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26 トラブルは内側からやって来る


 俺が新スキル『パティシエの神髄』によって生み出したルーマイタイソンは絶賛の嵐だった。

 材料が何とか仕入れられたのは幸運だった。

 なければ、専用の生成スキルを作る羽目になってたからな。


 次の日、町を出た俺は堂々と『乗り物生成』で軍用車両のようなごつい車に生成する。


「これが車か……」


 初めて車を見たエルは神妙な顔つきでフレームや窓ガラスをコンコンしている。


「それにしても、こんな近くにあるのに衛兵に驚かれもしないんだな。アタシも聞いていなければ相当驚いたぞ」


 車には『加護』で“認識阻害”を掛けたから、見られても大丈夫だ。

 それを説明すると、彩花さいかちゃんが質問してきた。


「逆にこれどう見られてるのよ」

「見えていても理解できず、俺たちが乗り降りしても『少し前からそうだったかな』って感じに誤魔化すタイプだよ」

「完全に見えてないわけじゃないのね」

「そういえば、幻惑魔法にも似たようなものがあると聞いたな」

「それは……悪い方面でいくらでも活躍できそうね」

「対策の為の魔法もあるから並の練度では意味が無いぞ」


 雑談をしつつも、後部座席に座るエルにシートベルトの説明をして、自分のシートベルトもしっかり付ける。

 ちなみに彩花ちゃんは後部座先に人型で座っている。小さすぎて意味が無いのでシートベルトはしていない。


「今更だけど、あんた日本でも運転してたの?」

「ペーパーだけど、免許は取ってたよ」

「そうなのね。交通ルールが無いから運転方法さえ分かっていればいいものね」

「でもこっちは凹凸がなかなか怖い」

 

 突然跳ねるからなぁ。


 それはともかく、俺はエンジンをかけて出発する。

 すぐにエルは窓の外の様子に釘付けになった。


「おお、速いな。これは休み知らずで走るのだろう?」

「本当はガソリンって燃料が必要だけど、今は魔法で動いてるから休憩が必要だとしても俺の方かな」

「それでも十分にすごいな」

「でも、異世界に来たのにこれってどうなのよ」

「じゃあUFOの方がよかった?」

「そういう問題じゃないわ」


 彩花ちゃんの言わんとしていることは分かる。だが、こうやって現代の乗り物で異世界を爆走するのもまた、テンプレでありロマンなのだ。


「流石に国境越えはこれ使わないわよね?」

「まぁね。ちゃんと降りて正規の手段で通るよ」


 強行突破の方法はいくらでもあるが、意味もなくこの世界の人に迷惑をかけるわけにもいかない。観光地に物を捨ててはいけないのと、多分同じ理屈だ。


「あの、ご主人。言いにくいのだが……」

「何?」

「国境近くにあるダビショボという町に一度寄ってはもらえないだろうか?」


 ……ダビショボって何だよ。


 いやそれより、


「実家でもあるの?」

「ッ!? 実はそうなのだ。……よく分かったな」


 適当に言ったんだけどねぇ。

 折角だし、カッコつけておこう。


「エルの考えてることくらい簡単に分かるよ」

「ああ、そういうスキルまであるのか」


 ……解せん。


 少しチョイスをミスったかなとは思ったけど、普通に納得されてしまうなんて。


「思考を読むスキルなんてないよ、適当に言ってみただけだから」

「そうなのか」

「でも、今は(・・)無いだけよね」

「そりゃあいつか作る可能性はあるけども、そんな強調して言わなくたっていいじゃん」


 隣を見ると、彩花ちゃんはニッと笑っていた。

 可愛いのでゆるした。


「それにしても、盗賊まがいの事やってたくせに実家帰りしようとか思うんだね」

「うぐっ。それを言われると痛いな」


 それ以前に、親が生きていることに驚きである。


「あの時は少しグレていただけだ。家出して突発的にフレストまで来から、お金に困っていたのでな」

「だったら冒険者になればよかったじゃないのよ」

「それは……ちょっと色々あったのでな」


 親が冒険者だったりしたのだろうか?

 

「まぁとにかく、親と喧嘩して飛び出してきたから、足を洗ったついでに仲直りに行きたいってところか」

「な、なな何で分かるんだ!?」


 行動がベタだからとしか言い様が無い。


 彩花ちゃんも呆れたような表情である。


「そこでもう一つ相談があるのだが……」

「首輪を外してくれってか?」

「そっそそうだ。虫のいいことを言ってるのは分かる。一時的でいいのだ。親に奴隷になったなんて知られたらなんて言われてしまうか……」


 俺は別にいいと思うのだが。


「面倒だからそれくらい我慢しろ」

「そんな……なら、この話は聞かなかったことにしてくれ。町の方は――」

「――いや、寄るぞ」

「何故!?」

「面白そうだからな」

「何だと!?」


 家出した娘が知らない男の奴隷になってたとか、エルの親は大層面白い反応をしてくれるに違いない。


「あのね、エル。こいつはこう言ってるけど、それ以前に貴方は自分の犯した罪を償う義務があると思うのよ。だから今回は諦めた方がいいわよ」


 何だろう。遠回しに俺といるのは拷問だって言われた気がするのは気のせいだろうか?


「そ、それもそうなのだが……」

「まだ何かあるの?」

「いや……あのだな……。



 ――アタシの父はそのダビショボ在中騎士団の騎士団長なのだ」



「「え?」」


 騎士団長ってお前、嘘だろ。


「もしかしなくても貴族ってことよね?」

「ああ。騎士団長の娘が犯罪奴隷だなどと知れ渡ったら、私だけでなく父の汚点になってしまう。そうなるわけにはいかないのだ」

「俺的に、騎士団長の娘ってのが本当なのか疑わしいところなんだけど」

「確かに証拠は無いが……」

「証拠以前に、エルは剣使わないじゃん」

「うぐぅっ!!」


 なんか、凄い呻き声が聞こえた。


「ア、アタシだって幼いころから剣術の稽古を受けてきた。だが、驚くほどに才能が無くて、体術だけが取り柄だったのだ。……そもそもッ、女のアタシが剣を使えなくともおかしなことはないではないか!」


 そんな急にジェンダーについて自虐的にならなくてもいいのに……。


「まあまあ、落ち着いて。疑わしくても信じてないわけじゃないから」

「貴族だと嘘をつくのは重罪だものね」


 彩花ちゃんが意外とシビアな判断材料を持ってきたな。


「では、首輪を外してもらえるのか?」

「それは断る!」

「何故だ!?」

「――ちょっとエル、耳貸して」

「んあ、何だサイカ様?」


 二人話運転席から離れて小声で何やら話している。


「え、何? 何話してるの?」

「あんたはちょっと黙ってて」


 どうしよう、聞きたい。でも聞かないほうが良さそう。

 でも聞きたい。


 暫くすると、エルの方から話しかけてきた。


「その、ご主人。奴隷じゃなくてもご主人の旅には付いて行くから大丈夫だぞ?」

「お、おう……?」


 何その優しい口調。

 彩花ちゃんはいったい何を吹き込んだんだ?

 優しくすればなんでも言う事聞いてあげちゃう的な?


「でも、その、ダビショボの町だけでいいんだ。せめて、首輪が見えないようにはしてもらえないだろうか?」

「まぁいいけど。親にはちゃんと説明しろよ」

「わ、分かった。ありがとうな、ご主人」


 うーん、手のひらが透けて見えても踊らされちゃう。我ながら甘々すぎて問題かもしれない。


 そう思いつつも車を止める。


「こっち来て」

「ああ、分かった」


 エルの首輪に手を当て、車にかけたのと同じ“認識阻害”を掛けた。

 これで、写真でも撮られない限りは見ただけで奴隷だと思われないだろう。


「ありがとう」


 手が届くだけ近づいた時に見えたエルの顔は、少しだけ赤かった。


「ねぇ彩花ちゃん、いったい何を言ったの?」

「秘密よ」


 デレ期が来たのだろうか?


 ……やっぱり演技か? 演技なのか?


 分からん。


「発車するぞ」

「はーい」

「ああ」



------------



 大きな城壁の前で、俺たちは車を降りる。


「ここがダビショボか」

「フレストより大きいわね」

「国境に近いからな」


 国境に近いところは辺境だから小さい町になるのではなかろうか?

 ……場所によるか。


「つまり、この辺の国際情勢はあまりよろしくないと?」

「そんな事は無いぞ。最後に戦争があったのは五十年は前らしい」

「それは大層平和なことで」


 普通異世界ってさ、平和な世界じゃないから飛ばされてくるもんじゃないの?

 転生だから関係ないか?


 その辺も神様に言った方がよかったのかなぁ。


「じゃあエル。ここからは別行動でいいのね」

「ああ、宿の場所は後で知らせてくれるのだろう?」

「ダンジョン機能の使い方は分かるよね」

「ああ、車の中でおさらいしたから大丈夫だ」


 通信手段として、ダンジョン機能の通信を用いることにした。これはダンジョンの配下と通信を取るためのものだが、奴隷も配下としてカウントされていたので、マスターである俺が許可を出せば通信可能だったのだ。


 俺と彩花ちゃんはエルと別れ中に入ろうとする。


「そこの者、止まれ!」


 止められた。


「貴方は、ライラ・ウェライト様では!?」


 面倒ごとの匂いがしてきたぞ……。



別なものを書きたいので打ち切りです


次から投稿する作品は最低でも章ごとに完成させたいと思っております。

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