけか、どう引っ張っても、空中に停まっていて、びくともしない。そしてまたしばらくすると、アメシストから光点が消え、これでやっと地面に落ちる。


「ど、どういうこと?」

「これはこっちのセリフだよ。アンシガンドゥ! このおもちゃに魔力注入と、猪鋼裂打倒にどういう関係がある? 説明しろよ」

「それはね、猪鋼裂を倒すには、飛ぶ必要があるのよ」


 アンジェリナはアメシストを振りながら、三人に説明する。


「あの猪鋼裂はね、最大の必殺技は、スペシャルデラックスゴールデンデリシャスハイパワーボロっ、大旋風だよ。あの竜巻の威力は半端なく、半径数十キロのあらゆるものを木っ端みじんに破壊しちゃうのよ。しかし、あの必殺技にある弱点がある。それは……」


 アンジェリナは指を上に指すと、強大強力は同時に別荘の天井を見る。


「「天井に何もないよ」」

「上だよ上! 竜巻の上は弱点なのよ。だから、もし飛ぶ手段があれば……」

「あいつに脳天直撃できるのかぁ。しかし、このボロおもちゃはダメだ。これは確かに、ええっと、あの……」


 強大は何かを言おうとするが、ちょっとド忘れか、なかなか言えない。これを見て、強化は説明する。


「空中鎖定(さてい)魔法。お前たち人間も理解できる言葉で説明すると、空中の特定の座標に固定する魔法だ」

「じゃあ、ほかに何か飛べる魔法ってあるの?」


 強化はちょっと考えて、


「空に飛ぶ魔法ならたくさんあるが、わたしの知っているものなら、浮遊魔法……かな?」

「使える?」


 強化は頷いて、また目を瞑って力を溜める。しばらくすると、


「できた。ちょっとわたしを持ち上げてみて」


 試しに、アンジェリナは強化を持ち上げる。なんと、三メートルにも及ぶ巨体が、風船のように、軽々く持ち上げる。


「これって、もしかして?」


 アンジェリナの両目がキラキラになって、すぐ強化を連れて、地下室に走る。状況を全く理解できない強大強力も仕方がなく、あとを追う。


 地下室には、アンジェリナが修理した研究用設備が数台あり、どうやら、これらの設備は、空間観測測定設備だった。すぐコンピューターを起動して、いろんなセンサーを強化に向かう。


「やっぱり、地球重力によっての空間歪みから、乖離している。浮遊魔法の真相は、反重力魔法なのね」


 アンジェリナは頭を上げ、強大強力に向かって、親指を上げる。


 あれから、アンジェリナは強化と相談したながら、ある設計図を書く。そして強大強力を指揮して、設計図通りにあるものを作り始めた。途中何度も寝てしまったが、丸一日かかって、巨大な檻が出来上がる。


 三メートルにも及ぶ巨大な丸い檻だ。周りは柵ではなく、鋭い鉄片になる。真ん中は巨大な円盤があり、円盤の上にたくさんのケーブルがある。ケーブルは一本の太い鉄棒に繋がり、棒の上に強化が彫った魔術の印がある。


「「なんじゃこりゃ」」

「へへへん。今まではSF小説にしか存在しない。反重力飛行装置、名付けて、試作型ペガサスPGX0ハイフン1!」

「「お、おお」」


 強大強力は全く理解してないが、一応相槌はする。


「本来ならロケットエンジンとが、ジェットエンジンを積みたいけど、時間も材料もないもんね。真ん中の円盤は反重力装置で、周りに鉄片は回転翼で動力を提供する。そこで、あなたたち三人は、中に入って、魔力を提供してもらうよ」

「え? なんで俺たちが?」

「エネルギーだよエネルギー。エネルギーないと飛べないよ。それに、あなたたちは飛んで、猪鋼裂を倒すでしょ」


 強大強力は、拳を掌に叩いて、納得する。


「よし、では、まずは一回テストしよう。さあ、入った入った」


 アンジェリナは三人のオーガを檻の中に入らせ、そうしてやり方を教える。三人は真ん中の鉄棒を握って、意志集中して、魔力を棒に注入すると、下の円盤は青く光り、檻の外側が回転し始める。しばらくすると、檻が浮かび始める。


「アンシガンドゥ! う、浮いたぞ! でも本当にこれでいいのか? め、目が回るぅぅ」


 檻が回ると同時に、中の三人も一緒に回転し始め、そしてスピードがどんどん速くなる。


「あ、しもった。設計ミスで、中のモルモッ、じゃなくて、パイロットも一緒に回転しちゃう。あ、手を離さないで! 遠心力で外側に飛ばされたら、ミンチになるよ」

「ええええええ? じゃ、じゃあ、早く止めて!」

「やべええ、あっし、ブレーキなども一切入れてないわ。それに、方向も変更できないの。だから、こうするのよ」


 アンジェリナは地面に置いてあった一本の鉄板の上に跳んだら、鉄板のもう一方が上げ、試作型ペガサスを諸葛夢の行った方向に弾き飛ばす。


「まあまあ、魔力が尽きたら、自然に止まるよ。ねえ、聞いてる?」


 アンジェリナは走って、試作型ペガサスを追うが、なぜか、檻の中から、罵声しか聞こえない。


「は、謀ったな! アンシガンドゥ!」

「坊やだからさ」


 飛行装置は一度地面に墜落したが、まだまだ魔力が余っているのか、すぐ再度上昇する。そしてやがて、星となって夜空の中に消えてゆく。


「バイバイ、試作ペガサスPGX0ハイフン1、バイバイ、三強DIE、強く生きるのよ、しくしく」


 廃墟から、諸葛夢とカイを救出し、三人は別荘に戻って、ちょっと休養を取る。


 翌日、ほぼ回復した三人は、引き続き西に向かう。カイが運転して、アンジェリナは諸葛夢とちょっと雑談する。アンジェリナは、ある質問する。二重人格で、人格が変わったら、やったことはまだ記憶にあるのか。


 諸葛夢はちょっと考えて、頭を振る。そこで、アンジェリナは、地下墓地で、諸葛元が子供オーガを食べたことを彼に告げる。


 あれからしばらくの間、諸葛夢もアンジェリナと一緒に肉を食べなくなったとさ。


 めでたしめでたし


 ※①痔の一種

 ※②俺はバカの意味


三人そろって、さらに西に向かう。次待っているのは、どんな冒険なのか?

次回を待て!

よかったら、評価していただければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ