⑳
そこで目にした光景は慄然たるものだった。
二十人ほどの男女が横一列に並び武器を構えている。その中央ではルジーとヘレナが拘束されて捕らわれていた。口にはしゃべれないように布が巻かれている。彼らの前にローゼンがいて砂浜にあぐらをかいて顎に手をつけている。
「よお、お前ら、遅かったな」
俺の背中が熱く膨らむ。
「ぐあっ! ……え?」
首だけ後ろを向くとケイスケが大剣で俺を刺していた。俺は顔面から砂浜に倒れ込む。
「さっきの見ていたよ。君に暴れられちゃ困るんだ」
ケイスケの表情が残虐な笑みをたたえていた。
「嘘!」
「騙しましたわね」
「ええ?」
三人が後ろを振り向く。
「あー! はっはっはっは!」
ケイスケは高々に笑った。
「馬鹿だねえ君たちは! まるでドブを這い回る子ネズミのようだ!」
「ケイ、よくやった」
ローゼンが口元だけにやりとした。
「この場所を教えたのは……?」
ルルアがかすれたような声で問う。
「もちろん僕さあ!」
彼は自分の顔に親指を向けた。
「僕はねえ。本当は二年生なんだよ! でも君らは、何にも気づかないんだもん!」
「に、二年生?」
ルルアの声は震えていた。
「そうさあ! でもねえ、一年生の教室に僕がまぎれていても、先生はなーんにも言わないし! 君らみたいな、馬鹿たれも! ぜーんぜん気づかないし! 騙すのなんて、楽勝だったよおー!」
「そ、そんな!」
「ちなみに、出席番号八番のブタ男は俺が殺した」
ローゼンがつぶやくように言った。ケイスケは八番のはずだった。
「インビジブル」
ナージュが素早く魔法書を出し唱えて消えた。
「おっとー! 動くなよ! 動くとこいつを殺しちゃうぞー!」
ケイスケが俺の頭を踏みつけた。大剣の切っ先を首につける。
「ケイスケくんっ」
「ケイスケくん? だーれのことを言ってるのかなあ! 僕の名前は、ケ、イ! なんだよ!」
「ケイ?」
「そうさあ! ちなみに、昨日荷物を燃やしたのは、僕なんだよお!」
「な、なんのため?」
「そりゃあ、君たちがミストダガーに加入してもらうためさあ! 荷物が無くなれば、誰かを頼らなければいけないじゃん! でも君たち、断るんだもん!」
「卑怯」
「何とでも言うがいいさあ! 僕はねえ、ミストダガーの幹部なんだよお! 偉いんだよお! 凄いんだよお!」
「ケイ、鐘を持ってこい」
「は、はいかしこまりましたあ」
ケイはルルアににじり寄る。彼女のスカートのポケットに手を突っ込んで鐘を取り出した。
「これは君のじゃないからねえ!」
「あ、あ」
ルルアは後ずさった。
ケイはローゼンの元へ歩いて行く。
「ローゼン様。約束のものでございます」
片膝をついて鐘を差し出した。ローゼンは受け取る。
「助かった」
「いえいえ、全てはローゼン様のため」
「嘘つくな。約束通りその女たちはくれてやる。乱暴でも何でも好きにしろ」
「ありがたき幸せこの上無き報償! まさに! 天! 国!」
「さて、儀式はしておくか」
ローゼンが立ち上がった。
「そこの女二人。消えた女も。ケイの言うことを聞くことだ。逆らったら、この、ルジーとヘレナとか言う三年を殺す。殺して欲しくなかったら、分かるな?」
ローゼンは哄笑した。
「お前ら、行くぞ」
「「はい」」
ミストダガーたちのメンバーが返事をした。
ローゼンが岩場の方へと歩いて行く。その後ろを部下二十人ほどが続いた。ルジーとヘレナを連れながら。
その場に残されたのは、ケイとルルアとアノン、そして地面に転がっている俺とどこかに消えたナージュだ。




