挿話 不運喰い 3
彼女は大丈夫かな、先週の今日はあんなことあったせいで名前聞く余裕もなかった。家は分かっても、唐突に行くこともなんかよくないと思った。今日の約束は忘れてないよな。もうすぐ帰る時間だ、どうか彼女をあのケーキ屋に現すように。
そう、今日も金曜日だ。帰り道におれはずっと考えてた。フウンから聞いた情報を纏めると、何か悪いことが起こようとする時、その濃い靄は必ずあらわす、なぜだかおれはその靄を見える。あくまで兆しをとらえるだけ、防ぐことも阻止するのも別の話だ。彼女が狙っているのは何か不可思議な力なようで、何かどうして彼女が狙われたのかについてのはさっばり分からないことだ。おれが彼女を間一髪で助かったのはフウンの助太刀のお陰でした。その時、フウンは彼女の不運を少し喰った。そのことも後からフウンが教えてくれた。
あれこれ考える内に、ケーキ屋の前に来ていた。ドアに手を伸ばそうと、内から開けられた。
「ああ、やっと来た。先回助けてくれて、ありがとう。今日はわたしの奢りという約束はちゃんと果たすつもりです。どうぞ、入ってください。」
突然目の前に迫る迫る彼女は元気そうで安心した。こぶし三つの距離で彼女はおれの目をじっと見つめた。って、ちょっと近い!
「ああ、ごめんなさい。わたし目が悪いです、めがねを掛けても至近距離で見るのが癖になってて…」
彼女はいきなり身を引いて距離を置いた。
「いや、別にいいのですが。」
おれって、考えることは顔に丸出しタイプだっけ?
「そういえば、お互いにまだ名乗っていないですね。」
「ああ、そうそう。言い遅れたが、おれは楽羽、よろしくな。」
「わたしは瑩、よろしくね、楽羽さん。」
「楽羽っていいよ。」
「ならわたしのこと瑩っていい。楽羽、遠慮しないですきなのは選んでね。さあ、今日はどれにしようかな?」
彼女は店のカウンターに沿って見ながら回り始めた。彼女はカウンターに粘るようにケーキを見ていたから。その様子から見ると、どうやらその至近距離で物をみる癖は本当らしい。変わった子ですね、もちろん悪い意味じゃなくて。
フウンのやつ、またなにかしようとしたな。まったく、キーホルダーなのに、わがまま過ぎるだろう。おれの鍵の束から離脱するフウンを片手の掌に収めた。
「どこ行くつもり?勝手なことをするな!」
最近なんか考えが直接にフウンに伝えるようになった。お陰でひとりことと誤解されることもなくなった。
「はなせ!おれ様は貴様をまもるつもりだ!」
「はあ――?!どうせ瑩のフウンを喰うつもりでしょ?」
「まあ、そう思ってもいいさ。彼女とあんまり関わるな、その不運さはお前にどうにもならないのさ。先回は運がよかったことで、今度はうまくいく限らないさ。」
「なに?また何かいやなことが起こるの?」
「たから、言ったじゃないか、彼女は何かに狙われてる、一緒にいると、紛れるぞ。」
「フウンが瑩の不運を喰うと、助けになるのか?」
「仕掛けてくる攻撃は防げないのだが、その10%くらい帳消しできる。」
「おお、すごいじゃん、フウン様。」
「バカにしてんだろう、貴様?だいたい、なんで知り合ったばかりの彼女を救いたいのか?」
「別に理由はないよ。気まぐれかな?一度助けた、二度もあるでしょ。」
「まあ、貴様のような人間、嫌いじゃない。」
「なに、なに、その突然の告白?」
「おれ様はたくさんの人間の不運を喰った、人が違うだけに不運の味も違う。不運の味とその人間の生き様、比例しているんんだ。前も言ったが、貴様の不運が味がいい。だから…」
……そこ、褒めるどこっしょ?なんで沈黙?フウンのやつ、素直じゃねぇな。
「そうか、じゃ、瑩のは?」
「貴様のとは比べになれる程、それなりに旨いが。」
「あ――そうか。結局おいしいから、喰いたいだね。」
「……うむ、否定できない。」
俯いた呟くキーホルダー、しかもおれのガキ頃そっくりの関節人形が目の前で動いている。ああ、この不思議さは誰かとシェアしたい、でもこういう話はいまだにおれ一人の中で秘めてほうがいいのは得策といやでも分かる。こころが痒いな…
「あくまて瑩を助けるためだ、フウン、喰い過ぎじゃ駄目だよ。」
「分かってるよ。」
「フウンがいいな、おれが瑩と仲良くになったら、味が違う旨い不運を二種も喰える。もちろん、その分にちゃんと働くよな。」
「おれ様を舐めるな!」
「あら、楽羽も決めたの?どれにするのを。」
一回り終わった瑩はおれの傍へ歩いてきた。
「ああ、おれは瑩と同じにしよう。」
「うん、分かった。ちょっと待ってて、取りに行くから。」
やっばり瑩にも注意して方がいいかな、彼女は自分が何かに狙われてるのは分かるのかな?
店から出ると、先週と同じ道を辿ったおれたちはいろいろ話題で盛り上がった。趣味と好きな食べ物とか仕事の愚痴さえ話し合えた。もう直ぐあの交差点だ、ちょっと緊張してきた。
「あのさ、瑩は道を渡るとき気をつけてよ。」
「うん、先週のこともあったし、気をつけるよ。でも、先週の週末はそのトラウマで怖くて家に丸二日篭ってた。」
「今日はおれが家まで送るよ。」
「いえいえ、そんな、楽羽に迷惑かけたくないよ。わたしは迂闊だったかな、前にも何回そんなことがあった。」
「前もあったのか?」
「うん。一昨年かな、この交差点でタクシーに轢かれて、右足を怪我した。当時大したことがないと思った、医者へ行かなかったが、後遺症が残した。前のようにうまく踊れないんだ。いまでも時々後悔するよ。去年は家で左足の親指が怪我した、ちょっと酷かった傷だから、イカ月入院した。なんかついていないね。」
いまは笑いながら話してるが、その当時はさぞ苦しかったな。
待ってよ、ひょっとして瑩はあの時既に狙われてたの?
「ほぼ確定だな。」
「フウン、おれたちの会話を聞いたのか?」 「うん。もう着いたぞ。やっばり忌々しいな、この交差点。」
「何言ってるの?ここはおれとフウンが出会ったどこですよ。」
「貴様がおれ様を捕まったどこだろう。」
ちらっと隣に信号を待つ瑩を見ると、やっばり怖がってるな。カバンを握る手が小さく震えてることが自覚がないらしい。
「やっばり送るよ、今日は。このケーキを奢った礼として。」
ちょっと信号を変わった、瑩の袖を小さく抓んで歩きだした。彼女はおれのリードに合わせ足を踏み出した。一応その怪しい靄に警戒したが、どうやら今回は外れ、無事に渡した後も靄はあらわれなかった。
それをきっかけで、おれは瑩と親しくなった。




