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敗者復活の鐘が鳴る  作者: 齋藤翔
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 ルルアが竜の後ろ足に肉薄する。そこで立ち止まり唱えた。


「障壁よ!」


 水色のバリアが張られた。


「皆、バリアから絶対に出ないで!」


 彼女が振り返りもせずに大声で叫ぶ。


 ナージュが左手に魔法書をのせ、右手でめくりながら唱えている。


「ブラッドカーズ、ムーヴスロー、ムーヴスロー、ムーヴスロー、……っち、効きませんわね」


 ナージュのスキルの効果やグラフィックは視認できなかった。他にも大勢の人間がスキルを唱えている。竜の頭上では雷やら爆発やら闇のなにやらでおかしなことになっている。


 他にも後方からいくつも矢やスキルが飛んで竜の肌に突き刺さる。


「ヒールスクエア! ヒールスクエア! ヒールスクエア!、ヒールスクエア!……」


 アノンが広範囲の回復スキルを連発していた。これでは一分もすれば魔力が切れるだろうに。しかし注意する余裕なんて無い。


 俺はこの学校に来て実力なんて出すつもりは無かった。その理由は出す理由が無いからだ。しかしいまここに来て出さない訳にはいかなかった。


 俺は変身ワンドを持つ。


「来たれ、遙かなる死者の怨念。変身、貴公の名は、デスナイト」


 俺の体が光りに包まれる。やがてそこから出てきたのは白銀の鎧と金色の剣、中身は空っぽであるが人間のように立つ、前線の奥地に存在するゾンビ系ボスモンスターだった。


「え? え?」


 すぐ後ろのアノンがびっくりしたのか奇声のような声を上げている。


「あほ。ルルアとナージュをヒールしてろよ」


 俺はルルアの横に並んだ。この時点で陣形を崩しているがやむを得ないだろう。


 ルルアが俺を見た。


「え?」


 両目を大きく見開いている。


「防御しててくれ」


 俺の声は低くくぐもっていた。とてもじゃないが人間の出す声では無い。


 そんなことはどうでもいいだろう。


 俺は竜の後ろ足に斬りかかった。瞬時に五発たたき込む。傷はついたが切断には至らない。しかし竜は痛みにかなぎり声を上げた。


 俺は強化魔法を唱える。


「ジェイド」


 体に金色に光の粒が舞う。


「ラック」


 頭の上に星が瞬いて消える。


「ストレングス」


 腕が一回り膨らんだ。


 剣を頭上に構えて一気に振り下ろす。


「パワーレイド」


 雷が落ちたような音がした。竜の後ろ足が一本切断されて巨体がこちらに向かって倒れてくる。


「キャー!」


 ルルアが悲鳴を上げた。


 キャーじゃないだろ。俺は心の中で冷静にツッコんだ。剣を捨てて他三人を抱える。後ろに跳んだ。


「ゴワー!」


 竜が痛みに吠えている。


「今だ、かかれー!」


 ラスティネイルの指揮官がうなりを上げていた。


 俺は両腕から三人を地面に下ろすと両腕を組んで竜を眺めた。


 大勢が一斉に攻撃を繰り出している。生々しいが、血しぶきを超えて肉しぶきが飛んでいた。


 まるで傷ついたライオンにたかるカラスの群れである。


 片足を失った竜はじたばたともがき炎のブレスを吐く。しかしそのブレスまでもが妨害スキルによって無効化されていた。


 俺はなるべく体力を温存したかった。この変身は、しているだけで体力を消費すする。強いモンスターに変身するほどに体力の消費は激しい。


「変身、(かい)


 俺の体が光り、鱗がはげるように舞い散って元の人間の姿に戻った。


「え? 貴方、リントくん?」


 ルルアがきょとんとしている。


「ジャガイモだよ」


 俺はぶっきらぼうに言った。


「リントさまあー♡」


 語尾にハートマークをつけてナージュが抱きついてきた。青い髪が俺の顔にかかる。


「素敵ですわあ」


「おい!」


 俺は両手で彼女をひきはがす。


「リントちゃん、凄い、凄いよ」


 アノンが感激して目を輝かせていた。


「まだ終わってないぞ」


 赤い竜をよく観察すると首に首輪だろうかリングがついていた。その下にちょこんと小さな金の鐘がついている。あれが地球に行く権利を持つ鐘なのだろう。


 首の周りは大勢の人間でごったがえしていた。気づけば人間が増えている。グラウンドの外からは今から戦闘に参加し始めるギルドもいた。


 竜を倒すのが本命ではない。


 要は鐘が手に入れば良いのである。


 竜を倒すことによってドロップするアークもある。それを欲しがる人間もいるかもしれないが。


「どうするんだ?」

「え?」


 ルルアはまだぼーっとしている。


「これからどうするんだ?」


 ちょっと口調がきつくなってしまった。


「え、あ、ああ、そうね」


 ルルアはそこでようやくしゃんとする。そして竜を見た。人間たちが怒濤の勢いで攻撃している。首輪に手を伸ばしている。あれに参加したら人間の勢いに圧迫されて死にかねない。


「ど、どうしよう」


 迷っているようだ。


 俺もどうすれば良いか分からなかった。


 ふと人間の群れをかき分けて走ってくる者があった。


 大剣を右手に持っている。あれはケイスケだ。


「ケイスケくん!」


 ルルアが手を振った。


「皆、こっちだ」


 ケイスケは俺たちの方では無く校舎の方へと走っていく


「え、え?」


 ルルアがまた困惑していた。


「なんだあいつ?」

「まさか」


 ナージュが右手を口元に当てた。


「鐘を取ったのかな?」


 アノンがつぶやく。


「嘘!?」


 ルルアがケイスケを追いかけて走り出す。


 俺と他二人もその背中に続いた。


 後ろではまだ怒号が響く。


「鐘はどうした! 鐘は!」


 さっきの指揮官だ。


「ありません!」

「無いです!」

「こっちも!」

「誰だ取った奴は! 名乗りを上げろ!」


 騒ぎはまだまだ続きそうだった。


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