プロローグ
初投稿です。楽しんでいただければ幸いです。宜しくお願いします。
俺は目を覚ました。
「…ここは…?」
そこは何も無い只の野原だった。
遠くにはいくつも連なる山々が見えている。
意外と近くに街のような建物が見えている。
「俺は…ここに飛ばされたのか?」
俺は立ち上がるとその街を目指して歩き出した。
街に入ると、まるで映画で見るような中世の街並みの景色が続いていた。
街の人々は俺を見て一瞥をくれるが、特に気にする様子はない。
「きゃあー!」
路地裏で叫び声がした。
見ると、小柄な女の子が屈強な男二人に羽交い締めにされている。
「ゴラァ!暴れるなって!」
「いやぁ!離して‼︎」
「お前が暴れっから抑えるしかねえんだろうが!いいか!さっさとカネを払えってんだよ!さもなきゃお前、奴隷市に売られるんだぞ⁉︎」
奴隷とは穏やかでない。
俺は進み出た。
「あんたら、何やってんだ?」
「ああ?なんだテメェ…?」
大柄な男二人が振り向いてやってきた。
「テメェにゃ関係ねえ話だ。向こう行きな」
「それともあんちゃんがこの子の借金肩代わりするってえのかい?」
もう一人が女の子の喉元にナイフを当てた。
俺の中で何かが弾けた音がした。
ドンッ!
突然女の子を掴んでいた男が後ろへ吹き飛んだ。
男はそのまま気を失った。
「⁉︎テメェ!何しやがった⁉︎」
「…俺にも分からん。だが、俺に手を出すな。死にたくなかったらな」
俺は震えて静かに言った。声を出すと何かが溢れ出しそうだ。
「たわ言言ってんじゃねえ!死ね!」
男がナイフを突き出した。
次の瞬間、全てがスローモーションになった。
男がゆっくりと差し出すようにナイフを出してくる。
それを優しく摘んで向きを変えてやる。
ナイフは脇へ逸れ、男の体もそれにつれて曲がっていく。
空いていた自分の左手が熱くなるのを感じた。
左手が男の脇腹に触れた瞬間、弾けるような炎が見えた。
「グオッバァ!」
気づいた時は動きは元に戻っており、男は脇腹を焦がしながら吹っ飛ぶところだった。
…やがて静かになった。
「大丈夫かい?」
俺は少女に手を差し出した。
「あ、貴方は?今のは?魔法?」
少女は混乱していくつも質問してきた。
「俺にも分からないよ。何故か出来ちゃったんだ、無意識に。この世界に来たばっかりだってのに…」
俺は頭を掻いた。
「この世界…?まさか、貴方はあの予言をの…‼︎」
少女の目が途端に輝き出した。
「予言…?」
「わたくしはこの街の預言者、マクティア・ジノンの娘、クレン・ジノンと申します。貴方の、貴方様のお名前を…」
「俺は…」
名乗ろうとしたその瞬間、俺は気配を感じ、女の子を掴んで身を翻した。
ザク!
何かぎ土に刺さる音がした。
女の子を背に隠し、改めて見るとそこには細いナイフが刺さっていた。
男の仲間⁉︎いや、違う。
「よく避けたわね」
路地の「上」から声がした。
「その調子だと、能力も衰えてないようだわ」
女が、そこに浮いていた。
黒い装束に身を包み、黒髪を僅かに揺らせて俺を見つめている。
「誰だ貴様」
女は少し目を開いたが、すぐに素の微笑に戻った。
「あらあら…忘れちゃったなんて、ひどい人ね…。ま、あの転移じゃそうなっても仕方ない…か」
女は独り言のように呟くと、俺に向き直った。
「覚えといてね。私の名前は、『グレイ』よ」
女が名乗った瞬間、周囲が闇に包まれた。
「‼︎」
横にいた女の子も消えた。周りにも何も見えない。完全な、闇。
「俺は…お、れ、は…」
やがて俺の意識も闇に包まれた。