⑥
「ふう、ふう、中々強いわね」
「はぁ、はぁ、君こそ。女のくせに骨がある」
「ふう、ふう、そろそろ、降参しても良いんじゃない?」
「はぁ、はぁ、というか僕の勝ちだろ? 与えたダメージ的に」
「ふう、ふう、私はまだ死んでないわ」
「はぁ、はぁ、僕だって死んでない」
「ま、まあ、貴方が強いってことは分かったわ」
「そ、そうだね。僕も君と組めるのなら喜んで組みたいよ」
「じゃ、じゃあ勝負はもういいかしら」
「い、いいだろう」
二人が武器を収めた。こちらへ歩いてくる。
「次は?」
ルルアが両手を腰に当てる。俺はでこぼこになった地面を見て苦笑した。
「じゃあ俺が」
挙手する。
「あ、貴方」
ルルアが赤面した。パンツのことを思い出したのだろう。
「あの件は気にすんな」
「う、うん。朝は、お世話になりました」
きちんと礼の出来る子だった。
昔の俺のことは覚えていないようだ。
「で、武器は? というか鼻血出てるし」
「興奮すると出るんだ」
咄嗟に嘘が出た。
「それはやばいわね」
「冗談だ。それより」
俺は腰に差していた短めの杖・ワンドを手に取る。
「これだ」
「ふーん。一応訊くけど。火力系武器?」
武器には特性がある。ルルアのシールドソードのような防御系武器。アノンのロッドのような回復系武器。ケイスケのような火力系武器。
「ああ、火力系だ」
「ふーん。ってそれアークじゃない?」
アークと言うのは闇精霊アークサリオンの力が宿った武器のことだ。モンスターを倒して手に入れることができる武器は全てアークである。逆に人間が持っている武器はセレスである。光精霊セレスティーナの力が宿っている。この世界に人間がやってきた時、または生まれた時にセレスティーナから授かるものだ。
簡単に言うと。
セレスティーナは人間の味方。
アークサリオンはモンスターの味方。
セレスは青くアークは赤い。
そういうことだ。
「アークだが?」
「アークでいいの?」
「かまわん」
「ふーん。じゃあ、かかってきなさい」
「おう、行くぜ」
俺はワンドを振った。脳裏に今まで倒したモンスターが思い浮かぶ。このワンドは今まで自分が倒したモンスターに変身することができる。俺はジャガイモ戦士を選択した。俺の体が光りに包まれて変身する。出現したのはジャガイモに両手両足が生えた畑の天敵モンスターだった。
「は?」
ルルアは口をあんぐりと開けた。
「どうした。かかってこい」
俺は両手を組んだ。
「貴方、ふざけてるの?」
「ふざけてなどいない。これが俺の力だ」
「私の足と同じサイズね、貴方の体」
「それがどうした?」
「踏みつぶすわよ」
「やってみろ」
ルルアが歩いてくる。そして躊躇せずに俺を踏みつぶそうとした。俺は両手を突き上げて全力で阻止する
「どうだー!」
「いや、どうだって言われても」
ルルアは足を離しもう一方の足で俺のジャガイモの体を蹴っ飛ばした。
「ずわー!」
俺は地面を転がりやがて止まる。しまった想像以上のダメージを受けてしまった。
体が光に包まれる。俺は人間の姿に戻った。
「まあ、こんなところで許してやろう」
「許すも何も、あんた弱すぎでしょ?」
「強いとか弱いじゃない。分からないのか?」
「分からないわ」
「ジャガイモのふりをして敵地に潜入するには持ってこいの能力だ」
「粉ふきイモにされるのがせいぜいね」
「くそう、分からない女だ」
「役に立たないわ」
その時だ。
「油断大敵、ブラッドカーズ」
ナージュが左手に書を広げ、右手の人差し指をくるくると回していた。
ルルアの肉体、皮膚がぼこぼこと振動する。
「ちょ、卑怯」
「リントさんをいじめる人は許しませんわあ。ウインドウィークネス」
ナージュの地面に風の渦巻きが起こる。彼女の顔は真っ青になった。一時的な病気になったのだ。
「ま、魔法書?」
ナージュのセレスは魔法書だった。
「当たりですわ。それではとどめの、メリースリープ」
「リフレクション」
ルルアの前にバリアが現れる。今までのとは色が違う障壁だ。紫色である。ナージュのスキルが弾かれた。同時に光で出来た羊たちがナージュに襲いかかる。
「コントラクト」
ナージュが右手を上げた。緑色の光に包まれて羊が消え去る。
「その魔法書、便利ね」
「うふふー、お褒めいただき光栄に存じます」
「合格よ」
「合格? まだ戦い足りません」
「いや、どうでもいいから私にもコントラクトして」
「もうー、しょうが無いですわあ。コントラクト」
ひゅんっと音がしてルルアの顔色が元に戻る。風邪が治ったようだ
「じゃあこれでおしまい」
ルルアが武器を収めた。周りをぐるっと見渡す。
「皆合格よ。ただし」
俺の方をびしっと指さす。
「あんたを除いてね」
「マジか!?」
俺は口を半開きにして体をこわばらせた。




