⑪
「これぞまさにキャンプファイヤーだな」
俺はぼそっとつぶやいた。
アノンは驚いて水の入った容器を落っことした。
ルルアが水の容器を俺に渡して走った。火が上がっているキャンプの周りを二十人ほほどの男女が取り囲んでいた。
ローゼンがいた。
ケイスケとローゼンが武器を持って戦っている。ローゼンの武器は魔法書だった。
「何をしているの!?」
ルルアが割って入る。
「ルルアさん、ごめん。こいつらに火をつけられてしまった。でも今、追い払うから」
ルルアが敵のボスをにらみつける。
「ローゼンさん!?」
「ルルアとか言う女。俺たちと組む気は固まったか?」
「あんたなんかと、絶対組まない」
「ならばつぶす!」
ローゼンが拳を握りしめた。
「味方でない強さは悪と知れ」
彼が左手を上げた。
「全員かかれ!」
それまでキャンプを円にして囲んでいたミストダガーのメンバーたちが一斉に武器を構えた。ルルアに向けて殺到する。
俺は疑問だらけだった。
ローゼンたちはどうしてテントに火をつけたのだろう。仲間に引き込むのならばまず話し合いをするのが普通である。ローゼンとケイスケが話しあった末に交渉が決裂したのだろうか?
それでも俺たちを待たずに攻撃を開始するとは。
ローゼンが短気だったとしても何かおかしい。
「メリースリープゴーランド」
魔法書を広げたナージュがルルアの背後に踊り出た。広範囲の催眠スキルを展開する。スキルを食らった大勢の敵が睡魔に意識を刈り取られて地面に倒れる。
「くそったれ」
ローゼンはすぐに腰から薬草のようなものを取り出してかじった。魔法書持ちのくせに状態異常を回復するスキルが無いようだ。
「ナージュ、ありがとう」
「ルルアさん、引きますわよ」
「何言ってるの。倒さないと」
「見なさいな」
倒れた敵たちが目を覚まし起き上がり始めている。さすが先輩たちと言ったところ。魔法に対する耐性があった。
「くっ」
「行きますわよ。ケイスケさんも」
ナージュが走り出す。
「仕方無いわね」
「分かった」
三人が逃げてくる。俺とアノンも振り返って走った。容器はその場に捨てるしかなかった。走るのに邪魔だ。
「追え!」
ローゼンが吠えた。
ミストダガーのメンバーが追いかけてくる。
「どこへ行けば?」
ルルアが必死に叫ぶ。
「さっきの川だ」
俺が言った。川を利用すれば足跡を消せる。
徒歩で十五分ほどの距離を走り、水を汲んだ場所にたどり着く。
「どうするの?」
ルルアが一人一人に視線を向ける。
「君たち」
ふと優しげな男性の声がした。
「「誰?」」
全員がその声を主に顔を向けた。
「僕は悪い者では無い。追われているね?」
「はい。助けてください」
ルルアが懇願するように言った
「いいとも。こっちへ」
俺たちは顔を合わせて頷いた。今は躊躇する時間もおしい。
男性の影についていく。上流へ上流へと山を登った。やがて岩場が見えてくる。川はその岩場の下を流れているようだった。
「皆さん、気をつけて。私のやるようについてくるのです」
男性は岩場の下へと進入していった。暗くてよく見えないが、ツルが垂れている。それを両手でたぐりながら行くと足場があった。入り口こそ狭いものの中は広かった。
「ここまでくれば大丈夫」
男性は俺たち五人が無事に足場にたどり着いたのを確認するとほっと息をついた。
「ついてきてください」
「貴方は?」
ルルアが尋ねた。
「私ですか?」
彼はいたずらっぽく笑った。
「負け犬の三年生です」




