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19 VSザコ魔物


 トロッコに乗った道中に彩花ちゃんとエルに話を聞いた。このダンジョンの名はフレストの塔。どうやらこの地域の名がフレストと言う名で、そこにある塔型のダンジョンだからその名前らしい。町の名前に関しても同様だ。


 フレストの塔は一般的には十五階層の塔として認知されていたが、今回地下通路が見つかったので実際は十六階層だな。


 一本道になってしまった地下道をトロッコに揺られ、ガタガタと移動すること数分。道中にあった再び見えなくなった罠をスルーし、申し訳程度に用意してあるゼリースライムと言う最弱スライムや、サイレントバットと言う音も気配もなく近づいてくる(らしい)蝙蝠をトロッコで蹴散らしながら、地下道の終端に着いた。

 そこには、扉が用意してある。


彩花さいかちゃん、ここはどの辺?」


 トロッコから降りながら俺が呼びかけたのは『毛玉ナビゲーター』の彩花ちゃん。今は人型妖精モードでマップと睨めっこしている。


「ダンジョンの周りを少しづつ上昇しながら回ってたみたいなんだけど、今ようやくダンジョンの真下付近に戻ってきたところね。多分、あの扉の先が階段でダンジョンに入れるようになってるんじゃないかと思うわ」

「なるほど。わざわざそんな事をさせたんだから、これはダンジョンを作り替えるまでの時間稼ぎだったのかな」

「その可能性は高いわね」


 だとすると、俺たちのためにあのイケメンがダンジョンを作り替えてくれていると言う事だ。迷惑だなと最初は思ったが、今は割と楽しみでもある。

 俺がトロッコを消すと、エルが後ろでボソッと呟く。


「まさか、ボスがダンジョンの支配者マスターだったとはな」


 俺の後ろに乗る巨乳美女のエルがボソッと呟いた。エルは探索の邪魔にならないようにと今はその鮮やかな赤い長髪をポニーテールにしている。助言したのは俺だが、本当にやるとは思わなかった。時々エルの方を振り返ってうなじを拝む。

 ありがたやぁ。


「この地下道を見て、ダンジョンっぽいって思わなかったの?」

「思うわけがないだろう? この町のダンジョンは塔型だ。地下にあるとは普通考えない。それに、私が組織に入ったときは既にこの地下道はあって、その時はもう当然のように利用していたからな」

「そうなのか」


 あんまり馴染んでると、気づかないもんだよね。無くしてたと思ったベルトが完全にインテリアと化してただけで、実は普通に棚に置いてあったんだよね。半年経って大掃除したときに初めて気が付いたよ。


「ほいじゃま、エル先生、扉をどーぞ」

「おい、その口調はムカつくからやめろ」

「そうだよね。ここからダンジョンも本番だから、気を引き締めなきゃね」


 ……ドアは開けるけど。


 ――スパァアアン!


「このハリセンは……以心伝心?」

「違う。顔に書いてあったわ」


 それを以心伝心って言うんだと思う。


 エルが開いた扉の先には上に向かう幅五メートルくらいの石造りの階段があり、四匹ほどの蝙蝠サイレンスバットの群れが天井に止まっているのが見える。壁には等間隔に松明が並んでおり、地下道とは違った赤い明かりが階段を照らしている。


「なんか、凄くダンジョンっぽくなったな」

「何だかわくわくする雰囲気ね」

「地上五階層までは明かり窓から明かりを取っているから、この雰囲気はここだけのはずだ」

「そうなのか。勿体ないな」


 何なら、真っ暗にして全部この雰囲気でもいいのに。


 そう思いつつ、『家具生成』でスリングショットの弾を出して『射出』によって蝙蝠を打ち落とす。

 ふむ、もうちょっと射撃までの時間を早くしたいものだ。


「道中も思ってたけど、こんなザコなら出す必要もないと思うんだけど」

「普通なら時間稼ぎくらいにはなるだろう。ご主人はトロッコで全部蹴散らしてきたではないか」

「あーそういう事ね」


 ちょっと悪いことをした気分だ。

 ふと、蝙蝠が光の粒になって消えた後に羽が残っているのに気が付いた。


「……これって、もしかしてドロップ品?」

「ああ、蝙蝠の飛膜だな。二枚で銅貨一枚だ」

「やっすい。まぁ一応拾うか」


 用意していた袋に飛膜を詰める。四匹倒して一枚しか落ちていないことも考えると相当安いな。


 階段をのぼり一階層に続く扉を開けると、エルの言ったとおり、明かり窓のある通路に出た。少し離れたところにダンジョンの出入り口も見える。


「一から楽しんで来いってことかな?」

「ダンジョンマスターの気持ちを広く解釈すればそうなるんじゃないの?」


 彩花ちゃんはそんなこといちいち聞くなと言わんばかりの顔だ。

 俺としては、最初から行けるのは有り難い。ここで一度戻ってもいいわけだ。


「戻れるみたいだけど、どうする?」

「アタシとしては問題ない。さっき食事ももらったからな。戻っても本当に死なないのか気がかりで、休める気がしないからな」

「私もこのままでいいわよ、どうせ後からいくらでも物資調達できるんだし」

「そっか、ならこのまま行こう」


 そうして歩きだし、一階層は三十分も掛からずに階段に着いた。モンスターがゼリースライムとサイレントバットと一角ウサギにエトセトラ……と動物に毛が生えた――むしろそれ以下の雑魚しかいなかったせいだ。地下道と違って罠が無いのも理由だ。


「弱かったなぁ。これなら木刀で戦ってみても良かったかなぁ」

「止めといた方がいいんじゃない? うさぎや蝙蝠が相手じゃ当たらないでしょ」

「……それもそうだね」

「アタシたちが来るのが早すぎたからか、いつもと出現する魔物が一緒だ。恐らく、変化があるのは中層からだろう」

「ふーん。まぁ時間もあるし道なりに行こうか」


 雑魚と言っても普通にすばしっこい。だから、やるにしても『射出』で牽制しながらになるので、だったら木刀が完全に蛇足になる。剣を使ってみたい気持ちはあるけど、急だったし仕方ないよね。


「にしても、一つも宝が無かったな」

「あ、そういえばそうね」

「確かに。いつもなら一つくらい見つけてもおかしくはなかった」


 ()来るからわざわざ片付けましたってか?

 いい迷惑である。


 二階層からはゴブリンやコボルドが単体で出てくるようになった。人型だからと言ってそんなに強いと言う事もなく、今まで同様スリングショット弾の餌食となる。

 当たった場所から噴き出す血を見て、あーこれ人に向けたらあかん奴だ。とは思った。


 三階層も人型の雑魚魔物たちが徒党を組むようになっただけだが、ここから罠が復活した。四階層は人型魔物の武装が強化されて、他の魔物が幾つか増えただけだ。

 マップで索敵ができる俺たちの敵になるような魔物は全くいなかった。


「あーもう五階層か。確かボス部屋があるんだよね」

「その前にセーフルームがある。階段を上った先の扉前の広間がそうだ」

「じゃあ、そこで一回休憩しようか」

「ああ」

「分かったわ」

 

 階段を登り切ってそこにあった広間に着くと、俺はキャンプテーブルと椅子、適当に水とおやつを出してまったりする。


「う〇い棒とか数年ぶりに見たわね」


 彩花ちゃんはそう呟き、


「な、何なのだこの甘いお菓子は!?」


 エルはチョコに対しテンプレ通りに驚いた


 水を飲んで一息つくと、ふと思い出して俺はギルドカードを取り出しステータスを表示させる。

 レベルは5だった。結構な数のモンスターを一人で倒したが微妙な数値である。ステータスも伸び具合からして、一般人には負けないって程度である。


「そういえば、エルってレベルどれくらい?」

「35だ。冒険者ならCランク程度だと自負している」

「一般人が必死に努力して30って言われてるから、割と強い方ね」


 話を聞いていくと、30を超えたらCランク相当で、Sランク冒険者が90ほどらしい。上限は無いと言われているが、百を超えた人間は歴史上一人もいないとか。

 そういえば、インプはBランク相当で人間でのレベル50以上のはずだから、本当なら相当の験値が入ったはずだ。ミニガン〇ンクを使ったせいか、経験値には入らなかったが。


「そうなのか、じゃあ当面の目標は100レベルかな」

「あっさりと言ったな」

「まぁ、スキルでレベルを上げることもできるだろうし、そんなに意味は無いけどね」

「はぁ!?」


 エルからしてみたらズルいだろうけど、俺としては大した事でもない。俺の強みはレベルじゃなくてスキルの強さだから。


「チッ。こっちはこれでほとんど限界が来てるのに、羨ましい限りだ」


 エルの舌打ちからの皮肉のコンビネーション。しかし、俺はダメージを受けない。


「まぁ気が向いたら何かスキルでもあげるよ。多分できるだろうし」

「スキルを与えるって何だ、ご主人は神にでもなったつもりか。魔王(笑)のくせに」


 エルの攻撃は急所に入った。俺は多大なダメージを受けた。


「次異世界の魔王(笑)に類する言葉を言ったら、絶対にエルには何もしてあげませーん」

「子供かっ! エルはこういう都合のいい時は媚びておいた方がいいわよ」


 彩花ちゃんのツッコミが心地いい。


「はっ。こんな童貞臭い男に仕事でもないのにこれ以上媚びられるか」

「どどどどうていちゃうわ!」


 今更だけどさ、エルの俺に対する好感度がマイナスすぎる気がする。



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