25 新たなる旅
フレストの町を出たその日、俺たちは乗合馬車に乗って次の目的地へとゆっくり進んでいた。
「馬車って、思ってた異常にお尻とか辛いね」
「ご主人が折角だから馬車に乗りたいとか言い出したのではないか」
「だって、これを逃したらいつ乗れるか分からないって言われたら普通乗るでしょ」
「異世界の普通を言われても困るのだが」
俺と話しているのは奴隷のエル。鮮やかな赤い長髪とその豊満な胸が印象的な美しい女性だ。俺のハーレム候補ではあるが、俺よりも好きな人がいたりしてなかなか攻略出来ない。
もともと裏組織の実行部隊長的な役職だったが、見た目が良かったのでその組織のトップを潰して連れて来れるようにした。
「……もうすぐ着くはずだから、我慢しなさい」
「へーい」
小声で注意してきたのは俺の胸元にいる彩花ちゃん。俺のスキルの『毛玉ナビゲーター』によって存在している彼女は、そのスキル名の通り直径五センチほどの毛玉である。現在は俺の付けているマフラーの先端でポンポンに擬態しているが、誰もいないところでは手のひらサイズの女の子に変身している。その時の姿は前世の姿を再現したので、日本人らしい美少女姿に蝶のような羽をはやしたものとなっている。
両手に花でハーレムなんてすごい(悲哀)。
まぁ三角関係であるのは間違いない。
ただ、矢印が下図の様なのがいただけない。
彩花ちゃん
↑ ↑
俺 → エル
ハーレムとか異世界でも正攻法じゃマジ無理っすわ。
教科書代わりにと思って適当なラノベを読んでも、あいつらにはご都合主義の力が働いてるから何の参考にもならないんすよ。
どこまでのマッチポンプをオーケーにするかと言うのは、俺にとってかなり重大な課題である。現在は「故意でなければオーケー派閥」が脳内で多数派となっているので、偶然を祈るしかない。
なら「幸運」と言うスキルを作ってしまうのはありだろうか……?
「何を急に難しそうな顔をしているのだ」
「んー、いや。幸運は本当に運がいいのか考えてた」
「……それは哲学か?」
「どうせそんな大した事なんて考えてないわよ」
そんなこんなでダラダラと会話しながらも、馬車はまったりと進んでいく。
行く先は国境近くの町だが、このペースだとあと二日は掛かるそうだ。今日の夕方までには次の町に着くらしいので、そこからは車でも出してさっさと進もう。
予定通り、俺たちは外国――国境を越えた先の小国連合へと向かう。
いくつかの人間種と獣人種と亜人種の国が協力して大国と渡り合うために作った連合国だ。国通しの平等の為に名前は無く、小国連合とだけ呼ばれるらしい。
その中でも、目指すのは首都である中立都市。そこは人種のるつぼもびっくりなほど種族が混沌とした場所らしい。それを聞いて、ここへ行かずにどこへ行けというのか。
まだ見ぬ土地に思いを馳せる。
…………。
とても楽しみだ。
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「やっと一息付けるー」
俺は宿のベッドに横になりながら呟く。
馬車に揺られること八時間。夕方になって漸く近くの町に辿り着いた。
町と言ってもフレストと比べたら村と言ってもいいようなものだ。
行き来する冒険者がそれなりにいる為に、宿の町として発達しているらしい。
残念なことに今日の宿は一人部屋だ。彩花ちゃんはエルにお持ち帰りされたが、男と相部屋よりはいいらしい。楽しくイチャイチャしてたりしないかとても心配である。
ハーレムを作るはずが、女性カップル+俺、になったら物凄く嫌だ。
そんな女々しく考えていると、ノックをしてエルが入ってきた。左手には毛玉彩花ちゃんが乗っている。
「どした?」
「シャワー出してもらえる?」
「ん? いいy――」
――良い事思いついた。
「対価に猫モード撫で放題三分でいいならね」
「はぁ!?」
彩花ちゃんは毛玉、人型の他に、もう一つ変身を残している。それが猫モードだ。あれは頬擦りしたいくらい可愛いのだ。
「猫もーどとはなんだ?」
俺がそのエルの質問に答えてる間、彩花ちゃんは考えていた。
「……一分よ。それで手を打つわ」
「よっしゃ、決まりだね!」
俺はベッドに腰掛け、太ももをポンポン叩く。
「今からなの?」
「もちろん。後で渋られたくないもん」
「分かったわよ。その代わり、一分以上触ったら遠慮なくぶん殴るわ」
「大丈夫だって。約束は守るからさ」
再び太ももをポンポン叩く。
彩花ちゃんはゆっくり飛んできて、膝の上で猫に変身した。
一秒も無駄にするまいと思って、早速撫で始める。
「ふにゃあ」
「……いいなあ」
彩花ちゃんの鳴き声と一緒にエルが呟く声が聞こえた。
「ああ、病みつきになるぅ」
「にゃああ、にゃあん」
背中などの警戒されにくい場所から、徐々に頭や首筋などをさわさわする。
「ゴロゴロ」
ラスト十秒に喉元を撫でる。喜んでもらえてるようで良かった。
「はい終わり! 約束通りシャワー出してね」
一分丁度になると、パッと彩花ちゃんは毛玉に戻って逃げ出した。
「あっさりと変身してたけど、時々猫モード使ってたの?」
「う、うるさいわね! あんたが気にする事じゃないでしょ!」
図星か。
「サイカ様ぁ。どうか、アタシにもお慈悲を!」
「エルが相手でも嫌よ!」
「やーい断られてやんのー」
「あんたにも二度としないわよ!」
「そ、そんな!?」
あのモフモフを二度と味わえないだと……?
「いいから早くしてよ」
「あ、はい」
そんなわけで三人してエルの部屋に行き、シャワールームを手早く設置した。
「ありがと。早速使わせてもらうから、あんたは出て行きなさい」
「へいへい」
がっかりした様な顔をしつつ部屋に戻る。
しかぁし! 彩花ちゃんは早速シャワーを浴びると言っていた。
其れ即ち、我が封印されし暗黒の力を解き放つ時也!
「『第三の目』開眼!」
テンションが上がった俺はノリノリでそう言って、スキルを使う。
今日は今までと違って個室だ。そして、覗き放題でもある。つまりはそういう事だ。
俺はまず隣の部屋に視点を置く。
エルと人型の彩花ちゃんが、早速服を脱いでいるのが見えた。
二人でシャワーだと!? これは予想外だ。
万が一にもエルが彩花ちゃんを襲ったりしないように命令してはいるが、これはけしからん。けしからんぞお!
そんな事を思っている間にも、二人は一枚、また一枚と衣服を脱ぎ、ついに裸となる。
その体つきは全く違う。彩花ちゃんは貧層でない程度にはスレンダーないいスタイルをしているはずだったのだ。しかし、フィギュアみたいな縮尺のそれと、エルの生々しくもはち切れんばかりの体では全然違う。
しかし、それでも甲乙付け難い。
エルの体は確かにあふれんばかりのエロスで満たされてはいるが、彩花ちゃんの体は俺が自分で作り上げた理想形だ。
ああ、やべぇ。生きててよかった。
そう思いながら、体の隅々まで嘗め回すように見つめる。
……しかしまぁ何といいますか。やっぱり着衣の方がエロいよね。
破れも嫌いじゃないが、一番は体形に合ったエロ衣服こそ至高だと思います。エロとは一期一会、十人十色、千方百計、千差万別なのだ。
でも今日はもうこの辺にして置こう。湯気で隠されながらも、水をはじいてキラキラ輝く肌など見てしまったら、一瞬で賢者に至りそうだ。
まだまだチャンスがあるので、それはまた今度の楽しみに取っておくのだ。
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ティッシュを片付けて俺もシャワーを浴びた後、彩花ちゃんたちは再びやって来た。
「ご飯はどうする? この辺りもフレストと売ってるのはそんな変わりないけど」
彩花ちゃんがいつもの癖なのか人型で俺の耳元まで飛んできた。
……風呂上がりの女子ってやっぱいい匂いだよね。
――スパァアアン!
「セクハラよ」
「あーごめん、声に出てたか」
でも彩花ちゃんが無警戒なのが悪いと思う。俺が賢者だからいいものを。
「まぁいいわ。赦してあげる」
許された。
「エルは何が食べたい?」
「そうだな。またルーマイタイソンが食べたいところだ」
でた、異世界の謎甘味。
カットされたショートケーキのような形のアイスのような何かだ。
「あ、私も食べたいわ。エルが二回も食べてておいしそうだなって思ってたの」
「そっか、じゃあ食べに行こうか」
「ご主人。あれは高級品だから、こんな田舎では食べられないぞ」
「マジで?」
「ああ、そうだ」
知ってたのに、何故食べたいと言ったし。
「じゃあ大きな町まではお預けだね」
「あれ、持ち前のチートで何とかするって言った?(チラッ)」
「え?」
「そうか、ありがとうご主人。私たちの為にスキルを作ってくれるなんて。奴隷としてこれ以上嬉しい事は無い(チラッ)」
「え?」
「やっぱり作ってくれるって言ったのね。嬉しいわ、惚れ直しそうね(チラッ)」
「ん?」
「こんなにアタシたちの為を思って行動してくれるご主人なんてそうそういないな。本当にうれしいぞ、ご主人(チラッ)」
「お、おう。いいだろう。そこまで言うのなら作ってやる」
「流石ご主人」
「よっ、日本一!」
菓子の一つでこれだけ喜んでくれるのなら、いくらでも作ってやろうじゃないか。
フハハハハ!
無いと分かっているものを食べたいって言ったのは何故かなぁ(すっとぼけ)




