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1 異世界に転生したので他人を異世界に転生させたいと思います


 神様が言った――


「……死なせちゃったから何か欲しいものと一緒に異世界転生させたる」


 やったぜ!


「じゃあ、チートなスキルを所望する。ハーレムが出来て、なにも困らないくらい強いやつ」

「改めてそう言われると難しいな……なら、そのチートを自分で作れるスキルをやる」


 やったぜ!!


「サンキュー神様! 俺、絶対信仰心は持っておくよ」

「そうか、別に無くてもいいが……」


 ――そこで視界が暗転した。




 再び視界に光があふれる。

 俺は目を開けずとも悟ることができた。


「異世界きたぁああああああああああああ!」


 夢の中に出て来た存在を無意識に神様だと信じられたように、ここは元いた世界ではないとはっきり分かった。

 俺は異世界にこれたことでテンションがうなぎ上りの滝登りで龍だった。


 ええと、異世界と言えば、冒険、ハーレム、ダンジョン、魔王、魔法、国盗り、ええとそれから……まだまだいっぱいあるな。 

 やりたいことはいくらでもあって、それを実現する力も手に入った。


「あん? 手に入ったよな?」


 特にチートスキルを作れるようになった気がしない。


「とりあえず適当に試してみようか。まず何を作るかだけど……」


 辺りを見回すと、一部遠くに見える山々を除くと地平線まで続く荒野があるのみだ。急に吹いた風が心に冷たく吹きつける。

 この世界に人間が俺一人って事は無いだろうか? そんな疑問に駆られたが、まさかそんな事は無かろうと首を振る。


「と、とりあえず情報が必要だ!」


 そこで思いついたのが、このテの話でよくある「一定の条件で情報を得られる」スキル。

 詳細はどんなのがいいかと思案していくと、あることに気が付いた。


「あっこれ本当に思った通りのが作れそうだ」


 考えを練っているだけで、何故か出来ることと出来ないことが分かったのだ。

 鑑定をするスキルで例えば、「見たものが何か、直感で分かる」スキルは無理そうだが、「見たものが何か、視界の端に表示される」スキルは作れる気がするのだ。

 どうやっても知り様が無い「出来るかどうか」が分かるという事はつまり「作ることができる」という事だ。


 俺は作りたいものがある程度頭の中で固まったので、景気付けに叫ぶ。


「スキル生成!『マップ』!」


 声に出すと同時に、急に頭が重たくなる。

 イメージとしては張り切って徹夜でテスト勉強した時の感じだ。


「これはMPが減ったとかそんな感じなのか?」


 そんな独り言を呟きつつ、『マップ』を使う。

 すると、視界の端に周囲三キロ程の地図が表示される。それが見える位置をタップすると地図が拡大されるが、最初に見えていた範囲以外は灰色になっており最寄りの町のある方角に矢印が掛かれているのみだ。


「ふむ、本当に想定通りの性能だ」


 『マップ』によると、最寄りの町は北東にに十キロほどにあるようだ。

 さて、どうやってそこまで行こうか。――そうだ、バイクで行こう。


「スキル生成!『乗り物』!」


 スキルが簡単に作れることに味を占めた俺はさらっと新しいスキルを作る。

 スキルを作った反動なのか、重くなっていた頭に軽い頭痛が重なる。


「このくらいなら何てことないな。よっしゃバイク乗るぞ!」


 さ

 少し前まで落ち込んでいた心はとっくにどこかへ消えてしまったので、俺は再び龍テンションとなり、こんどは風となる。


「ヒャッハー!! 行くぜ行くぜぇ!」




―――数分後。


「ああああ、もうだめだ! ケツが痛い!」


 舗装されていない荒野での走行は体に堪えた。多分、無免で適当な運転をしているのも理由の一つだろう。

 一度バイクをとめて降りると、そこで気分が落ち着いてきたからか、再び頭痛がやってくる。


「ああもうだめだ。寝る。寝床は……キャンピングカーでいいや」


 俺はバイクを消してキャンピングカーを出現させると、のそのそと上がり込んでベッドに突っ伏すと、直ぐに眠りについたのだった。









「そうだ、見張り役を作ろう。女の子――は現地で口説こう(未経験)。ここは、異世界物でよくあるナビゲーターだな。黒歴史になりそうな変な行動したらツッコミを入れてくれるようにしないと」


 そんなわけで、一度腰を下ろして考える。

 見た目は不思議な力で浮遊する……そう、妖精。丸くてふわふわでもふもふなやつ。いわば、ザ・毛玉。毛玉というかポンポン……綿毛的な?そんなやつ。


「スキル生成!『毛玉ナビゲーター』『魂召喚』」


 魔道具作成とかで作ろうかと思ったけど、自分しか持っていないという特別感を得る為にスキルにした。

 『魂召喚』は失意のうちに死んだ、浮かばれない魂を召還する為のものだ。

 そこで地球のサブカル知識を備える女性の魂を召還し、『毛玉ナビゲーター』として生まれ変わらせるのだ。嫌なら地球に返すか、もう一度別な世界に転生させてあげるから多分倫理的にも大丈夫だ。

 ナビゲーターとは言っても、自分の思い通りの事しかしない機械では味気ないからな。やっぱり、少しでも生きていた人がいい。


 ぶっちゃけ、この時も未だテンションが高すぎて思考がぶっ飛んでいた。


「では『魂召喚』」


 シュオォ――


 と、光って一人の女性が青いホログラムのように浮かび上がる。見たところ、顔は化粧込みで美人で俺より年上っぽい。


「え? あれ、草原? もしかしてあなたは神様? でもジャージだし……」


 俺を指してそう呟いた。


「似たようなものです。俺はこの世界に召喚された勇者で、えーっと……まぁ何でもいいか。今ならいろいろ条件付きだけどこの世界で俺と旅が出来るよ」

「い、色々って……?」

「そりゃもう色々です。……ぐへへ」

「すみません無理ですやめて帰してくださいお願いしますあなたみたいな赤の他人ににして差し上げられることは何一つありませんごめんなさい」


 必死に否定された。まぁついうっかり下心が顔に出ちゃったしこんなもんだろう。

 それでもどうしてだろう、心が痛い。

 初対面でも、人に拒絶されるのは中々つらい。


「ああ、ごめんね。それじゃあこの後どうする? 地球か異世界に転生する? 天国的なところに行く? 無に還る?」

「んん? 選べるの?」

「俺ぐらいになるとね、神様じゃなくてもできるの」


 俺は小声で「スキル生成『魂転生』」と呟く。効果は俺が召喚した魂に限り、任意の場所に転生させるものだ。


「あーでもなー、さっきいろいろ言われて傷ついたからなー。あと三十秒くらいで決めないと間違えて無に還しちゃうかもなー」

「ちょっ! あーまってごめんなさい。あなたの事は他人だけど……えっと、顔だけはそれなりに良い感じだからえー……時間が無い!? 異世界に転生でお願いします!」

「はーい、じゃあさよならー」


 そう言って、俺は手を振る。


「は、はい」

「『魂転生』」


 ……女性は苦笑いで手を振っていた。


 ふぅ。疲れた。年上の綺麗な女性と話すって緊張するなー。でもあんまり低年齢だと、ナビゲーターとしてふさわしくないだろうしな。


 転生させるとは言ったが、実のところ送ったのはこの世界だ。他の世界でもいいが、正直面倒だったので仕方がない。ここも異世界であることには変わりないしな。

 でも、傷付いたとはいえ少し意地悪しすぎた感はある。


 実際にやってみていくつか問題が浮かび上がったな。とりあえず、召喚された人に話す言葉を決めておかないと。それと、それっぽい場所と服。

 先に場所を整えようか。


「スキル生成!『携帯できる家』と『家具生成』」


 『携帯できる家』の基本的な内容は小屋を生成できるというだけのスキル。内装を追加したり、増設したりすればそれを維持して持ち運べるという設定にした。増やせば増やすだけ進化するスキルなのだ。

 最初は面倒だが、最終的に中身を想像せず毎回作れるようになるから、『家生成』とかを作るよりか便利になるはずだ。


 スキルを使って小屋を生成する。


 ただの小屋だ。強いて言うなれば、木製の山小屋って感じだ。

 中も外から見たまんまである。小さい窓と木目の壁と床と天井があるだけだ。


「出て来い真っ白い壁紙。それと、接着用の糊」


 これは『家具生成』のスキルによるものだ。屋内で使うなら何でも出せるし、出したものは自由に消せる。物だけだぞ。


------------


「意外と大変だった。よく考えてみたら、この壁紙を使うのは最初で最後だろうから、ひとまず『家生成』を作るんだった」


 一時間たったが、まだまだ終わりそうもない。少し浮いたぐらい気にしなければいいのだが、やり始めると気になっちゃう。


 そんなわけで無駄だった一時間を犠牲に『家生成』で小屋が出来た。『家生成』スキルは、悔しいので『エディット』で消しておいた。作るのは少し疲れるが、消すのは簡単だ。


 真っ白い部屋の中、『家具生成』で出した椅子に座り、同じく出した机にメモ紙とペンを置いてなんて言うか考える。


----数分後----


「よしできた。改めてバンバン召喚しちゃうぞ」


 メモ紙を残して出した家具を消し、改めて神様が座りそうな椅子を出す。金で縁取られた赤い豪華な椅子だ。どっちかって言うと王様っぽいな。

 最後にタキシードを出してそれに着替える。……あんまり似合ってないな。

 まぁいいや。雰囲気だけ出てればいいよね。


「では、二回目の『魂召喚』」


 青いホログラムのように出てきたのは女性には見えないぼっさぼさの長い黒髪と、ダサいパーカーと短パンに身を包んだ女性だ。胸があるから多分女性だ。

 懐かしい記憶がよみがえる。将来的に俺もこうなるんじゃないだろうかと内心恐れていたものだ。


「ひっ! ここは――――」


 声が小さくて最初以外聞こえない……。面倒だから異世界に送ってあげよう。


「『魂転生』」


 ふっと女性の姿が消えた。

 さて、気を取り直してもう一度だな。



------------


「『魂転生』」


 これで十五回目だった。うち四人は地球に帰り、一人が無に還って残りは異世界へ旅立った。異世界大人気である。サブカル好きの人を召還している弊害だろう。

 代わりに天国は在庫が残ってるレベルだ。まぁ天国の場所なんて知らないから、その方がありがたいけど。


「あぁぁ。疲れたー。今日中に近くの町まで行こうかと思ってたけど、今日はこの辺で寝て、明日向かうとしよう」


 その為にも今日中に適合者を見つけ――あっ、


「その為にも、今日中に適合者を見つめねばな(キメ顔)」



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