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女の子が泣いている。
「行っちゃ嫌だ」
僕は女の子の頭を一生懸命なでていた。
「また戻ってくるから」
「行っちゃ嫌だ」
「ごめんね、ごめんね」
「嫌だあー、うえ、うええええええええん」
黄金色に光る河川敷の草むら。
彼女の髪も同じ色をしていた。
どうすれば女の子は泣き止んでくれるだろう。
僕はいっぱいになって考えた。
「約束しよう」
「約、束?」
「うん」
僕は小指を立てる。
「なにそれ?」
「お母さんから教えてもらったおまじない。小指を出してよ」
「う、うん」
二人の小指が絡み合う。僕は右手を振った。
「ゆーびきーりげーんまーん。うーそつーいたーらはーりせーんぼーん、のーます。ゆーびきった」
僕は指を離した。
「針千本?」
「うん。嘘ついたら、針を千本飲むんだ」
「そんな、死んじゃうよお」
「大丈夫、僕は約束を守るから」
「本当?」
「うん」
「じゃ、じゃあもう一回」
「いいよ」
今度は女の子が歌った。
「ゆーびきーりげーんまーん、うーそつーいたーら、うーそつーいたーら、タコ生きたまま、のーまーす。ゆーびきった」
「タコを生きたまま飲むの?」
「うん」
「僕、死んじゃうよ」
「大丈夫」
「死んじゃうよ」
「大丈夫!」
「死ぬって」
「死なないもん。死なない死なない死なないもん、うわーーん」
また泣かせてしまった。
僕は立ち上がる。
「もうお母さんが呼んでる時間だ。本当に行かなきゃ」
「う、ま、待って」
女の子は地面に置いてあったセレスを取る。
「これ、あげるから」
「ええ!? これ、君がセレスティーナ様にもらった武器じゃないか!」
「あげるから」
「だめだよ」
「あげるから」
「なんで?」
「あげるから!」
「わ、分かった!」
僕は一降りの剣を受け取る。
「じゃ、じゃあ代わりに、君は僕のをもらってよ」
僕は地面に置いてあった自分のセレス。シールドーソードを持って渡す。
「要らない。それ弱いもん」
「弱いけど、何も無いより良いじゃん」
「弱いもん弱いもん」
「そんなこと言ったって」
「ローゼンに一回も勝てなかった武器だもん」
「ひどい」
「……うそだよ?」
女の子は受け取る。
「約束」
「うん」
「きっといつか」
「いつか」
「「また会おうね」」




