表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
敗者復活の鐘が鳴る  作者: 齋藤翔
38/43


 ……。


 はたと目を開ける。


 ずいぶんと寝ていたようだ。岩場にはよだれがダラダラと垂れていた。まずい、喉がカラカラである。


「み、水、水」

「はい」


 目の前に水筒が差し出される。誰だか分からないが助かった。俺は水筒の口を開けてごくごくと飲んだ。


「はあ、生き返った」

「良かったわね」

「ああ。ところで、お前は誰だ?」

「お前呼ばわりは失礼なんじゃない?」

「すまん。でも、俺は口が悪いんだ」

「直しなさい」

「直らん」

「ふーん、別にいいけど」


 女子が俺の隣に来る。金髪であり長い髪を高く結っている。


 知った顔だった。


 と言うかルルアだった。


「う、うひょぇぇぇ!」

「何よ、変な声出して」

「ど、どうしたんだよ」


 俺は立ち上がった。


「鐘は?」


 せっかく取ってきたものだったのだ。


「地球は?」


 そこに行くことが彼女の夢だったはずだ。


「天国は?」

「ルジーさんとヘレナさんが行ったわ」

「お、お、お前は?」

「祭はまたあるわ」


 彼女も立ち上がった。さらに近くに寄る。両手で抱きしめられた。ふくよかな感触が胸にあった。


「な、な、何をっ」

「しっ」

「なっ」

「何も言わないの」


 そのまま二人で湯船に沈む。


「お、おい」

「静かに」


 俺はどうしたらいいのか分からなかった。彼女は俺を抱きしめている。俺も抱きしめて良いのだろうか? 俺だって男だ。こんな風にされたら理性がもたない。


「抱きしめて、いいのか?」

「うん」


 俺は彼女の細い肩を抱きしめる。


 自分の体がとても熱い。


 彼女は顔を俺の首にすり寄せた。


「ねえ」

「な、なんだ?」

「私がケイに連れていかれた時、ひどいこといっぱいさせられたの」

「あ、ああ」

「男の子って、エッチなことばっかり」

「ああ」

「リントくんも、私にひどいことしたい?」

「ああ」


 俺は正直になってしまった。


「していいよ」


 耳元でささやかれる。


「じゃ、じゃあ」

「じゃあ?」

「あと一時間、このままで」

「このままでいいの?」

「ああ」


 顔が熱い。


 熱い。


 この気持ちはアレだ。


 懐かしい。


 恋なのかもしれない。


「なあ」

「何?」

「お前は何で地球に行きたいんだ?」

「それは」


 ルルアは空を見上げた。


「私の家族はもう地球にしかいないから」

「地球にしかいない?」

「うん。私の祖父母が地球に生きていればいると思う。だから、会いに行きたいのよ」

「おじさんとおばさんは、死んだのか?」

「おじさんとおばさん? リントくん、私のパパとママを知ってるの?」

「ああ。ロディおじさんと、チヨミおばさんだろ?」

「なんで?」


 ルルアは驚いて体を離した。


「そ、そりゃあ、ええと」


 俺は右手で額をこすった。


「俺、お前と同じ保育園だったから」


「え、え、えええええええええええっ!?」


 ルルアは仰天し口をパクパクとさせた。


「き、気づいたか?」


「もしかして、リントくん!?」

「ああ」

「あのリントくん!?」

「だからそう言ってるだろ」

「泣き虫の?」

「悪かったな。泣き虫で」

「嘘」


 ルルアはうつむき唇をすぼめた。少しして顔を上げる。


「……私のセレスはどうしたの?」


 交換したセレスのことだろう。


「家に忘れてきたんだ」

「忘れてきた?」

「ああ、ご、ごめんな」

「ま、まあ、無くしたんじゃなきゃ別に良いけど」

「ああ、ごめん」

「ふ、ふーん。でも、そう言われてみればそうね。リントくんだわ」

「ま、まあな」

「ちょっとびっくりして、動揺中」

「そうか」


 その時だ。


「お邪魔しまーす」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ