③
「皆さん! 待ってください!」
舌っ足らずな声だった。
その大声にクラスメイトが顔を向ける。
彼女は魔法使いだと思った。ピンク色の軽装に下はスカートだ。
ボブカットは胸に手を当てる。
「私の名前は、アノン・メルレールと申します。私たちは協力しあうべきではないでしょうか?」
アノンは背中に背負っていた杖を取り教卓の上に置く。
「私は、回復ロッド使いです」
へえ。
なるほどな。俺はこのちびっこ女子が勇気を持って皆の前に出た理由を知った。回復系武器の所有者は需要が高い。皆大好き回復ロッドさんである。
誰かが口笛を吹いた。
アノンは続ける。
「強いギルドに入っても、私たちに勝利はありません。敗者復活戦で地球に戻れるのは、一回の大会に二人までと聞きます。二年生三年生には、ここの環境に慣れた強い人たちがいっぱいいます。だから」
「だから?」
生徒の一人が冷ややかな笑みを向けた。
「だ、だから。私たちは、一年B組で結託し、来る敗者復活戦に臨むべきだと思います」
「あんた、回復持ちらしいけど、強いのか?」
「つ、強さは、これから、これから強くなります」
「俺、ラスティネイルに誘われてるんだよね。悪いけど」
生徒がまた一人教室を出て行く。他にも。
「ごめんね」
「アノンさん、また明日」
次々と出て行き教室に残っているのは俺を含めて五人になってしまった。
アノンの目尻に涙が浮かぶ。
「う、うえ」
泣きそうになっている。
「続きを」
一人の女子が言った。あの子だ。俺がパンツを届けたところの女子である。
「へ?」
アノンが目をしばたたかせる。
「続きをお願いしてもいいかしら」
「え、あ、は、はい」
アノンはまた顔を上げる。
「私たちは、新しいギルドを結成し、現存するギルドと張り合うべきです。そしてギルドメンバーの全員が天国へ行けるシステムを確立し、協力しあうべきです」
「ふーん」
金髪の女が立ち上がる。白いロングTシャツに赤のチョッキを着ていた。下は紅色のスカートである。
「ギルドって何? 私、分からないんだけど」
「ギ、ギルドというのは、つまり、協力する者同士で作るグループのことだと思います」
「なるほどね」
「あの、すいません。お名前を聞いても良いですか?」
「私? ルルア・ルールホルン」
パンツ女はルルアという名前らしかった。俺は両目を大きく見開いてびっくりしていた。その名前に聞き覚えがあったからだ。
「貴方に協力してあげたい。でも」
「でも?」
「弱い者に協力はできないわ」
ルルアは自分の荷物の中から剣と盾を取りだした。
「片手剣の盾持ち?」
アノンが瞳をぱちくりさせる。
「そう、私の武器はシールドソード」
俺は笑いをこらえるのに必死だった。あの武器はずっと昔に俺がくれた武器のはずだ。
ルルアは教室を振り返る。
「アノンの言葉に同調する者は、武器を持ってグラウンドに来なさい。以上」
「何をするんですか?」
アノンが心配そうに眉を寄せる。
「決まってるじゃない?」
ルルアが剣の切っ先を横に向けた。
「強さを、テストしてあげるわ」




