表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/29

7 ツンデレ娘とイチャイチャする


 夕飯にフランクフルトと魚の干物的な奴と串焼き肉三本、例の黄色い果物を買って宿屋に戻ってきた。


彩花さいかちゃん。『毛玉ナビゲーター』のスキルをアップデートしたから、変身できるようになったよ」

「ん? どういうことよ」

「まぁ試しに“変身”って言ってみて」

「えー? 私のこと騙そうとしてない?」

「してないしてない」


 毛玉である彩花ちゃんは少し恥ずかしがっているような雰囲気だ。


「心の中で念じるだけでも多分いいからさ」


 とっさに『エディット』を使ってスキルを修正しただけである。


 ふと、毛玉が光りだした。そして少しだけ大きくなるとともにその形を変えていく。

 そうして出来上がったのは、そう、あれだ。


「にゃぁ? にゃ!? にゃにゃああ!」


 猫だ。しかも子猫サイズである。


「おーよしよし、かわいい猫ちゃんだ。って、ちょっ、引っ掻こうとしないで。もう一回“変身”って念じれば元に戻るから」


 今度は猫が光って元の毛玉に戻っていく。


「なんで猫なのよ! しかもしゃべれないし!」

「可愛かったよ」


 彩花ちゃんに笑顔とサムズアップを送る。

 すると、こめかみに前回の毛玉体当たりの比じゃない衝撃が走った。


「痛ってぇええ! おぉう、説明してないのにアームまで使いこなしてるねぇ」


 毛玉の両側面から細いセラミックなアームが伸びている。その肘と手首、それから三本の指にそれぞれ球体関節がついていて自由に動かせるようになっている。

 もはやただの毛玉ではない。


「殴りたいと思ったら出てきたわ」

「アームは無理に使って壊れないように、激しく動かすと疲れるようにしておいたよ」

「へぇ、ホントだ。なんだか懐かしい感覚ね」


 絶対に壊れないようにもできるけど、そうしても良い事はないからね。主に俺の防御面で。


「ついでに言うと、子猫モードもしばらく使ってると段々疲れるように設定しておいたよ」

「ねぇ、薄々感づいてはいたけど、あんたもしかして『毛玉ナビゲーター』ってスキル、自由にいじれたりするんじゃない?」

「えー? どうなんだろう。分かんない――痛ったああ!」


 さっきとは反対のこめかみに衝撃が走る。


「別にとぼけなくてもいいわよ。ちょっとだけ要望を聞いてくれればいいんだから」

「し、知らないなぁ」

「そう。なら目玉に――」

「――黙っててすみませんでした」


 人生初の土下座によって、俺の目玉は守られたのであった。


 ----数分後----


 目の前には手のひらサイズの少女が、背中にある蝶のような羽をはばたかせて室内を飛び回っていた。


「たーのしー!」


 彩花ちゃんがフレンズ化してしまった。(違う)

 曰く「人間の姿に戻さなくてもいいから、せめて妖精みたいな人型になれるようにしなさい。もちろん無駄に疲れる機能は無しで」だそうだ。

 思考レベルが下がる呪いは付与していないが、そのくらい人型が嬉しいのだろう。


 ちなみに、容姿は以前ホログラムで見た彩花ちゃんがモデルだ。若干俺の理想形に近づけたが、まぁ微々たる差だ。ついでに、体を激しく動かしたときは疲れるようにすることだけは了承された。


「ふぅー。いい汗かいたわ」


 彩花ちゃんが楽しそうで何よりです。

 擬人化しないのも俺みたいな一定層にしっかりと需要があるのだがなぁ。何でもかんでも女の子にすりゃあいいってもんじゃない。でも、彩花ちゃんは元人間だからセーフ。


「それじゃあご飯にしよっか」

「そうだね」


 彩花ちゃんの笑顔が眩しすぎる件について。


 ------------


 食事は相変わらずまあまあな出来だったが、彩花ちゃんが久しぶりの食料に大喜びだったので良しとしよう。

 手のひらサイズのくせに、自分より大きな串焼き肉を平らげてしまうんだから不思議だ。


 一番不思議なのが、そんなスキルを作ったのにちょっと頭が疲れるだけで、他に何のデメリットもない事だろうけど。

 やりすぎたら神様から文句言われるかもしれないので、すっかり忘れていた信仰心の証明として、お祈りをしておこう。


 皺合わせ(しあわせ)のポーズで、なーむー。


 なんか違うけどいいか。大事なのは気持ちだ。


「あんた、見かけによらず食事の挨拶とかするのね」

「あ、そっちは忘れてた」

「え?」

「ごちそうさまでした」


 アイサツは大事。古事記にもそう書いてある。


「それじゃあ俺はまだやることがあるから、彩花ちゃんは好きにしてていいよ。――ん? 言わなくても結構好きにしてる気が?」

「ふーん。それならそうするわ。と言っても、今日は結構疲れたし早めに寝るとする……お風呂に入りたいわね」

「おおー! それならここに用意するから入りな――へぶしっ」


 彩花ちゃんの靴のヒールが俺の額を撫でた。サイズ的に爪楊枝で擦った様な感じである。

 ――つまり、めっちゃ痛い。


「鼻の下伸ばして何言ってんのよ。でも確かに私じゃここ以外では入れるようなところも無いわね」


 彩花ちゃんは腕を組んで考えている。


「痛いなぁもう、血出てたりしないかな?」


 俺は俺で、彩花ちゃんが変身した姿を見るために出した手鏡で自分の額を見ている。


「そうだ、設置型のシャワールームとかあるんじゃないかしら? ――いつまで自分の額を見てるのよ。ちゃんと手加減したから大丈夫に決まってるじゃない」

「俺の防御力は一般人並みなの。ギャグマンガみたいなノリで攻撃されてたら、簡単に死んじゃうからね」

「そ、それは悪かったわね。もうちょっと手加減できるように努力するわよ」


 手を出さない方向に努力はしてくれないようだ。


「で、シャワールームだっけ? 多分あるんじゃない? あ、出てきた――」


 ――スパァアアン!


「痛っ!」


 ハリセンのようなもので叩かれたので痛くはない。よく見たら、昼間冒険者ギルドでもらった冊子である。


「中が丸見えじゃないの! バカなの?」

「いや、わざとじゃないってばよ」

「そんな下心丸見えな顔で言っても説得力無いわよ」


 馬鹿な、俺はこんなにも真面目な顔をしているのに。


「分かったよ。別なの出しますよ」

「あ、ついでにノイズキャンセリング機能付きのヘッドホンと、アイマスク、それとガムテープと手錠もね」

「それ、出せって言われて出すと思うの?」

「ほーう? それじゃあ代わりに目玉と鼓膜をつぶしてもいいってわけね?」

「あーもう分ったよ。出すよ。出せばいいんでしょ」


 彩花ちゃん。なかなかバイオレンスな女である。


 ----数分後----


 俺はヘッドホンとアイマスクを装備して、手と足に手錠をかけられ、椅子にガムテープで縛りつけられている。

 正直、真っ暗で何も聞こえなくて怖いが、彩花ちゃんは知らない。俺がチートスキル作り放題だということを。


 何も聞こえないが、そろそろシャワールームに入ったであろう時間を見計らって、俺はつぶやく。


「スキル生成『第三の目』」


 『第三の目』はひとまず、自分の視界の外の任意の場所を見ることができるようになるだけの効果にした。そのうち邪眼の効果とか付けたらかっこいいと思う。


 『第三の目』を開くと、さっきまで自分がいた宿の部屋が見渡せる。もちろん自分も見ることができるが、死刑囚もかくやと言わんばかりだ。

 ここまでしなくても、体を動かそうなんてしないのにねぇ。


 早速、視点をシャワールームの中へと移す。

 そこにはシャワールームの中で楽しそうに飛び回る、美しき裸体をさらした彩花ちゃんの姿があった。


 彩花ちゃんは激しく飛び回るので、その小さな胸のふくらみの先や、下にある局部は湯気の中でほんの少し見え隠れするのみだ。おかげで、想像力が掻き立てられて余計にエロい。

 チラリズムを分かっているなんて、さすが彩花ちゃんだ。


 感服すること数秒。俺はとても大事なことに気が付いた。


 ――手が拘束されてるからナニも出来ない。


「こんなの生殺しだぁ! 酷い!」


 叫んだところで拘束は取れないし、取ってしまったら後が怖い。

 俺は泣く泣く『第三の目』で見た光景を目に焼き付けるのであった。


 ------------


 その後は、アイマスクを取ったら俺が号泣していて彩花ちゃんが呆れたりなんて事もあった。

 彩花ちゃんが先に寝るというので、昨日と同じソファーを出してげると、毛玉に戻って寝てしまった。


 寝顔を見るという野望をあっさりと打ち砕かれた俺は、おとなしくシャワーを浴び、一人寂しくこけし作りに励んだ。ちなみに、材料は『家具生成』で出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ