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俺たち五人は一カ所に固まって他の皆の様子を眺めていた。
地図をもらったクラスメイトたちが次々へと教室を出て行く。歩む足に迷いのある人はいなかった。
「皆についていこう」
ケイスケが小声で言った。
「多分、加入したギルドの先輩たちと待ち合わせしてるんじゃないかな?」
ルルアが反応した。
「そうね。鐘を探すにしても、私たちは何も情報が無いわ。でも、皆に気づかれないようについていけば、何かヒントがあるかもしれない」
「大丈夫かな、気づかれないかな」
アノンが心配そうにロッドを握る。
「そーっとついて行くのよ。そーっと」
「やめておいた方がいいな」
俺は首を振った。
「何で?」
ルルアが眉を寄せる。
「お前がいま言ったじゃねえか。俺たちは何も情報が無い。だから、今回の祭だっけ? これは見送った方がいいな」
「どうして?」
「だって、またすぐあるんだろ? 祭。ルジー先輩たちの話だと次は梅雨だったか? 今回は怪しい動きは謹んで、ぼーっと過ごすべきだ。ルジー先輩たちのところに帰って、皆でトランプでもやろう。俺、持ってきてあるから」
ナージュが俺の肩に手を置いた。
「リントさん。私たちの荷物は燃えてしまいましたわ。トランプも」
「いや、トランプだけは死守した。いつでもできるようにポケットに入れてあるんだ。ほら」
俺はトランプケースを取り出した。
「素晴らしいですわ」
ナージュは両手のひらを合わせて微笑む。
「ナイスだろ」
俺はニヒルな笑みを浮かべた。
ケイスケが顔を小刻みに振った。
「駄目だこの二人、早く何とかしないと」
「そうね。アノン任せたわ」
ルルアがアノンの肩に手を置く。
「え? え?」
アノンがルルアを見、それからケイスケを見る。
「どうすればいいの?」
「二人の説得は任せたわよ」
「頼むよ」
「わ、私にできるかな、えへへ」
アノンが照れたように笑い右手で頭をさすった。
俺は顎に手を当てた。
「神経衰弱が良いかな、それと七並べがいいかな」
ナージュが人差し指を立てる。
「私的には、オールドメイドが良いと思います」
「何だそれ?」
「日本語で言うところの、ばば抜きですわ」
「おう、ばば抜きか。いいな!」
「あの、すいません二人とも」
「なんだ? アノン、お前はどんなゲームが良いんだ?」
「早くしないと」
「早くしないと? そんなゲームあったか?」
「スピードのことですわ。リントさん」
「あ、あれかあ。数字の上か下のカードを出して行く奴。でもあれって、二人でやるげゲームじゃなかったか?」
「そうですわね。五人ではできませんわ」
俺はアノンの肩に手を置いた。
「アノン、俺たちは五人いるんだぞ? ちゃんと皆で出来るゲームをしよう」
「そうですわ」
アノンはたたたっとルルアの背中に隠れた。
「ごめん、ルルアちゃん、無理だったよ」
「アノン、あきらめないで」
「次ルルアちゃん行ってよ。私には無理だよお」
「仕方無いわね」
俺は頬に手を当てた。
「皆が知ってたら、大富豪もいいな。俺が子供の頃、流行ってたんだぜ」
「キャリアポーカーですわね」
「ああそれ英語の名前な?」
「私もやりましたわ。というか、そこにリントさんもいましたけど」
「ん? 覚えてないな」
「ね、ねえ、貴方たち」
「あ、ルルアじゃねーか。お前、大富豪を知ってるか?」
「あのさ、戦争なのよ?」
「戦争? ああ、戦争ね。あの、カードを見ずに一枚ずつオデコにつけあって、勝負するかパスするかっていう」
「戦争も良いですわあ。きっと、盛り上がること間違い無しですわあ」
「まあ時間はいっぱいあるし、最初は戦争にするか」
「分かりましたわ」
「おうルルア。戦争しようぜ」
俺はルルアの背中を軽くはたいた。
ルルアはうなだれるようにアノンに抱きついた。
「ごめん、アノン、私、勝てなかった」
「ルルアちゃん、ごめんね。私も、頑張ったんだけど、力が足りなかった」
「どうすればいいの?」
「もう、降伏するしか」
俺は抱き合っている二人を見つけて顔を傾けた。
「どうしたんだお前ら?」
ナージュもきょとんとする。
「何かありましたの?」
俺とナージュの頭にケイスケがげんこつを落とした。
「痛っ」
「痛いですわ」
「君たち、なめてると本当に死ぬよ」
ドスのきいた声だった。
「これは本当に戦争なんだ」
その時、遠くから悲鳴が聞こえた。




