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「やばい、このままでは物語がR18になってしまう」
何を言っているんだ俺は?
というか。
「っておい!」
俺は立ち上がった。
パンツを返さなければいけない。教室を走り、扉を出て、廊下を駆けた。すぐそこにルルアたちがいて、歩いてくるところだった。今日のテストは終わったようだ。三人しかいないところを見ると、今日も加入希望者は全員落選ということだろうか。俺はパンツをズボンのポケットに突っ込んだ。
「リントくん、どうしたの?」
俺は顔小刻みに振ってひょっとこみたいな顔になった。
「いや、なんでもないんだ」
「うっわ、何か怪しい」
アノンがネズミを見つけた猫のように瞳を輝かせる。
「リントさん、誰か追いかけているのですか?」
「違う、違うんだ。そうだ、俺は」
「「俺は?」」
「トイレ!」
苦し紛れに叫んでダッシュした。他にこの場を上手く逃れる方法があるだろうか。いや無い。
俺はトイレに入り、鏡の前でポケットの中からパンツを取りだした。
「くそう……」
またポケットに戻す。
「落ち着け俺。落ち着くんだ。そうだ、俺は、落ち着く」
頭が冷静になっていく。トイレを出た。そして今度はゆっくりとした足取りで教室へ戻った。
室内ではルルアたち三人が表情を険しくして俺を待っていた。なんだろう。
ルルアが言った。
「リントくん、私たちの財布は?」
「財布?」
そうだった。俺は案内板係だけでは無く、三人の貴重品を預かっていた。
「机の中だ」
俺は言った。
「無いよ?」
アノンが俺の机の中に手を伸ばす。空のようだ。
「は?」
今度は何が起きた?
「リントさん、もしかして、さっきの?」
ナージュが心配そうに眉をひそめる。
「そ、それは違う」
シアは財布を盗んでなんかいない。だから俺は、財布を盗んだ犯人を追いかけていた訳ではない。
「じゃあ、私たちの財布はどこに行ったのよ?」
「冗談だろ?」
俺は自分の机まで歩き中身を見た。本当に無い。
「ぬ、盗まれた」
ルルアが俺の頭をはたく。
「どこで?」
「いや、ここで」
「いつ?」
「今さっき」
俺が教室を出た瞬間に盗まれたということだろう。他は思いつかない。
「誰に?」
「分からん!」
「ちょっとー、リントちゃんしっかりしてよ~」
「リントさん」
ナージュが顔を落とす。その時放送が鳴った。
ピンポンパンポーン。
「ぱっぱらぱっぱっぱー、たったらたったったー、はいはい学生の皆さん。落ち着いて落ち着いて。深呼吸が大事だよ。すーはー、すーはー」
全員が天井のスピーカーに顔を向ける。
今度はなんだ?
「警告、警告、怪盗レナちゃんが、皆の財布を持っていったよ。このお金で、これからイチゴジュースを買おうと思います。それとねそれとね、うーん、ここの売店にあれば良いんだけど、ティラミスも食べたいの」
「「レナ?」」
放送の声、その声色は幼い子供のようなものであった。しかしこの学校に子供など存在するのだろうか。
「誰?」
ルルアが俺をにらみつける。
俺は顔を振った。
「知らん」
「リントちゃん、しっかりして」
「とにかく、放送室へ行きましょう」
ナージュがルルアを見た。
「そうね。相手が場所を変えないうちに」
二人は早足で歩き出した。その後ろにアノンも続く。
「俺は売店に」
全員で放送室に行く必要は無いだろう。相手はイチゴジュースとティラミスを買うと言っているのだから売店にも一人行った方が良い。そう思ったが。
誰も俺の声には振り向かなかった。
俺はため息をついて売店に向かった。




