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24 おれたた


 俺はギルド長が忙しくないのを見計らって声を掛ける。


「へーいギルド長。討伐証明もらって来たよ」

「あ? またお前か、見てやるから直ぐ帰れよ」


 そう言って手を出してきたので、俺はさっきもらった討伐証明書を渡す。


「……おい、ギルドカード見せろ」

「ほい」


 これまた取り出して渡す。


「……どうして四階層当たりの魔物からいきなりミノタウロスなんかと戦ってんだよ」

「そこで構造変化が起こって、別な通路に隔離されて、近くの転移陣に入ったら最上階で、やっとのことでミノタウロス倒したら、帰りの転移陣が出て来たので、それに乗って戻ってきた感じ」


 これも考えておいたことをそのまま話す。

 ステータスは所有者が見せようとしない限り見えないので、ミノタウロスを倒した俺がレベル10であることは鑑定でもできないと分からないはずだ。なお、鑑定はギフトスキルなので、持っている人は少ないから安心だ。


「なるほど。一応有り得ない事でもないのか……? まぁ、ミノタウロス倒したってんだ。俺の権限でCランクまで上げてやるよ。それが目的だったんだろ?」

「おー、ギルド長太っ腹!」

「もちろん条件付きだ。明日講習やるからそれに出ろ。Cランクからは試験が普通は必要だからな。これだけでも十分特別待遇だろ?」

「おっけー。明日の講習ね」

「時間は他の職員に聞け。俺もそろそろ仕事に戻らないと」

「へーい」


 二階級特進――って言うと殉職したっぽいな。でもこれで「さらば雑用係」だな。



------------


「女将さん、今日は延長するの遅れたけど、荷物とか捨ててないよね?」


 話しかけたのは最近使ってたギルド直轄の宿屋の女将さん。昨日はエルの家に泊まってそのまま今まで外にいた。だから、普段出かける前に延長していたのが今日は遅れてしまったのだ。


「ああ、大丈夫だよ。部屋はそのままさ。けど何処か遠出でもしてたんかい?」

「まぁそんなとこ、おかげで俺もCランクだぜ」

「そうなのかい、良かったじゃないか」


 女将さんは自分の事のように喜んでくれた。


「そんなわけで、明後日くらいには町を出るんだ」

「そうかい。問題児がいなくなって嬉しいわ」

「それは酷いよ」

「はっはっは。冒険者はいつもすぐに旅立っちまうからね。一々気にしないことにしてんだよ」


 まぁ、そうしないと気が持たないよな。


 俺は適当に話した後、お金を払って自室に戻る。


「昨日ぶりの部屋だ」

「そんな前でもないのに、懐かしい気がするわね」


 この部屋だけ俺がシャワールームを設置してしまったので、持ってかれるわけにはいかなかったのである。


「じゃあ俺は寝る。もう眠くて死にそう」

「早いわね……あ、今気づいたわ。初めてあった日に寝るのがやたら早かったのも、そのスキル生成が理由だったのね」


 そういえばそうかもしれない。

 もう考えるのも面倒なので、俺はさっさと意識を手放した。



------------


 彩花ちゃんによって八時に起こされた俺は、食事をゆっくりと頂く。

 今日はCランクになるための講習の日だから九時に冒険者ギルドへ行かなくてはならないのだ。


「エルたち大丈夫かしらね」


 彩花ちゃんが言っているのは、今日決行される裏組織一網打尽計画だ。地下にある会議室に幹部を呼んで全員を現行犯として捕獲すると言う流れになっている。


「まぁ大丈夫でしょ。失敗しても死ぬ事は無いだろうし」

「そうとも言い切れないかもしれないでしょ?」

「……彩花ちゃんにもダンジョンでの通信が使えるようにしたから、それを使って話聞いてみたら」

「ありがとね。折角だし使わせてもらうわ」


 彩花ちゃんは心配性だなぁ。


 小さい体で空中の半透明のモニターをピッピする姿を眺めながら、俺は缶コーヒーを飲む。俺が飲むのはもっぱら微糖だ。ブラックが飲めないわけではないが、あれを麦茶よりおいしいと思ったことがない。そう言うと好きな人は怒るんだろうな、と思うけど。


 俺が飲み終わった缶を消すころに、彩花ちゃんの念話も終わったようなのでそのまま出発だ。


 すぐ隣にギルドがあるので、部屋からでも五分もあれば着いてしまう。九時までまだ十五分あるので、後二十分は待たないと講習は始まらないだろう。

 ギルドの中は、朝の依頼ラッシュが終わって、人が少なくなってきた頃だった。

 スティールラット討伐のときに一回だけラッシュの風景を見たが、日本の朝の満員電車を彷彿とさせたとだけ言っておこう。


「受付さん。昨日ぶりですね」

「講習でしたら、二階に上がってすぐ左の部屋になっております」


 耳が早いな。出来るだけ俺と関わらない為に、先んじて仕事をするようになってしまった。


「ありがとうございます」


 お礼だけはきっちり言ってその場を離れる。用もないのに話しかけてたら本気で嫌われかねないからな(手遅れ)。


 指定された部屋に入り、ひたすら待つ。彩花ちゃんと駄弁ったり、エルたちに念話で進捗を聞きつつ待つ。


「あれッ? どうして君がいるんだいッ」


 九時の一分前、無駄に鬱陶しい話し方で入って来る人がいた。


「セクトさんもCランクになったんですか?」

「ああ、昨日試験があってねッ。ダンジョンでごたごたがあったみたいだが、きっちり合格できたよッ」

「おめでとうございます」

「もしかしてキミもなのかいッ?」

「はい、セクトさんのアドバイスのお陰で、いい縁に恵まれまして」


 本当は関係ないが、建前としては初めての依頼先でもらった特別入場許可書のお陰でダンジョンに入れたという設定になっている。それが本当ならば、セクトさんのお陰と言っても過言ではなくなるのだ。


「それは嬉しいねッ。けれど、一体何をしたんだいッ?」

「えっとですね、昨日のダンジョンのごたごたでミノタウロスを倒しまして、その結果でCランクに昇格になりました」

「――ッ! それは本当かいッ。凄いじゃないかッ」


 きっちり会話すると、中々にくどく感じる喋り方だ。でも別に悪い人じゃないし、段々慣れてきた。

 そうして、互いの様子を話し合ってるうちに、ギルド長が部屋に入ってきた。


 最初にギルドカードをCランク仕様の鉄みたいな鈍い金属色の物に交換した後、小一時間ほどの間くどくどギルドの説明や他の模範になれだのどうでもいいことを聞き流して、講習は終わった。


「これで講習は終わりだ。最後にタイチに一言言っておく。お前が何かしたらCランクにしてやった俺の顔に泥を塗ることになるから気を付けろよ」

「ほーい」


 適当に返事をしてお開きになった。


 セクトさんと別れて、次の目的地はマルゲリー商会だ。こけしを追加で三つ売るって話だったからね。



------------


 結果としては、予想をさらに超えて高く売れたそうで、大金貨九枚もらった。つまり、一つに付き金貨二枚値段が上がったのだ。

 俺が完成度を上げようと、暇なときに時間を掛けたことで、見栄えが良くなったのも理由の一つだ。


「出来るならばうちの専属で作っていただけないでしょうか?」


 なんて聞かれたが、当然断った。恐らく二度と作る事は無いので、マルゲリーさんには宝くじに当たった程度に思っていて欲しいものだ。


「何か、今日だけでこの町に来てかかわった人ほぼすべてにあった気がする」

「そういえばそうね。でもこういう時って、誰か一人だけ忘れてたりするわよね」

「んー? いないと思うよ」

「私も思いつかないけどね」


 そうして雑談しながら、買い食いして当てもなく歩き回る。


 お昼も過ぎた頃、漸く成功の報が来て、俺たちはダンジョンへ向かった。



------------


「エルもイルスもお疲れ様」

「ああ、ご主人のおかげでうまくいったよ」

「マスター、お声を掛けていただき、ありがとうございます」


 どちらも俺の奴隷なのに、この返事の差は何なのだろうか。丁寧なイルスの方が、腹の底で何を考えてるのかわからなくて怖いけども。


「余ったアイテムはイルスに渡しておいて。無いとは思うけど、俺のいない間にイルスが殺されるのは後味が悪いからね」


 そもそも、イルスを弱体化させたのも俺だが、気にしてはいけない。

 あの時の『剥奪』で得たステータスはダンジョンマスターの権限以外すべて返してある。精査したので、返しても大丈夫なはずだ。


「これで、この町でやることは終わったなぁ」


 うーんと伸びをしながら俺はそう言葉をこぼす。


「いろいろあったけど、異世界に来た割には大した事件も起こらなかったし」

「私はもっと平和でいいと思うけど」


 まぁ平和と言い切るには少し物騒ではあった。

 中二っぽいけど、やっぱり魔王とか邪心みたいな大いなる敵と戦ってみたいよね。


「さて、次の目的地を決めようか」


 俺はそう言ってみんなの方に振り返った。



全キャラ無理やり登場させてみました


これにて一章は終了です。感想や評価など頂けると幸いです。

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