表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/39

行動心理学からみた「なろう」のアプローチ

 私はこのエッセイで、ビジネスの応用で底辺を脱出してみるとアプローチを書いていますが、今回は行動心理学でのアプローチを考えてみたいと思います。

 行動心理学とはアメリカの心理学者ジョン・ワトソンが提唱したもので、「行動や仕草のパターンから心理を研究する」というもので、ビジネスマーケティングでも使われます。有名どころでは「吊り橋効果」などがあり、気になる人とお化け屋敷などでドキドキするところに連れて行けば、恐怖のドキドキを恋愛だと勘違いしてくれるかもしれないというものです。


 全ての人に当て嵌まるというわけではありませんが、似たようなパターンでの行動を起こす場合が多いという話であり、ビジネスでもよく使われます。ハーバード大学の教授で脳科学、心理学、マーケティングの3つの分野に精通しているジェラルド・ザルトマン氏が「人間の思考や行動の95%は無意識下で行われている」と提唱しており、販促活動にも当然反映するべきであるとも主張していることが起因となっています。


 難しい話かなと思われると困るので例を出す方が分かり易いと思います。例をみれば「ああ!」と思う事も多いと思います。


・カクテルパーティ効果

 たくさんのグループが雑談している中で気になるキーワードをキャッチしたとたん、そのグループの会話が聞き取れるようになるという効果です。広告などでは「我慢しなくてもできるダイエット」のキャッチコピーが当て嵌まります。これはダイエットに失敗した人が我慢というキーワードに反応するというものです。

 実は「なろう」では、これが良く使われているのはタイトルだと思っています。「なろう」は確かにジャンルが分かれており好きなジャンルを読むことができますが、殆ど毎日のように新しい物語が投稿される中、どのような作品を選ぶでしょうか? ランキングが多いとは思いますが、初めての作品はランキングに載るためのアプローチをする必要があります。


 ジェラルド・ザルトマン氏によると、人が物を買う時には7つの段階があると言われています。具体的には、「注意」「興味」「連想」「欲望」「比較」「確信」「決断」となります。

 つまり、人は初めて商品に接触するとき、注意・興味を引かれ、自分の生活にどんな良いことがあるのかを連想し、考えたあげく欲望が生まれ、他と比較し確信に至り、最終的に買うと決断します。


 購買の話をそのまま読者が読むまでの過程と考えてみましょう。最初は作品タイトルを読むことになりますので、そこに興味を持たせてる事ができれば、数多くの作品の中から読まれる可能性を増やすことができるという事になります。


 タイトルを長くする意味は、読み手様の興味をわかせる事が一番重要なことであるという事です。なんとなく長いタイトルをつければよいと考えるのではなく、どのように書けば読み手様がまず覗いてみようと思えるかという意識を持つだけでも違いが出てくるのではないかと感じます。


・認知的不協和

 これは「人は矛盾する考えや行為(認知)を同時に抱えると、ストレスを抱えてしまうため下手な言い訳でも屁理屈でもいいから自分を説得にかかる」という行動心理を示します。

 お酒が好きだけど健康が気になるという時に、糖質0発泡酒というようなものがあると手に取りたくなりますよね。糖質0だから大丈夫という行動心理が働きます。

 「なろう」では、全体的にチートと言われる能力が好まれます。これは「認知的不協和」を上手く使っているのだと考えます。物語というのはある程度の結論が出ている事が好まれると思っています。程よいストレスを与えてそれが解消できるという部分を物語に盛り込むと良いかもしれません。


・ツァイガルニク効果

 これは「途中で話をやめられると気になって仕方がなくなってしまう」行動心理を示しています。よく広告で使われるのは、「〇〇成分が凄い!」というキャッチコピーです。物語でいうところのフラグでしょうか? 少し隠されているというのがポイントとなります。あまりこういうタイトルは見たことがないなぁと思ったのですが、意外と検索をしてみるとありました。タイトルで使うよりは、物語内で謎のようにするのがよいかと個人的には感じています。


・バーナム効果

 これは「ある程度誰にでも当てはまる事象を自分のことだと思ってしまう」行動心理を示しています。「最近疲れがたまったと感じませんか?」というような広告を見たことがありませんか? 古典的な手法ですが、重要なポイントとして「自分の事だ」と思わせる事です。例えば転生前の状態がブラック企業に働いていたという設定だとすると、共感を得られれば読者を掴むことが出来るかもしれません。


・返報性の原理

 これは「人から何かをもらったり何かをしてもらったりすると、お返しをしなければと思ってしまう」という行動心理です。だからといって見返りを求めて感想を書いたりポイントをいれるのは、あまり気持ちの良い話ではありません。

 でも、普段から他の書き手様の小説を読んで感想を書いたり、ポイントを入れたりしないで、自分の小説には自然とポイントが入るものなのかと私は感じています。

 結果的には私も「返報性の原理」を使っているのかもしれませんが、読まれるための努力という話であれば、そのようなコミュニティも大事だと考えています。


・単純接触効果

 これは「毎日のようにみているうちに覚えてしまう」という行動心理学です。これは毎日投稿するのが良いという話に近くなると感じます。人気の書き手様はやはり毎日のように投稿されている方が多いです。私は底辺を嘆いている方は、一番この部分を外しているような気がしています。


 今回ご紹介した行動心理は購買心理の「注意」「興味」に訴えかけるもので。このように行動心理を使う事で自分の作品をまず見てもらうということができるかもしれません。多くの書き手様はこれらの事を自然に実践していたりしています。

 「注意」「興味」「連想」「欲望」「比較」「確信」「決断」を上手く読み手様に訴えかける事ができれば、読まれる作品になるのではないかと感じています。


 いかがでしたでしょうか? 「なろう」の世界をビジネスとして捉え、「まだまだやれることがある!」と思われた方がいらっしゃれば、書いた甲斐があったかなぁと感じております。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
px8k3lr1vqx7nebd7wo6vce660p_36f_dw_6y_qf
― 新着の感想 ―
[一言] 沢山戦略があるのですね (*´▽`*) とても勉強になりました☆彡
[良い点] とても面白いです。その上、わかりやすくためになる。 海外の映画を日本で売ろうとする時に、配給側がまず手にとってもらう為に無茶苦茶やるじゃないですか。邦題とかキャッチコピーとかポスターとか詐…
[良い点] ビジネスの知識がなろうでも活かされるとこれを読みまして思いました。 実はツァイガルニク効果は良く無意識に使ってます(←とんでもない場面を入れちゃって自分で収拾つかなくなっているだけ)そう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ