みどり
「あ―、あ―、沈黙通しね。何か考えることあるのか、みどり?」
アジトへの行く道で赤彦さんと肩を並べあるくわたしは自分の思考に浸るふりをみてから、彼は問いだした。
質問の渦に囚われる目で赤彦さんに向けると、向こうは優しく微笑んだ。
「そんなに悩まれるの?何があったら、わたしに頼れよ。」
うん、元々そのつもりですが。……?
「あの、なんで兄さんは『わたし』を使うの?」
一瞬石化した赤彦さんを目に映ると、その問いに後悔しました。聞くべきじゃなかった。
「やっばりみどりも気付いたね。キャラ作り、失敗でした。知り合いにも言われたことがあるのにな。」
「いや、なんとなく口にしただけですよ。あんまり気にしないでね、兄さん。別にお前が犯人だっていう絶対的な証拠ではあるまいし。」
赤彦さんはわたしを見ずに地面を目をやった。
「兄さんは完璧過ぎて、ずっと負い目を感じるわたしにとってむしろ親近感を募るのさ。落ち込まないでよ。」
「本当?」
縋るような目で見返した。わたしは力強く頷いた。
「ありがとう、みどり!」
変なテンションに乗った!これこそキャラ崩壊じゃないか?ああ、赤彦さんにイメージに罅が付いたかも。
「なに?朝から兄妹揃うって?」
加久良さんだ。
「後付いて来たのですか、加久良さん?」
「そうですよ。赤彦はとっくに気付いたね?なのに、無視した。この薄情もの!」
わたしの右に並べた加久良さんは赤彦さんを一瞥し、不満を吐いた。隣の赤彦さんの口角が少し曲げるどこを見た、このひと、ちょっと意地悪いかも。
「あれ!」
加久良さんはちょっと口を開け、あるどこに目を向けじっと見つめた。
ええ?わたし?その視線を辿ると、どうやらわたしの頚のどこに止まってるらしい。
えっと、なにが付いてるかな?
「あの、加久良さん?」
「そのペンダントの色はいつもより深くない?」
何かと思えば、ネックレスか。うむ、自分の頚に掛かったそれに目をやると、あんまり区別がわからなくて…
気がつけば、赤彦さんもそのペンダントに注目しているのだ。
変な光景ですね。わたしの頚が左右の視線に囲まれ、ちょっといやな気分になった。
「そんなに気になることですか?光が照らす方向が違うと、色も変えるかも…」
「それもあるが、加久良の観察力だけは評価できる。たしかに、いつもと違うな。」
赤彦さんまで…って、なんか先思い切り加久良さんを認めた。
「まるで生きているように光ってる。」
ものが生きているか?うん、確かにフウンはそれにあたるな。まあ、ここに来る前にあんまり意識していなかったが、楽羽との再会でやっと分かったことだ。
ちょっと待ってよ、確かに赤彦さんは楽羽のキーホルダーを彩くんを持っていても大丈夫だからって言ったね。それは分かるとか自分の異能とか、まさかフウンは既にそのキーホルダーから離れて、別のものに付いたのかな。まさか……
と思いながらも、わたしはペンダントに目を移した。もしフウンがこのペンダントに付いたとしたら…加久良さんもわたしと同じフウンのことを知っている、なら、頼むから、ペンダントを見逃してくれ。
「まあ、多分、このペンダントが綺麗過ぎて、ぼくが惑わされただろう。今日は特別に輝くに見える。もう、いいや。」
加久良さんは意味深の眼差しを送りながら言った。なんだ、良いタイミングじゃん。この人、心読みじゃないのね。
例の公園についたわたし達3人は、二段式転送によって、アジトに到着した。
これで三度目ですよね。さすがにもう慣れた。
「ぼくは品物の置き場に行くので、加久良はみどりを連れて先に会議室に行ってくれ。」
赤彦さんの姿は左から三番目の門に消えるのを見送ってから、加久良さんはそのとなりの門を開げた。
会議室に先客がいった。爽やか微笑むなつみさんとポーカフェイスの夏斗くん、対照的なふたりは既に席に着いた。
「なる程、わたしの誘いを断って、みどりちゃんと一緒に来るとは…」
なつみさんはわざとらしく頷いて言い出した。
「違います。兄さんとの楽しい散歩に加久良さんの待ち伏せに出くわした、わたしたちは被害者です。」
断然な解釈に加久良さんは泣き声で呟いた。
「ひどい…」
加久良さんの呟くに背を向け、先頭に思いついたことをさらに考え込んだ。
もしフウンはわたしのペンダントについたとしたら、どうやって楽羽に導くのかな。もちろん、あっちにもこれと瓜二つのペンダントがあるが、問題はフウンもあっちにいけるのかな?わたしの場合は両方に言ったり来たりできるのは精神だけだと思うが、フウンが実体がないが、わたしとも微妙に違うのような気がする。……まあ、フウンはこのペンダントにいるかどうかまだ不確かですが…
「残念ながら、その仮説不成立です。」
今のは?女の声。なつみさんじゃない、彼女はいま加久良さんと喋っている。脳に直接響いた声。
だれですか?異能者?ではこちの女の人はなつみさんとわたしふたりだけはずなのに…
「そう、その『わたし』です。」
……まだ響いた。ほかの三人の反応からみては、聞こえるのはわたしだけか。
「ごめんね、驚かすつもりはないの。ずっとあなたに話掛け続けているが、やっと届いたね。わたしはみどりです。」




