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カースト最底辺の狼  作者: 睡眠戦闘員
二章:狼的な幸運
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58.殺意の休戦



◆現世◆



 ここまで真面目な足を憎まない日はない。


 旭に命の危険と授業出席のどちらが大切かと問えば、心は命だと答え、頭は授業だと答えるらしく。旭は周囲から認知されている印象とは裏腹に、学校をサボることはできなかった。


 昨日のことは、まだ鮮明に思い出せる。大怪我を負っていたはずの昊が当たり前のように復活していたし、一日に二度同じ人間に殺されかけた。


 車から飛び出した後は無我夢中で走って帰宅したため、どうやって帰ったのかだけは記憶がすっぽりと抜けているが、それでもあの時の精神は恐怖に支配されて正常では無かったのは自覚していた。


 家に帰った直後、深夜まで出歩いていたのを咎められて父親にボコボコにされたのが、むしろ安心した。


 昨日をきっかけに加速し始めた悪夢のような日々に思いを馳せながら、現代文のノートを取る。まだ四限目ではあったが、睡眠不足のせいでほとんど夢を見ているような精神状態だった。


 日曜日にもかかわらず友人に誘われ、近いうちにある学祭の準備を手伝わされるために学校へ行った事が始まりだった。


 丸一日一人の時間はなく、ようやく帰れると息を吐いて下駄箱を開くと、そこには旭を病院に呼び出す手紙が置かれていた。普段であればまずそんな手紙には応じないが、手紙の最後が「来なければ、お前のやったことを全て然るべきところに報告する」と締められていたのだ。


 旭がやったことは、はっきりせずとも予想はついた。指定場所が昊が入院している病院であることと、自身の昊への仕打ちに自覚があった旭は、その指示に従わないわけにはいかなかった。


 学校を出たその足で病院へ向かい、昊の病室の扉を開き——そこから先は夜の静かに怒る冷たい表情ばかりが印象に残っている。


 夜のことを思い出して、旭はいっそう気分が落ちた。彼女も同じ学年だ。あの優等生ならば絶対に今日も遅刻もせず学校に来ているだろう。旭は、廊下の先から夜が飛びかかってくる想像をして体の芯を震わせた。


 教師が授業を締めると同時に生徒が一斉に動き始め、その直後にチャイムが鳴った。


 ガタガタと男子が机を動かして仲間の机に向かい合わせ、なぜか昼飯ではなく腕相撲を始め出した。学年中でも特に「動物園」と名高いこのクラスは、休み時間は笑い声と奇声が絶えない。


 旭はそんなクラスを見回し、昼飯を取り出した。昨日カラオケにいたメンバーは学校に来てはいたが、一限に遅刻してた上にそこから机に突っ伏したままで未だに居眠りから目覚めていない。


 大方二日酔いだろうなと呆れと嫌悪感に襲われながら、旭はいつもの”みんなを引っ張る旭”の表情を引っ張り出してきて、一番近い位置にいる友人を叩き起こした。


「起きろ酔っ払い! 」

「う〜……あたまいたい……」


 頭を抱える数名の友人を引っ張り、机を動かし、いつも通りの昼休みの風景、雰囲気を作る。いつも通りでいないと、昨日の出来事に引っ張られて暗い思考から抜け出せる気がしなかった。


「そういや、旭って昨日カラオケなんで来なかったの?」

「……めんどかったから!」


 いつも通りではない出来事のことをわざわざ蒸し返してきた友人の一人に笑顔で返す。幸運なことに、昨日カラオケで泥酔していた友人たちは、旭がきちんと呼び出されてカラオケで合流したことを覚えていないようだった。


 記憶を無くすほどに酔った友人たちへの呆れと共に、万が一飲酒がバレても無実の自分が巻き込まれる心配がないことに安堵した。それと同時に、やはり保身のことしか考えていない自分を憎む。


 あまりにも頭痛にうめく友人たちを見かねて、飲み物を買ってくると言って、旭は席を立った。


 両親が製薬会社の社長夫妻だけあって、自由にできる金はまあまあある。飲み物数本で配下の信頼を保てるならば安いものだろう。


 自販機は高等部の校舎の端である下駄箱に設置されているものが近い。早足でそちらに向かう。階段を降りて、曲がり角を――


「校則違反だ! 没収する!」

「ぎゃああああああ! オレのホワイトアイズドラゴン!」


 曲がった直後、中学入学以来耳にタコができるほど聞いた鬱陶しい声が聞こえてきた。


 視線の先、一年生の教室の扉が勢いよく開き、ジャージ姿の生徒が出てくる。足に涙目の男子生徒を縋りつかせていたが、脚力任せに振り払って教室の扉を閉めた。そして、ジャージの襟を正しながら、こちら側を向いた。


 昨日の制服姿とは違い、学校指定のジャージ姿でどう見ても男にしか見えない風貌と、鋭い目つき。今日一番会いたくない人間に鉢合わせた。


 逃げようにも、もう遅い。旭の足はすくみ上がって動かない。


 夜は旭の姿を見とめると、小脇に校則違反(没収した)品であろうものが入った段ボール箱を抱えて歩いてくる。昼休みという廊下の通行も多い中、人目も気にせず堂々と。


 息が上がる。動悸が加速し、夜を中心として視界が霞む。いや、夜とその他観衆(・・)以外の景色が、だった。


 夜が目の前まで来る。その手が上げられるのを見て、旭はビクッと体を震わせ、腕で顔を庇った。


 しかし、恐れていたような攻撃はいつまで経っても夜から飛んでくることはない。


「髪色が明るい。化粧。爪の不必要な装飾。スカート丈が短い。全身が校則違反だ。何度言って何時になったら直してくるつもりだ、音乃(ねの)


 代わりに飛んできたのは、刺々しくもいつもの(・・・・)夜の出会い頭の文句だった。以前から毎日毎日校内で鉢合わせるたびに、彼女に吐かれ続けてきた定型文。


 あまりにもいつも通りの対応が過ぎている。まるで昨夜の出来事が悪い夢だったように思えて、反射的に顔をあげる。


 目の前にあったのは、いつもの愚者にも思える怒り顔ではなく、冷ややかに見下す夜の顔。それを見て、昨夜のことは現実だったのだと理解した。


「あ……——」


 ——理解した瞬間、旭はいつもの強迫観念に襲われ、口と体が勝手に動いていた。


「あ〜ら、坊ちゃん。今日も迷惑パトロールご苦労様〜!」


 自分でも驚くほど明るい声が喉から飛び出した。


 夜が妄想通り飛びかかってきてくれたなら、旭は“被害者面”のままでいられた。しかし、夜は“いつもどおり”を演じている。ならば、旭もそうしなければならない。


 なぜなら、この場には人目があるかだ。


「違反の”品”ではないからな。こちらも違反しているところを剥ぎ取るわけにもいかない。自主的に直してもらわなければ」

「あはは! 剥ぎ取ってみれば? アンタは捕まるけど、私の素行はなおるかもよ?」

「やってやろうか」


 教室の中から、廊下を行き交う生徒から、校庭に面した窓の外から。全身に突き刺さる観衆の視線が“いつもの旭”を保っている。


 旭と夜の二人はある意味校内で有名人だった。


「アンタこそ、いい加減ウザがられてるって自覚したら?」


 夜は言わずもがな、武闘家の家柄とその厳格な性格から毎日自主的な校内パトロールを怠らず、教師よりも他の生徒から鬱陶しがられている。それと同時に、容姿も悪くない上に男っぽいため、密かな人気がある。


「そうだな。お前がその横暴すぎる態度を改めたら、考える」


 旭の方は容姿の良さと、クラスのみならず学年のリーダー的存在として、悪く言えば逆らえばどんなことされるかわからない畏怖の対象としてカリスマ的な高い認知度を保っていた。


 そんな二人の犬猿の仲もその知名度に拍車をかけている。ほぼ毎日、校内のどこかで繰り広げられる両者の口喧嘩は、既に生徒から“見せ物”としてコンテンツ化されていた。


 だから、こんなに注目が集まる場所で昨夜のような弱い旭を晒すわけにはいかないのだ。『厳格な性格で事あるごとに噛み付いてくる夜』と『軽薄でありながら堂々とした態度で軽口を叩く旭』をあくまでも保っていなければならない。


 ——いや、夜は違うんだろう。


 こんな強迫観念に囚われているのは旭だけだ。夜は当たり前のように正しいと思うことをやっているだけ。


 そう思うと、いま夜が怒りに任せて襲いかかってこないのは、むしろおかしいことにも思える。


「……アンタ、演技派?」


 周囲には聞こえない声量でつぶやくと、夜は旭から目を逸らした。よく見ると右手の拳を強く握りしめている。


「それはお前の方だ……この大嘘吐きが」


 抑えていたであろう怒りを鋭い目に覗かせながら毒を吐くと、夜は足早にその場を去っていった。


 足が震え出すのを感じながらその背中を見送る。そういえば、昊はどうしたのだろうか。



 

 ・ ・ ・ ・ ・




「あああ゛っ!!」


 夜は無人の生徒会室に飛び込むと同時に、目先にあった机の上に右手の拳を叩きつけた。怒りと、そして強烈な痛みに耐えるためにはそうするしかなかった。

 

 しかし、音乃への苛立ちが湧き出るたびに、その叩きつけた手のひらに刻まれた牙の模様が一層肌に食い込んでいく。「噛みつかれている」と言う表現では、我慢ならないほどの激痛が腕から全身に伝播し、夜はたまらず床を転げ回って悶え苦しんだ。


 魔王曰く、これは刺青()からの警告なのだそうだ。


 昨夜、怒りのあまり音乃を切り捨てる勢いだった夜は、この激痛に阻止された。理由は、「魔王の目的達成の円滑化のために協力すること」という誓いの内容を違えようとしていたから。つまり、音乃を殺すことは魔王の目的――並びに昊を取り戻すのを困難にするのと同列だと言うことだ。


 夜は歯を食いしばりながら机の足に捕まり、立ち上がる。額から噴き出た汗が床に垂れた。たった数十秒の会話だけでこれだ。どうやら誓いの審判は音乃を憎む心の存在すら許してくれないらしい。会話している間、常に激痛に襲われていたのを、根性だけで平静を保っていた。本当に食いちぎられるまでいかなかっただけ、まだマシだ。


 憎むにしてもおかしい心の動きをしていると、夜は自覚していた。昊が事故にあったあの日から、昊が昊でなくなってから、昊がもっと遠い所にいると知ってから。昊との物理的距離を再確認するたびに彼への“恋心”が増幅している。


 好きで好きで好きでたまらない。こんなのは異常だ。依存と言ってもいいレベルの彼への執着心が、音乃を憎む心に餌を与えている。


 いつからこんなに昊がいなくては何もできない人間になってしまったのだろうかと、夜は独り、自分の行いを振り返る。出会った当初は昊が夜の助け無しでは生きられないような状態だったのに、いつの間にかそれが逆転してしまっているではないか。


 感傷的になったおかげで、右手の牙は鳴りを潜めた。肩で息をして、右手をもう一方の左手で抱いて蹲る。


 音乃を憎むなと言うならその理由をくれと心の中でつぶやくと、先程対面した音乃の顔が思い浮かんだ。


 彼女の顔にはうっすらと青痣があった。理由は知らない。少なくとも、夜が原因でないのは確かだ。彼女を殺す勢いだったが、結局何も出来ていないのだから。


 音乃を見つけたとき、どう対応するか逡巡したが、その青痣のついた顔が昊と重なり、冷静になることができた。散々昊に痣をつけた人間に昊が重なるなんて皮肉にも程がある。しかもこの現象にあったのは二回目だ。最悪だ。


 この状況を誰かに話し合いたいが、生憎夜には昊くらいしか友達と呼べる者はいない。魔王も、まだ昊が目覚めていない(てい)を装うために病院に戻ってしまった。


 軽い憂鬱に襲われていた夜だったが、ハッとして顔を上げた。生徒会室の外、廊下から足音が近づいてくる。


 そういえば、今日は中等部から学祭で行うクラスごとの企画書が届けられる日ではなかったか。この前の金曜日が締め切り、今日に中等部生徒会の承認を得たものが上がってくるはずだ。昼だったか、放課後だったか。確か昼だ。


 鈍くなっていた頭を急速に回転させながら身を正し、平常時の顔を作る。学校の仕事をしている間は何も余計なことを考えずに済むので、比較的心が楽だった。


 殴ったせいでズレた机の位置を直し、パイプ椅子に着席したところで生徒会室の扉が三度ノックされた。どうぞと返事をすると、扉が開かれ、角メガネで白髪(・・)の男子生徒が姿を見せた。


「失礼します、六堂(むどう)先輩!」

「ああ、神里(しんり)か……」


 夜を見るや否や男子生徒――神里は太陽のような笑顔で元気な挨拶と共に入室してきた。


 彼とは夜が高校に上がった直後、ちょっとしたいざこざがあった際に世話になった中等部の一年生だ。


 夜と同じく生徒会所属で、とても礼儀正しく頭も優秀な少年という印象がある。そして、ものすごく顔が整っている。確か既に中等部一年生を中心にファンクラブが設立していた。


 初対面でこの白髪を見たときは、叩き潰してやろうかと思ったものだが、なんと地毛らしい。地毛なら何の問題も無い。

 

「学祭の企画書の提出だな。ご苦労」

「いえ!可愛い女の子である六堂先輩のためならボクは、どんな仕事も喜んで引き受けますとも!」


 念の為言っておくが、神里は夜に惚れているわけではない。極度のフェミニストなだけだ。


 素行がとびきり良いにも関わらず、女子を見つければ声をかけ、容姿を褒め中身を褒め口説き落とす。しかし女遊びはしていない。ややこしい。


 悪い人間ではないのだが、夜は内心ひっそりと彼をあまり関わってはいけない狂人認定していた。


 ちなみに、ジャージフル装備のどう見ても男にしか見えない夜を、初対面で女だと見抜いた化け物でもある。

 

 腑抜けた言動をしているようにも見えるが、既に夜への口説き文句は学祭の企画書の説明へとシフトしていた。マジで恐ろしいやつだな、と思いながら、夜はその説明に耳を傾けた。


 しかし、その間にも頭の隅に思い浮かぶのは昊のことだ。


 学校なんて放り出してしまいたいくらいだったが、昼の間は魔王は昊として病院にいなくてはならない。彼がいなくては、目的他生のために何をすればいいのかもわからないので夜にはすることがない。だからこうして、いつも通りの学校生活を送るのに甘んじている。


 異世界にいるという昊はいったい何をしているのだろう。この世界にいた時と変わらず、悪い人間に喜んで蹴られに行ったりしていないだろうか。誰かを助けるために身を犠牲にしてはいないだろうか。


 そもそも、本当に無事に生きているのだろうか。


「心ここに在らずですね」

「あ……すまない」


 我に帰ってすぐさま謝罪したが、神里は優しくにこやかな笑みを浮かべていた。どこか謎に嬉しそうでもある。


「恋の悩みですか?」

「……」

「恋の悩みなんですね!? わあ、やっと自覚したんだ。おめでたいですね!」

「何がだよ……」


 寸での差で吹き出すところだった。すまし顔のままほんの少し固まった夜を見て、神里の笑顔の輝きが一層増す。


 どうしてこんなにも勘がいいのだろうか。男は女の心に少し鈍感なくらいがいい。ここまでニアピンされると逆に怖い。


「違う、そんな色恋の話よりも企画の説明を——」

「相手は昊先輩ですよね? 今日はどこにいるんですか?」

「ぐはあっ」


 夜は今度こそ吹き出した。


 そういえば、前述したいざこざの中で、神理は昊とも顔を合わせていた。それから昊とは高等部と中等部という間がありながらも仲が良かったようだ。今日のように夜が生徒会室にいるときは大抵昊もセットでここにいたので、神里は二人の関係性は把握していただろう。


 しかし、そうだとしても察しが良すぎる。


 なんてやつだと睨みつけるが、神里は微笑ましそうな顔をやめない。


「あの人事故にあったって聞きましたけど、容体は大丈夫なんですか?」

「……まあ、悪くは、無い」


 まさか魔王のことを馬鹿正直に言うわけにもいかず、複雑な気持ちで答える。年上にも関わらず、会話のペースを持っていかれていることに対してイラッとしながらも、心の中で「悪いやつじゃない、悪いやつじゃない」と唱えて心を落ち着かせる。


「退院したら、もっと素直になるといいと思いますよ」

「ンなことは自分でわかっとるわッ!」

「なら良かった!」


 我慢ならず声を張り上げた夜の怒声も物ともせず、神里は嬉しそうに笑った。


 夜は、今の一瞬でせっかくのポーカーフェイス(すまし顔)が崩壊し、顔が熱くなっていた。未熟な自分を恥じながら、振り上げかけた拳を無理矢理開いて自らの額に当てる。


「いつだって相談に乗りますよ、ボク。六堂先輩のためなら、野郎への口説き文句だって告白シチュエーションだって考えられます!」

「余計なお世話だ! 話は終わりなんだな、オレはもう行く!」


 あからさまに話を遮った夜は、赤い顔を押さえながら椅子から立ち上がった。そういえば、まだ昼飯も食べていなかった。腹を満たせば苛立ちも鎮まるだろう。


 すると、神里は慌てて手に持っていた書類を机に置いて、出口の扉に駆け寄ってきた。


 夜がその取っ手に手をかけるよりも前に神里が扉を開けて、「どうぞ」と手を添えた。あまりにも手慣れているその動作に、驚いて思わず彼の顔をマジマジと見てしまう。


 夜に想い人がいるってわかってて、しかも女遊びが目的でないとすると、こんなことをする理由がわからない。


「……わざわざそんなことを」

「お気になさらず。”全ては女の子優先”。――レディ・ファーストがボクの命なんです」


 そう神里三月(・・)という男が言うならば、そうなんだろう。夜は深く考えることをやめた。


 親切を無駄にしないよう、黙って生徒会室を出る。


「あ、そういえば六堂先輩って照れた顔も可愛いですよね」


 余計な一言が聞こえてきたので、夜は後ろ手に思い切り引き戸を閉めた。どうやら神里の手を巻き込んでしまったようで、生徒会室の中から絶叫が聞こえてくる。


 人が駆けつけてくる前に夜は足早に廊下を歩いて生徒会室を離れた。


 階段を上がる直前に振り返ると、生徒会室の前に神里が出てきていた。そんな彼の友人らしき廊下の反対側から歩いてきたアホ毛の少年が、手を擦るミツキのことを肘でどついているのが見えた。


 その様子が優等生にしては間抜けに思えて、自然に笑みが溢れた。


 思い返せば、笑ったのはいつぶりだろう。彼と話したおかげか、気分がだいぶ楽になっていた。




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