第百三話 『妻女レスキュー』
西に向かう冒険はまだ続く
今までの状況を整理しよう。災後、地球の半分はあらゆるものを喰い尽くす暗闇に覆われ、この暗闇の対処法は、現在のところ、ない。便宜上、関係者は、暗闇を黒い霧と呼んでいる。黒い霧はどんどん広がって、今の計算では、あの二年ぐらいで、地球を覆い尽くし、残された人類を含め、すべての生き物は全滅。しかも、あと数か月で、黑い霧は一部都市の可視範囲内に入るので、民衆はパニックになり、社会の再度崩壊も必至。
新元4年、偶然で異星に転送された諸葛夢とアンジェリナ二名。転送先は人類生存可能な惑星だった。そして、そこには転送技術を所有した異星文明が存在し、何等かのワープゾーンで、地球と繋がっている可能性が高いと、アンジェリナは主張する。
そのワープのキーとなっているのは、ゾルド水晶とストーンヘンジ。
ゾルド水晶、巨大なエネルギーを内包する鉱石で、どこから、誰が持ってきたのかは不明。角砂糖サイズ一個で、災前地球10年間の電力を提供可能。ネオシャンハイには米粒サイズのゾルド水晶数個所持しているが、足りない可能性が高く。現在は調達チームがほかの都市と連絡を取って、調達中。
ストーンヘンジはワープゾーンの起動装置みたいなものだ。ヨーロッパはすでに黒い霧に覆われたので、ほかのを探すしかなく。色んな冒険者の話を聞いて、どうやら成都と徳陽の辺りに、それらしい遺跡が発見されたそうなので、アンジェリナの目的は、実際のあっちに行って、ゾルド水晶を手に入れたら、現場で分析及び起動実験をする。
もし成功できれば、人類は母なる地球と別れ、新しい惑星に移住することになる。
唯一の問題はアンジェリナのおじいさんだった。ネオシャンハイの外には危険がいっぱいあるから、その行動は許されるはずがない。そこで、偶然巻き込まれた事件を利用して、ネオシャンハイから追放され、これでやっと出発できた。あとは、カイと合流して、一緒に西に向かうだけ。
ジョーシティの事件を終わって、二人はさらに西に向かい、そこで、一軒の別荘があり、どうやら人が住んでいるのようで、そこで一休みしようと、アンジェリナは提案する。
しかし、入口辺りで遭遇したのは、歓迎のメイドなどではなく、巨大な剣を持っている男だった。
「曲者!」
と叫びながら、大剣を諸葛夢に斬りかかる。確かにマスドライバーの攻撃を受けて負傷したが、これぐらいのものはどうということはなく、諸葛夢は指二本で大剣を止め、そして一蹴りして、男を蹴り飛ばす。
「く、くそお、強い! 殺したければ、こ、殺せ。ここはもう女いないよ!」
諸葛夢とアンジェリナは互いを見て、
「あたしたち、強盗じゃないよ。一応」
「一応は余計だ」
男はもう一度目の前のアンジェリナと諸葛夢を見て、
「え? 女を奪いに来たじゃないの?」
「かわいい子なら考えておく」
「おい」
諸葛夢はアンジェリナの頭を掴み、
「誤解を招くこというな」
「だって面白いもん。本音だし」
しばらく沈黙
「あ、でも、もし強盗じゃないんなら、その腕、もしかして猟魔人の方?」
本当の目的は言えないが、冒険者と自称し、簡単な自己紹介したら、男もすぐ名乗る。左騎という名で、この別荘の使用人だそうだ。そして、別荘の主人は、腕の立つ猟魔人を探している。すると、すぐ二人を中に招く。
外見も大したボロくはないが、内部はさらに清潔感のある建物だ。高級そうな家具こそ少ないが、かなり綺麗に片づけられ、ガラスも、大理石の地面も、ちゃんと人が映せる。ジョーシティの時と大違いだ。
しばらくしたら、一人の老人が、二階から現れ、左騎を見たら、ちょっと怒ったのように、
「左騎、まだ行っておらんのか? 早くDSの猟魔人を連れてこいといったはずじゃ」
「旦那様、DSの猟魔人じゃないが、IEの猟魔人ならひとり」
アンジェリナは左騎の腕を引っ張る。
「二人連れてきました」
「(おまえ、いつ猟魔人になったんだ?)」
「(まあまあ、ムウのパートナーだし)」
これを聞いて、老人のはすぐ嬉しそうに、階段から降りて、
「こんなに早く? でかしたぞ! どれどれ?」
アンジェリナと諸葛夢を見たら、ヒゲを撫でながら、称賛する。
「おお、まだ若いのに、すでに猟魔人なのか。立ったまま話すのもなんじゃが、すぐお茶を用意して、ゆっくりと話そう」
すると、二人を小さなガーデンに招待する。また災後と思わないぐらい一味違うガーデンだ。植物たちはちゃんと手入れが施され、いろんな色の花の中、白い西洋式のテーブルとイスが置いてある。ちょっと座ったら、左騎はティーセットなどを持ってきて、お茶を入れる。
老人の名はキース・ウエストン。本当なら妻と娘、そしてメイド数人が一緒にここで生活していたが、最近、近くに図体のデカイ怪人が現れ、女性を全部拉致した。怪力の持ち主である執事の左騎も全く太刀打ちができない相手だった。メイドたちももちろんだが、何より妻女の安否を心配していて、腕の立つ猟魔人を頼んだら、救出可能かもしれない。
「でも、怪人はなぜ女性を攫ったんだろう」
男の三人は、ちょっと気まずそうな沈黙をし、しばらくしたら、キースは先に口を開け、
「まあ、たくさんの嫁がほしいじゃろう」
「へえ、つまり、ハーレムってこと? うらやま、じゃなくて、けしからん! でも……奥さんまで攫ったよね。怪人も物好きなのね」
(((言ってくれるなこいつ)))
「あ、いや、実は奥様はまだ結構若いので、今年はまだ二十歳ですよ。むしろお嬢様のほうが年上なんです」
「(ムウ、まずこいつを懲らしめてくれないのかな)」
「(なんでだよ)」
「ケッホン! ま、まあ、とにかく、もしわしの妻女、そしてここのメイドたちを救出してくれれば、必ずお礼を進呈するぞ。この別荘にあるものなら、なんなり」
諸葛夢とアンジェリナがちょっと相談したら、やはり助けることにした。そこで、怪人や、攫われた女性たちの情報をいろいろ聞く。怪人とは、身長二メートル筋肉ムキムキの大男のことだった。二日前、突然別荘の中に入ってきて、女性たちを大きな袋に入れ、そして遠くない北の古い屋敷に連れ帰った。
大体の情報が判ったら、アンジェリナはとりあえず諸葛夢一緒に行こうとするが、諸葛夢とキースは彼女を止める。女性をターゲットする怪人なら、彼女が一緒に行くと逆に危険だ。とりあえず諸葛夢だけが偵察しに行って、状況確認したらすぐ戻るつもりだ。
キースの別荘から出て、今度こそちゃんと北に向かって、諸葛夢は怪人の屋敷に向かう。10分ぐらいで到着したが、全く人の気配がない。しかし周りの建物はかなりボロイなので、場所は間違いないはずだ。ならどうせ来たから、中に入って、もうちょっと捜査する。
キースの別荘と比べるとかなり小さい屋敷なので、ちょっと探したら、上の階は全部調査済みになった。黄昏の時間になって、夕日の光を借りて、諸葛夢は地下室を見つかる。そして、確かに地下室から微かマナの渦巻きを感じて、どうやら怪人とは、魔族か覚醒者の可能性が高い。
こっそりと階段を下りて、地下室に行ったら、そこに巨大な男などいなかった。壊れた天井から、太陽の光がちょっとだけ入ってきて、青い髪の毛が見える。
そしてちょっと近づいて確認したら、カイだ。
なぜカイはそこにいるのか?
次回を待て!
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