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3 初めての戦闘は舐めプ


 ――ドッゴォオオオン!


「アラームデカすぎたかなぁ?」

「いや、明らかにアラームの音じゃないでしょうに」


 異世界に来て初日の夜明け前の事だった。草原に小屋を出して寝ていたはずの俺と毛玉と化した彩花さいかちゃんは大きな音で目を覚ました。


 彩花ちゃんは一足先に窓へ近づき、外を見た。

 俺のスキルで『毛玉ナビゲーター』に転生した彩花ちゃんは睡眠中(セーフモード中)でも緊急事態には自動で覚醒できるようになっている。


「なんか、昼間に使った真っ白の小屋が爆発四散して無くなってるんだけど」

「えー? あ、ホントだビックリ」


 見ると、昨日会った小屋は残骸となって所々火が付いている。


「何があったんだろうね?」

「そんな暢気な。もしかして、魔物とかが出たんじゃ……?」

「そんなの現実にいるわけないでしょ――痛っ」


 毛玉が眉間に体当たりしてきた。もふもふしてて痛くは無いけど、つい言っちゃう時ってあるよね。


「あんたが異世界に呼び出したんじゃない。魔物くらいいてもおかしくないでしょうが!」

「おぉぅ。そうだたーね。ワタシわすれてましーた」

「片言やめーや」


 とりあえず索敵しようかと『マッピング』スキルを発動しようとした。


「彩花ちゃん。『毛玉ナビゲーター』の能力の中に『マッピング』があるから、それを使えば索敵もできるはずだよ」

「え、そんなスキルが? えぇと、『マッピング』! あ、出た!」


 子供みたいにはしゃいでる。可愛い毛玉だなぁ。


「マップには下級悪魔インプって一つだけ書いてあるよ。まぁインプならゲームだと雑魚だし問題ないわね。こっちの小屋が壊されたら困るし、ちゃっちゃとやっつけちゃってよ」

「……ん? 俺に言ってるの?」

「あんた以外誰がいるのよ」


 しまったなぁ。攻撃用のスキルが無い。体も一般人だしなぁ。


「話し合いで解決できないかなぁ」

「何その日和った平和主義主人公みたいな発言。そういうのいらないから」


 どっちかというと、スキル生成を見られたくないだけなのだが。何でもできると思われたら、驚いてくれなくなっちゃうもん。


「ちょっと、早くしてよ。インプがこっちに向けてメラゾ○マみたいなのを狙い付けてるんだけど!?」

「あー、あれはヤバいな。マジヤバい」


 とりあえず、急いで家から出て『携帯できる家』を仕舞う。

 すると、家が突然消えたからか、空に浮かぶインプは驚いたように炎の塊を消してこちらを見た。

 そして、その醜悪な顔を更に醜くゆがませる。


「どう見ても、人間見つけたぞ殺してやる、って顔に書いてあるんだけど」

「そうだね。怖いね」

「マイペースすぎるでしょうが!」


 これでも考えているのだ、今自分に出来ることを。もちろんスキル生成以外で。

 っと、インプが爪を月夜に輝かせてこちらに突っ込んできた。


「ひぃっ!」


 彩花ちゃんがなさけない悲鳴を上げているのを余所に、インプの目の前に『家具生成』でタンスを呼び出す。


「ギシャァア!」


 インプは叫び声をあげて突然現れたタンスを八つ裂きにした。

 あわよくばタンスの角に小指でもぶつけてくれないかなと思ったが無理だった。


 今度は冷蔵庫を呼び出す。


「嘘でしょ!?」


 彩花ちゃんは再び叫んだ。

 金属の塊である冷蔵庫まで引き裂かれたとあっては、もはや雑魚とは言えないだろう。

 これも使いたくなかったが仕方あるまい。


「『乗り物生成』ガンタ○ク!!」

「えぇ!?」


 五メートルほどのミニサイズガンタ○ク呼び出すと同時に両肩のキャノンと両腕のミサイルを自動で狙いを付けさせてぶっ放す。

 最初はインプも何だか分からなかったようだが、本能で危険を察知したのか、器用に飛んで避けられている。

 遠くで幾つもの外れたミサイルの爆音が響いている。


「何あれ、速すぎない?」

「あれだけ撃ってるのに一発も当たらないなんて……」


 俺も彩花ちゃんも驚くしかない。下級でもこれほどかぁ。

 それでも牽制にはなっているようで、インプも迂闊にこちらに近づこうとはしない。


「ショットガンならもっと良かったんだろうな」

「一度死んだとは言っても、こんなすぐにまた死ぬなんて嫌よ」

「俺も嫌だけど、彩花ちゃんは俺が死なない限りは復活できるよ」

「じゃあ今すぐ逃げなさいよ、囮ぐらいやってあげるから!」


 彩花ちゃんの大変男らしい提案は有り難いが、俺にそんなカッコ悪い真似が出来るわけがない。


「女の子を置いて逃げられるわけないだろ(イケボ)」

「カッコつけてる暇があったら、逃げるか倒すかしなさいよ! 何度も言わせないで!」


 彩花ちゃんはご立腹のようだ。


「わかったよ、最終手段だ。これがダメなら、大人しく奥の手を使おう」

「取れる手があったんなら早く取りなさいよ!」


 急かさないで欲しいよな。


「仮にも近未来兵器であるガンタ○クで勝てないと思ってなかったものでね」

「私もそう思ってたわよ」


 とりあえず、家庭用核シェルターを出します。


「ほら、入って入って」

「これは、家具なの?」

「売ってるのテレビで見たし。家具でしょ」


 しっかりと戸締りをしたら、次に大量のガスボンベを出します。


「なるほど、あれならいける……かな?」


 出されたものを窓から覗いていた彩花ちゃんは呟いた。

 インプはこちらの核シェルターとガンタ○クに気を取られ、後ろに出現しているあやしい家具(?)に気づいていない。範囲攻撃なら巻き込めるかもと思ったが、案外いけそうだ。

 最後に、ガンタ○クの射撃でそれとなくガスボンベにインプを誘導させながら、ミサイルを一発ガスボンベに向けて発射する。


 ――ドッガァアアアン!


 くぐもった爆発音がシェルターの中まで響いた。


「おおー!」

「やったの!?」


 爆発によって発生した炎は意外と早く消えた。

 その中では、黒焦げになりながら地面に膝をつくインプの姿があった。


「あーもう。彩花ちゃんがフラグを立てるから」

「だって、つい……って、フラグなんて現実に有るわけないでしょうが!」


 しおらしく謝りかけた彩花ちゃんであったが、逆に怒ってしまった。


「でも、致命傷は負ったみたいだ。ぜぇぜぇ息をしてるけど動きそうにないな」

「そうね、さっさととどめを刺しちゃってよ」

「はいはい」


 俺は当然のようにほぼ無傷なガンタ○クを使ってインプにキャノン砲をぶち込む。

 弾丸の直撃を受けたインプは跡形もなく吹っ飛んだ。


「案外何とかなるもんだなぁ」

「基本的にガンタ○クはオーバーテクノロジーでしょうに」


 説明書きを読みながらめんどくさい手順を踏んで扉を開けシェルターから出ると、辺りにはあまり香ばしくない焦げた匂いが漂っていた。


「臭い。インプの肉が焦げた匂いかな」

「初めてこの体のありがたみが分かったわ。嗅がなくて済んで良かった」


 ----数分後----


「夜明けまでまだありそうだけど、よく寝たしそろそろ出発しようか」

「時計だと今は四時前ね」

「それ、地球換算だから、二日くらい計測してみないと正確な時間は分からないと思うよ」

「そうなの? 紛らわしいわね」


 そんなことを駄弁りつつ、朝食のカップ麺をすする。

 朝からラーメンは重いと言う人もいるが、俺は余裕である。むしろ、万々歳である。


「『乗り物生成』バギー!」


 某バトロワゲーに出てくるバギーだ。あれを車に突っ込んでバグらせる動画が好きだ。だから、当然そうなるような機能も組み込んだ。――使う場面が来ないことを祈ろう。


「見た目はまんまパクリなのね」

「俺は3Dグラフィックとかやったことないから、立体的造形の製作は得意じゃないの」

「それならパクったほうが見た目がよくなるわね」


 その言い方は腑に落ちないが、事実なので仕方がない。


「それじゃあ、北東の町へ。レッツゴー!」

「……」

「レッツゴー!」

「言い直さないで! 一緒に言ったりしないからね」


 それは残念だ。



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