⑤
グラウンドに出たのは五人だった。アノン、ルルア、俺、残りは男女一人ずつ。こんなに広いグラウンドだが、他の生徒が使っている様子は無い。
ルルアが剣と盾を持って構えていた。
「誰からでも良いわ。かかってきなさい」
紅色のスカートが風になびく。
「わ、私から」
アノンがロッドを持って前に出た。
「いいわよ。来なさいな」
「い、いいんですか?」
「ええ」
「ほ、本気で行きますよ」
「どうぞ?」
「し、死んじゃいますよ」
ルルアは笑いをこらえきれなかったのか高らかに声を上げた。よほど愉快なのか目尻に涙が浮かんでいる。
「いいわ。殺せるものなら殺してみなさい」
「く、くう、馬鹿にしてえ。行きますよ」
アノンが杖を振りかぶる。
「障壁よ」
ルルアが唱えた。彼女の前に薄い水色のバリアが現れる。アノンが杖で立ち向かって行った。
「えいえいえいっ、この、このっ、このっ」
アノンは何度もアタックするが障壁はびくともしない。次の瞬間地面が鳴った。ルルアは流れるように回転してアノンの背後をとり剣の柄で首筋を叩いた。
「ぐえっ」
アノンは地べたに倒れる。そのままびくびくとして動かなくなった。
俺は感嘆の吐息をついた。
ルルアは強くなったんだな。
びっくりしてしまった。
「次」
ルルアは剣を鞘にしまって残りの三人を眺める。
「僕だ」
俺とは違うもう一人の眼鏡の男が前に出た。
「名前は?」
ルルアが問う。
「網代ケイスケ。武器はこれだ」
大剣を両手に構えている。大剣は近接火力武器である。
「いいわよ。私の障壁を破れるのなら、来なさい」
「行くぞ」
ケイスケが走り出す。ルルアはまたバリアを展開した。
「烈風突き」
彼が唱えた。突きのスキルが繰り出される。刀身に風が渦巻いた。相当な攻撃力が乗っている。バリアと大剣が摩擦してバチバチと光った。
俺は後ろに下がって距離を取った。
ルルアは防御をあきらめたのか後ろに跳んだ。着地する。
「さすが火力さん。凄いわね。私のバリアを削るなんて」
「中学校時代に聞いたことがある。鉄壁のルルア。お前だな」
「ふーん。知ってるんだ。ごめんね、私は貴方のことを存じていないけど」
「僕に二つ名なんてないからね」
「ふーん」
「行くぞ」
「来なさい」
それから二人の激しい戦いが始まった。突風が吹いたり時には地面に大穴が空く。俺は両腕を組んでそれを眺めていた。
ふと後ろから背中が小突かれた。
振り向くと残っていた一人の女子が満面の笑顔を作っている。青い髪をセミロングした女子だ。青系統のローブの重ね着をしている。なんだろう。
「どうかしたか?」
「リントさんですわあ」
俺はまだ誰にも名乗っていなかった。俺の名前は桐生リントと言う。
「俺を知っているのか?」
「わたくしをお忘れですか?」
思い出そうとするが記憶になかった。
「誰だ?」
「ひどいですわあー」
ビンタされた。
すごい力だった。
俺は地面に倒れる。鼻ににゅるっとした感触があり手で触ると鼻血が出ていた。
立ち上がる。
「何しやがる」
「許嫁を忘れるからです」
「許嫁?」
「まだ思い出せないのですか? ナージュです。ナージュ・クラフィミアでございます」
「し、知らないな」
ナージュが再び右手を構える。
俺は両手を前に出して振った。
「知らないものは知らない」
「お忘れですかあ?」
「親からも聞いて無い」
「もういいです」
プイッとナージュが横を向く。俺は両手で鼻血をぬぐいながらルルアたちに顔を向けた。そこではまだ激しい戦いが続いていた。




