9 巨乳美女と楽しくお茶する
「貴様ら! そこで何をしている!」
そう凛とした声を上げたのは鮮やかで美しい赤色の髪を風に靡かせる、一人の女性だった。
女性はパッと見た感じ普通の町人の様な恰好をしているが、他の町人に比べてやや小奇麗にしてある。それに、その優れた容貌は誰しも一度は振り向いてしまう程。そして、それ以上に際立つのが、服の胸部を大きく盛り上げるはち切れんばかりの双丘だ。
俺は思わず「おお」と声を上げてしまった。彼女は、俺が探していたまさに理想通りの人だったからだ。
「なんだぁ? 俺はこいつと話をしてるだけだが?」
「それとも、ねえちゃんが俺たちの相手してくれんのか?」
「ゲハハハハ!」
それを見たチンピラはハゲ、ノッポ、デブの順に声を上げる。
――ん?
あれ?
この状況。
普通逆じゃね?
そう思ってる間にも状況は進む。
「どう見ても脅してるようにしか見えなかったのだがな」
「そいつは心外なだなぁ」
「でも、俺たちの邪魔しようってんならタダじゃ置かねぇぞ」
「ゲハハハハ!」
デブはいい加減なんかしゃべれよ。
「まぁいい。私はチンピラなんぞと遊ぶ趣味はない。くたばれ!」
女性はそう声を上げると、瞬時に一番近くにいたハゲに肉薄、未だ反応出来ていないハゲに凄まじい右フックが炸裂した。
その一撃でハゲはノックアウト。
痛そうだなと思って女性の手を見ると、ベルトのようなものでしっかりと手を保護していた。
「おおー」
俺は歓声を上げた。
物凄い一撃だったが、女性は今隙だらけである。しかし、ノッポもデブも呆気にとられていて動かない。
「てめぇよくも!」
「ゲ!?」
遅まきながら気が付いたノッポとデブだったが、既に女性は渾身の一撃から体勢を立て直し、ノッポに迫っている。そして、飛び上がりからのアッパーを顎を砕くかのような勢いで叩き込んだ。
その一撃でノッポも敢え無くケーオー。盛大に背中を打ち付けて地面に沈んだ。
「すげぇ」
「あの人、強いのねぇ」
俺だけでなく、彩花ちゃんも思わずといった様子でつぶやいた。
やはり女性には隙が大きく、一撃狙いのこの戦法は悪手のようにも思える。
「よくも!」
しかし、ようやく喋ったデブだったが、喋るために行動のソースを割いたかの様に動いていない。女性はそれを不審に思いつつも直ぐに体勢を立て直している。この様子から察するに、あの隙は攻撃を誘い込むための物でもあったのだろう。
そこへ、ついにデブが攻撃を仕掛ける。その巨体を生かしたショルダータックルの構えからの体当たりだ。
流石に荷が重いのか、女性はデブの軌道を読んで避ける。――が、デブはそれを読んでいたかのように突然女性に掴み掛った。
野郎てめぇどさくさに紛れて女の子の体触ってんじゃねぇよ!
「うえぇ、見てるだけで鳥肌が立つわ」
彩花ちゃんもドン引きである。
しかし、組み付かれた本人の女性は余裕そうにニヤッと笑った。
「『攻勢反射』」
そう呟いた刹那、辺りに旋風が巻き起こる。そして、その中心にいる女性から光が溢れたかと思うと、デブの体は弾き飛ばされ、少し遅れて辺りに衝撃波が伝わってきた。
おっぱいがたゆんたゆんと揺れ、スカートが適度にひらひらして、とても素晴らしい眺めでしたね。
「ゲギャ!」
悲鳴のようなものを上げて、デブは潰れた様に倒れた。
「ブラボー!」
「すごいわね……」
俺たちは各々歓声を上げた。多分、着目点は別だが。
「青年よ、大事無いか?」
女性は鮮やかな赤髪を翻しながら、にこやかに笑ってこちらに声を掛けてきた。
「はい、ありがとうございます!」
素直にお礼を言う。近くで見ると、おっぱいの破壊力がすごい。
表情に出していないが、彩花ちゃんが何か言いたげな雰囲気を醸し出しているように感じる。
「それは良かった」
やはりにこやかにそう言う。
「そうだ、お礼も兼ねて、この後一緒にお茶でもどうですか?」
事実上のナンパの練習はここで生きた。さらっとこの言葉が俺の口から出てきた。
「そうだな……。どうせ時間はある。折角だからそうさせて貰おう」
「では行きましょう!」
あっさりとオーケーしてくれてラッキーだ。
彩花ちゃんに、近くの喫茶店的な場所に案内するように小声で頼む。彩花ちゃんに俺を疑わせないようナビを頼む必要があるのに、助けてくれた女性に気づかれないようにしなくてはいけないので大変だった。
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チンピラを女性が呼んだ衛兵に任せた後、歩くこと数分。彩花ちゃんがマフラーを引っ張る向きに歩いていくと、一軒の店の前に到着して、
「ここは結構高い店じゃないか。そんな大金を持っているなら、もっと用心して歩くべきだろう」
なんて店前で怒られたりしたが、今はテーブル越しに相対している。
さて、まずはお礼からだろうか?
「この度は危ないところを助けていただき、本当にありがとうございます」
「いや、大した事ではない。普段から荒事には慣れているだけだ」
やはり、女騎士か何かだろうか? 佇まいと動作に品がある。
「お礼ですから、好きなものを頼んでください。お代は俺が持ちますから」
「そうか? 本当に遠慮しないぞ?」
そう言われたって、ケチケチ出来るわけ無いじゃないか。
「ええ、もちろんです」
胸を張ってそう言う。
すると、女性は手を上げて店員を呼び、
「アールフレイにルーマイタイソンとセルランダレントを一つずつ頼む」
謎めいた呪文のように注文した。
「ねぇ、彩花ちゃん。あれ本当に注文してるの?」
「……この店のレシピにはあるわよ」
こっそり聞いてみたが有るらしい。
注文が終わったようなので、俺もお茶を頼んでおいた。「お茶、おススメで」で通じてよかった。
「少々腹が減っていてな」
女性は言い訳するように苦笑いして俺に呟いた。そのちょっとした動作が可愛らしかった。
「時に青年よ、名は何というのだ?」
「すみません、申し遅れていました」
ちなみに俺の本名は仲山太一だ。
「俺はタイチって言います。職人だったり、冒険者だったりしています」
「そうか、私はエルだ。私もかつては冒険者だったよ」
あれだけ強ければ冒険者でもおかしくはないだろう。「だった」というのが気になるが、ずかずかと聞いてしまって地雷だと困る。ここは聞かない方向で行くか。
「そうなんですか。お強いですもんね。エルさん」
「うむ、まぁそうだな……」
名前を読んだら、なんか複雑そうな顔をされた。「強い」に反応した可能性もあるけど、タイミング的に明らかに名前を読んだ時だった。
名前は呼ばないほうがいいか。
「俺、冒険者の方は先日なったばかりなんです。よかったら何か話をしてくれませんか?」
「ん、ああいいぞ。そうだな、どんな話がいいだろうか」
「だったら、一番大きな仕事とかでどうですか?」
「そうか、そうだな。あれは――」
俺は的確に相槌を打つようにして、エルが気持ちよく話ができるように徹する。女性は誰かと話したい生き物だって、何かで読んだからな。
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話を聞いた結果としてよく分かったことがある。エルは凛とした雰囲気ながら、とても可愛らしい女の子だった。
是非ともハーレムの一人にしたいものだ。
「今日は楽しかったよ」
「いえいえ、こちらこそ」
「それじゃあ、またどこかで」
「はい。またどこかで」
はっはっは。エルの事は既に『マッピング』の機能によってマーキング済みだ。エルは定型句として「またどこかで」と言ったようだが、俺は偶然を装って会うことができる。
この調子で新たなヒロインをゲットするのだ。はっはっは。
ちなみに、エルが頼んだ料理は、アールフレイが紅茶、セルランダラントが四角いピザのような食べ物、ルーマイタイソンがケーキのようなアイスのような甘そうな食べ物だった。
「ねぇ、あの人を狙ってるみたいだから言うけど、多分やめておいた方がいいわよ」
早速彩花ちゃんが嫉妬してくれた。これはとても良い傾向である。
「大丈夫だって、俺は彩花ちゃんが一番だから」
「はぁ!? そんな事を言ってるんじゃないわよ。もういいわ、何があっても知らないわよ」
それはこっちの言葉だ。さらに嫉妬に狂うことになっても、俺は知らんからな。はっはっは。
主人公の名前が今更出てきました(一時期あらすじに書いてた)。




