㊳
……。
はたと目を開ける。
ずいぶんと寝ていたようだ。岩場にはよだれがダラダラと垂れていた。まずい、喉がカラカラである。
「み、水、水」
「はい」
目の前に水筒が差し出される。誰だか分からないが助かった。俺は水筒の口を開けてごくごくと飲んだ。
「はあ、生き返った」
「良かったわね」
「ああ。ところで、お前は誰だ?」
「お前呼ばわりは失礼なんじゃない?」
「すまん。でも、俺は口が悪いんだ」
「直しなさい」
「直らん」
「ふーん、別にいいけど」
女子が俺の隣に来る。金髪であり長い髪を高く結っている。
知った顔だった。
と言うかルルアだった。
「う、うひょぇぇぇ!」
「何よ、変な声出して」
「ど、どうしたんだよ」
俺は立ち上がった。
「鐘は?」
せっかく取ってきたものだったのだ。
「地球は?」
そこに行くことが彼女の夢だったはずだ。
「天国は?」
「ルジーさんとヘレナさんが行ったわ」
「お、お、お前は?」
「祭はまたあるわ」
彼女も立ち上がった。さらに近くに寄る。両手で抱きしめられた。ふくよかな感触が胸にあった。
「な、な、何をっ」
「しっ」
「なっ」
「何も言わないの」
そのまま二人で湯船に沈む。
「お、おい」
「静かに」
俺はどうしたらいいのか分からなかった。彼女は俺を抱きしめている。俺も抱きしめて良いのだろうか? 俺だって男だ。こんな風にされたら理性がもたない。
「抱きしめて、いいのか?」
「うん」
俺は彼女の細い肩を抱きしめる。
自分の体がとても熱い。
彼女は顔を俺の首にすり寄せた。
「ねえ」
「な、なんだ?」
「私がケイに連れていかれた時、ひどいこといっぱいさせられたの」
「あ、ああ」
「男の子って、エッチなことばっかり」
「ああ」
「リントくんも、私にひどいことしたい?」
「ああ」
俺は正直になってしまった。
「していいよ」
耳元でささやかれる。
「じゃ、じゃあ」
「じゃあ?」
「あと一時間、このままで」
「このままでいいの?」
「ああ」
顔が熱い。
熱い。
この気持ちはアレだ。
懐かしい。
恋なのかもしれない。
「なあ」
「何?」
「お前は何で地球に行きたいんだ?」
「それは」
ルルアは空を見上げた。
「私の家族はもう地球にしかいないから」
「地球にしかいない?」
「うん。私の祖父母が地球に生きていればいると思う。だから、会いに行きたいのよ」
「おじさんとおばさんは、死んだのか?」
「おじさんとおばさん? リントくん、私のパパとママを知ってるの?」
「ああ。ロディおじさんと、チヨミおばさんだろ?」
「なんで?」
ルルアは驚いて体を離した。
「そ、そりゃあ、ええと」
俺は右手で額をこすった。
「俺、お前と同じ保育園だったから」
「え、え、えええええええええええっ!?」
ルルアは仰天し口をパクパクとさせた。
「き、気づいたか?」
「もしかして、リントくん!?」
「ああ」
「あのリントくん!?」
「だからそう言ってるだろ」
「泣き虫の?」
「悪かったな。泣き虫で」
「嘘」
ルルアはうつむき唇をすぼめた。少しして顔を上げる。
「……私のセレスはどうしたの?」
交換したセレスのことだろう。
「家に忘れてきたんだ」
「忘れてきた?」
「ああ、ご、ごめんな」
「ま、まあ、無くしたんじゃなきゃ別に良いけど」
「ああ、ごめん」
「ふ、ふーん。でも、そう言われてみればそうね。リントくんだわ」
「ま、まあな」
「ちょっとびっくりして、動揺中」
「そうか」
その時だ。
「お邪魔しまーす」




