海外で有名な経営戦略からみた「なろう」のアプローチ
ビジネスには経営戦略というものがあります。あくまでも経営戦略であり組織論も入りますので、全ての内容を「なろう」に適応することは難しいです。戦略サファリ(ヘンリー・ミンツバーグ著)でも紹介されていますが、10派閥があると言われています。
1. デザインスクール
2. プランニングスクール
3. ポジショニングスクール
4. アントレプレナースクール
5. コグニティブスクール
6. ラーニングスクール
7. パワースクール
8. カルチャースクール
9. エンバイラメントスクール
10. コンフィギュレーションスクール
戦略論といえば「マイケル・ポーター」が有名ですが、実は3番目のスクールの理論となっており日本で有名になりすぎたという話もあります。
折角ですので「マイケル・ポーター」の戦略論のお話をしたいと思います。マイケル・ポーターは極端な理論を展開しています。基本的に基本戦略として以下を掲げています。
・コストリーダーシップ戦略
・差別化戦略
・集中戦略
この戦略は企業戦略として、強者と弱者の戦略を示しています。これらは私もランチェスター戦略でも近い内容を説明させて頂きました。
コストリーダーシップ戦略は、圧倒的1位が他の方々が実施してきた内容をマネをして実施していく戦略となります。コストという言葉で惑わされるかもしれませんが、「なろう」の中で考えてみましょう。ある無名な書き手様がいらっしゃって、素敵なアイディアを出したとします。その内容は読まれておりませんが、それが素晴らしいものとします。では、それを使って物語を読み手様が沢山いらっしゃる方がマネをしたとします。結果は受け入れられれば凄い効果が発生します。
読んでいる方々は卑怯だと言うかもしれません。しかし、芸術の世界はオマージュの繰り返しです。作家によっては、しっかりと出典を明かす方もいらっしゃいますし、似たような話が数多くある場合は出典を明かさない方もいます。
逆に言えば、無名であれば差別化戦略や集中戦略で勝負する必要があるということになります。
まず、集中戦略の話をしたいと思います。よく企業であるのは地域戦略です。例えば、飲食店などで最初に地域を抑えてしまうという戦略です。あるコンビニエンスストアでは全国展開をしている大手3社がいるにも関わらず、地域No.1を維持しています。なろうで例えるなら、ジャンルを絞って戦うということではないかと感じます。ある書き手様は特定ジャンルにおいて、年間ランキングの3割を自身の作品で抑えています。また、私達は時間という有限のリソースを持っているわけですから、そのリソースの集中化という考え方もあります。ある書き手様はいきなり長編を書くことはなく、長編構想のある短編をまず書いて、受けがよいと感じた物語を長編化するということもしています。
次に、差別化とはどういうことなのかという話になるのですが、簡単にいうと自身が持っている負けない物という話になります。ただ単純に負けない物をもっているというだけでは、戦いには勝てるとは言い切れません。なんだ勝てないのか……という話になりますが、「マイケル・ポーター」は5つの力の分析を使って、差別化のヒントが出せると提唱しています。
ファイブフォースは競争力分析というもので、簡単にいうと競争を回避して楽して勝ちましょうというものです。なろうに勝ち負けが関係ないといわれるかもしれませんが、もともと底辺と嘆かれている方のヒントになればと書いているエッセイなので、同列のポイントが入らないところから頭一歩抜け出すにはという意味合いで考えてもらえれば良いと思います。
ファイブフォース分析では競争をしているのは自分達だけではなく他の要因もあると提唱しています。
・同業者の競争
・新規参入の脅威
・代替品の脅威
・買い手の交渉力
・売り手の交渉力
前提として、自分が小説を書いているとして、あまり読まれていなくて落ち込んでいるとします。
そしたら、もっと良い作品を書けばいいんだと勝手に周りをライバル視して書き続ければ、いつかは読まれるようになるのでしょうか? これは「同業者との競争」という部分になります。ここだけで戦っていても簡単に読まれるようになるとも考えにくいのではと考えます。
まずは「買い手の交渉力」を考えます。買い手は「なろう」では読み手様となります。なろうにある何十万という作品の中でどういう読まれ方をするのでしょうか? なろうの書き手様の中には、読み手兼書き手様という方がいます。私もその中の一人です。では本題に戻って、毎日沢山の新着小説がある中で0ptのものと少しでもptがある作品なら、どちらを読まれる確率が高いでしょうか? そう考えた時に読まれるための活動をするという選択肢を選ぶのも良いのではと感じます。
具体的には、活動報告が活発なグループを閲覧したり、書き手様が主催するイベントに参加してみてください。読まれる確率が一気に上がり、もしかしたらptを頂けるかもしれません。そうすれば既に0ptの新着とは差別化がされることとなります。
次に「売り手の交渉力」を考えます。「なろう」に売り手は関係ないじゃないかと言われるかもしれませんが、これを仕入れる事ができるネタと置き換えてみましょう。芸術はオマージュの連鎖でもありますので、似たような作品が多くなります。では、その似たような展開にスパイスを加える事ができるものは何があるのでしょうか? ここで自分が昔にハマっていた事などを付け加えて、それが一般の人よりも少し抜きん出ていれば、目を引くという形になります。例えば異世界にマヨネーズを持っていく話が流行ったとします。同じようにマヨネーズを書いたとして、すでに劣化版としてしか見られません。
では「代替品の脅威」にいきます。これは分かり易いですね。同じ物語展開としても代替品を使う事で目を引く形になります。例えば人気の聖剣の物語があったとして、これが魔剣に変わったとしても剣という意味では代替品です。人気のテンプレートのお話展開を使って代替品を当ててみましょう。しっかりとストーリー展開がされていれば、私は面白い作品になると思っています。
最後は「新規参入の脅威」です。全く違う分野の展開を別のジャンルに持っていく方法です。恋愛ものが得意だったとして、それをコメディにもっていけばラブコメになります。ラブコメを恋愛もののジャンルのままで勝負するのでしょうか? 私ならコメディとして読んで頂く事を考えます。何故なら恋愛ジャンルの読み手様がコメディを読みたいかは分かりませんが、コメディジャンルの読み手様はコメディを求めているので読んでくださるはずです。
ここまで読まれてきて、マネなんかしたくないと言われる方もいるかもしれませんが、ラーメン屋を考えてみてください。麺があってスープがあって具があることは変わりません。油そばはスープがないといいますが、基本的な考え方は麺に味を絡めるという点では同じです。つまり、小説も同じで基本の組み立てをマネをしても問題ないという考え方もあるということです。
そして、マイケルポーターの戦略論では、最後に「活動システム」という考え方を持ってきています。それは単発にしないということです。ある牛丼屋の有名なキャッチコピーですが、「うまい」「はやい」「安い」というのがあります。これらを1個ずつならマネをすることはできるが、重ねる事によってマネが難しい=オリジナルになるという考え方です。
なろうで考えてみましょう。恋愛とコメディを重ねてラブコメとなし、それにざまぁ展開を加えるとどうなるでしょうか? そんなの出来ないよと言われるのかもしれませんが、得意な分野を軸にすることで私はできると思っています。少なくとも経営戦略としては正しいアプローチなので、最初から諦めずに考えられるのも良いのではと感じます。
いかがでしたでしょうか? 「なろう」の世界をビジネスとして捉え、「まだまだやれることがある!」と思われた方がいらっしゃれば、書いた甲斐があったかなぁと感じております。