2 女の子(?)と一つ屋根の下
お昼休憩と称して、『家具生成』スキルで出したポテチとコーラを味わう。食べ物だって家で使うものだから、『家具生成』でだせる――と言うのはギリギリ成り立たなかったので『エディット』を使って食べ物も出せるようにしただけだ。
ただし、何でも出たら面白くないので、地球産のある程度保存のきく加工食品に限っておいた。
手をウェットティッシュで拭き、改めて余計な家具を片付ける。
「さて、十六人目『魂召喚』」
シュオォー、と光ってもはや見慣れた青いホログラムが現れ、女性を形作っていく。
今回は女子高生っぽい。だってセーラー服着てるし化粧っ気も無いもん。それに、割と可愛くて結構好みだ。
今までの人と比べて、若くてはつらつとした雰囲気を備えている。
「え? あぁ、私死んだのか、こんなに手も透けて……」
この反応も見慣れたものである。代り映えが無くて残念だ。小さいが、(精神的に)子供は出てこないように設定しているから、これでもしっかりした娘なのだろう。
「理解が早くて助かる。俺はお前を次の世界へ導く者だ」
こうやって、エラそうにしてる方が相手が納得してくれることが多いと学んだのでそうしている。
「あなたは私を転生させてくれる存在という事ですか?」
「そうとも言える」
むしろ、それしかする気が無い。
「名を聞いてもいいか?」
「私は田淵彩花です」
「では、タブチサイカ。お前は一度死んだ。しかし、その行く末には複数の選択肢が用意されている」
「選択肢……」
「ああ、そうだ。そのうち二つは地球、もしくは異世界に転生する事。――他には天国と呼ばれているところか、無に還るかだ。――そして、最後にもう一つ」
無駄にタメを入れる。
この彩花ちゃんは今までの十五人に比べて、聞く姿勢がすごく真面目だ。俺の演技力が向上したから、俺が神様だと信じ切っているのかもしれない。ついつい、こちらの演技にも熱が入ってしまうのだ。
「サイカ、俺の従者にならないか?(渾身のイケボ)」
「え?」
彩花ちゃんが驚いている。
これはきっと不覚にもときめいてる感じだろう。やったぜ! 俺のナンパ術もなかなか上達して来たんじゃないか?
「俺にはお前が必要だ。だが、無理強いは出来ない。だから、お前の選択に任せるよ」
「え、えぇと」
彩花ちゃんは迷っている。多分あと一押しだ。
「俺と一緒に来てくれないか?」
「……はい?」
よっしゃぁああああ!
じゃない!!
一世一代のプロポーズに成功したような気分になってしまった。
冷静になるのだ俺。疑問形だったぞ。
「何か質問が?」
思わず声が上ずった。全く冷静になれていない。
「あ、いや別に従者になるのは問題ないですけど……」
「そうか」
あんれ、意外とあっさりオーケーもらえた。
気が変わらないうちにと『毛玉ナビゲーター』のスキルを使う。
「これからよろしく頼む」
「あ――」
何かを言いかけていたが、聞く前に彩花ちゃんのホログラムに映った姿がかき消える。
「ふぅ、一件落着だな」
そう口にしたところ、耳元で――
「何ですかこれぇえええ!?」
と叫び声が聞こえて、椅子からずり落ちそうになった。
「耳がぁああ。耳元で急に叫ばないくれぇ」
「耳なんてどうでもいいですよ、何なんですかこれ!? どうして私の体が毛玉みたいになってるんですか!?」
俺の耳なんぞどうでもいいと言われた。彩花ちゃんもなかなかひどい事を言う。その姿は直径五センチほどの球体状の毛玉だ。綿毛とかポンポンとも言う。
「何って、従者になるって言ったじゃん」
「えぇ!? 従者ってこんな毛玉なんですか!? 聞いてないですよ!」
「言ってないからな」
「のぉおおぅ!」
外国の人みたいなショックの受け方だ。
「あ、あの。今からでも異世界に転生って方を選んでは……?」
「いいけど、それなら一回死なないといけないよ?」
「なんでぇ!?」
「なんでって、俺転生させるしかできないし」
多分できるけどあえて言わない。俺の好みの娘だし、疲れたし。
「うがぁ。騙されたぁ」
彩花ちゃんの本体となった毛玉に青い縦線が入る。まるで、漫画のショックを受けた時の表現のように。
「おお、感情表示機能もうまくいってるな」
「え? 今度は何?」
毛玉彩花ちゃんに今度は不安を示すようなどよどよとした線が入る。
「感情を表示する機能だよ。毛玉じゃ感情を伝えるのは大変だろうから、付けてみたんだ」
「へー、あホントだ。LI○Eのスタンプみたいに自由に変えられる」
毛玉の表情(?)がコロコロと変わる。喜んだように光ったり、怒ったように青筋とオーラが浮かび上がったり。
俺は椅子から立ち上がって伸びをする。
「まぁ、彩花ちゃんも気に言ってくれたようだし、今日はこの辺にしてゆっくり休むとしようかな」
「ちょっ、ちゃん付けって……。休むって、神様なのに仕事休んでていいの?」
「えー、俺別に神様とかじゃないし、別に大丈夫だよ」
「はぁ!? だって、人を転生させたりしてるんじゃないの?」
「うーん、話すと長いんだよなぁ」
「いいから話しなさいよ!」
----説明中----
「それじゃあ、この毛玉になってナビゲーターをしてくれる人を探すためにこんなことをしてたってこと!?」
「そうだね」
毛玉が声を上げずに呆れている。
「とりあえず、家に戻ろうか。あれ『家生成』消しちゃったから、この仮の部屋を消す方法が無い。うーん、このまま放置でいいか」
「説明不足について言及したいけど……もういいや、あんたの家ってどんなところなの? きっと豪華なんでしょ、たのしみだなー」
彩花ちゃんが若干暗い表情で棒読みにそう言った。
俺が椅子の後ろに隠してあった部屋の扉から外へ出る。
「この部屋こんなに小さかったのね。真っ白だと案外分からないものね……草原?」
「よーし、出でよお家ドーン!」
ドーンではなく、ぱっと目の前に『携帯できる家』の木製の小屋が出現する。
「家? ちっさ!? 小屋じゃん」
「彩花ちゃんたら毒舌。これは自分で増築すればいくらでも大きくできるタイプの家なの」
「そんなタイプの家聞いたことないわよ――って、言葉だけ聞いたら結局普通の小屋じゃない。それにどうやって増築するのよ。小屋として完成してるこれを増築したらハ○ルの動く城みたいになるじゃないの」
「おおー! その発想はなかった。やっぱり話し相手がいると捗るなぁ」
俺は彩花ちゃんの言葉に感心して頷く。そして、小屋の中に入るとベッドを出して寝転がる。靴履いて寝るなんて、まるで外国に来たみたいだぁ。
「小屋の中も何もないのね。期待して損したわ」
「あ、そうだ。忘れてたけど、その体にはセーフモードが付いてるから好きに寝ることが出来るよ。辛い不眠症ともおさらばだ」
「へー、そうなんだ。この体も眠る必要があるのね」
「いんや、いらないよ。一人だけ夜中起きてるよりいいかなーっと思って付けたんだ。あ、でも寝る前にアラームを付けることをお勧めするよ。付けないと一時間で自動的にセーフモードが解除されるから」
「あ、そう。それはまぁ有り難いわね」
俺は起き上がってベッドに腰かけ、上着を脱いでベルトを外すと、室内をふわふわと浮かんでいる毛玉彩花ちゃんを見つめる。
「可愛いなぁ。その上、中に女の子が入ってるんだから最高だよね」
「うわぁキモイ。皮肉でもないのに、ここまで素直に喜べない誉め言葉は初めてだわ」
そうはいっているものの、毛玉は照れているように赤くなっている。尚のこと可愛い。
「彩花ちゃんってさ、正直かなりちょろいよね」
「はぁ!? 別にちょろくないし!」
「だって、俺が口説いたらあっさりホイホイついてきたし」
「いや、だって神様だと思ってたから。それに、あんたの顔が結構……そう、よく見るとあんまりカッコよくないわよね」
「かっこいいと思っちゃったかぁ」
「お、思ってないし! あんたの顔はよく見なくても不細工よ!」
顔に出さないようにしたかったけど、かっこいいと間接的に言われてニヤニヤが止まらない。
「そのニヤニヤ顔は特に不細工ね」
あぁ、心にナイフが刺さったような痛みが。やはり、笑顔を侮辱されるのは精神的にキツイ。
彩花ちゃんは一矢報いて嬉しそうな雰囲気だ。
「あー傷ついたなぁ。今日は疲れたし、もう寝よ。明日の日の出くらいには起こしてね」
「寝るの早すぎ! もうすぐ夕方ってくらいだけど、まだまだ昼間なのよ」
「気にしない気にしない。あ、そうか。さやかちゃんの寝床忘れてた。ソファーとクッション出したからそこでいいよね。じゃあおやすみ」ノシ
「え、まだ聞きたいことがあるんだけど?」」
……すぅ。
「え? もう寝たの?」
彩花は寝息を立てた俺の顔を覗き込んだ。
「本当に寝てる……」
こうして俺の異世界生活初日は女の子(?)と一つ屋根の下で眠ることになった。
やったぜ!




