挿話 不運喰い 2
今日も金曜日、フウンがいるせいかも、普段よりついている気がした。
ああ、フウンというのは、このキーホルダーについている不運喰いのこと。フウンの話によりますと、不運喰いとは文字通り人の不運を食うもの。まあ、おれから見れば正体不明の不思議生き物かな?
そうそう、このキーホルダーですが、おれのガキ頃の大親友がくれた手作りの関節人形。成人の人差し指ぐらいの長さですが、精巧に作られた関節は人間のように曲げれる。ちなみに、それはガキ頃のおれをモデルに作ったもので、あの時のおれにそっくりだった。あいつ、手作りは上手だな。このプレゼント以来会ったことがなかったが、きっとどこかで快適に生きているだろう。それから、このキーホルダーはいつも持ち歩いた、どうしてこんな大事なものをフウンの依りにしたのかな、その時魔にさしたとしか考えられない。まあ、フウンもおとなしいし、いいか。
フウンを傍に置いたのは別にほかの人の不運を食われるのは守るためな建前じゃなく、ただ面白かっただけ。一人暮らしのおれもこれで話相手ができたことで、悪くはない。あきらかに人間に遥かに離れたものですが、フウンは人間社会のことよく知っていた。たぶん、あちこち、不運を探しに行く時得た経験だろう。不運が食われ過ぎると、ひとにとっていいことではないと言うが、フウンは適切な量を取ってると言う約束は守ってるらしい。おれにとって、これは良いことかも、ついていない金曜は普通の金曜になったから。
今日の帰りにもあのいつも寄っていくのケーキ屋にいった。やっばり、あの子相変わらず、選択に迷っている。
「おお、にやにやしてるぞ、楽羽!なんだ、彼女が目当てか?」
不意にフウンが話しかけてきた。そう、おれたちはもうこんなに仲良くなった。小さな手を振りながら瞬いた関節人形キーホルダー、これについたフウンは表情や仕草が増えた、少し可愛かった。まあ、おれの大親友のお陰さ。でも、おれの似顔で動く人形…妙な気分だな。
ちょっと考えるうちに、パァーという音に店の全員の注意をひかれた。全員といっても、店員さん二人、あの子とおれだけ。ああーーフウンのやつ、また勝手なことを…おれがぼっとしていた間に、フウンはあの子の足元に転げた。あいつに自由させ過ぎかな、もう!
「このキーホルダー、可愛いですね。はい、どうぞ。」
あの子がフウンを拾い上げ、おれに差し出した。
「おう…ありがとう。」
真正面で目が合うのは初めてでした。ひと目で綺麗とか可愛いとかのタイプじゃないが、笑顔に似合う子だと思った。現におれにの目の前で微笑んでる。めがねが掛けている、目が悪いか、ただの飾りか分からないが、結構似合う。目と鼻と唇のバランスはうまく取ってる、それ程立体的じゃないが、その横顔を見るのは好きなんだ。やっばり髪は長いな、尻まで届いてた。束ねた姿も、編んだ姿も見たことがあるが、今日はそのまま広がっていた。
手を差し伸べ彼女からフウンを受け取った。
「あなたにそっくりの人形ですね。」
笑みを深め彼女はフウンに指差して言った。
「ああ、見えます?ガキ頃のおれさ。」
「ええー、いいな。特注ですか?完成度高いですね。」
「いや、達からのプレゼント、手作りさ。」
「すごい!職人さん?」
目を丸くしきらきら光ながら聞いて彼女をみつめながら、内心で溜息をついた。
「ははは、今はどうかな?長い間連絡が取れなくて。手先が器用なのは事実さ。」
そういえば、あいつ、いまどうなったのかな?この情報社会で知人を探すのはそれ程難しいことじゃないが、結局おれは薄情やろうか?いやいや、がき頃貰ったものは今も大事に持ってるぞ、十分情があるじゃん。まあ、いま変な物の依りになったのですが…
なんで始めて声をかける子にあいつのことで盛り上がってるのかな。
「あの、いつも金曜日にここにくるのか?何度も見かけたことがある。」
彼女が言い続けた。
うそ、逆ナンパ?人を言えることじゃないが、おれもあんたのを何度もみかけたのよ。
「うん、金曜の夜、甘いものは定番さ。」
できるだけ爽やかな笑顔を広げた。
「そうですか?うん、うん、分かる分かる。金曜日の夜は一番気が落ち着くね、甘いものを食べると、一週間の仕事に溜まった疲れはとれそう。」
「同感です。」
なんか普通に会話は繋げた。不思議ですね。なんだ、フウン、そんな目でみるな。手の中のフウンは目を細めおれを見て悪戯っぽく唇の角をちょっと上げた。
「この店に入って、一分も経てない内にケーキを選び終わったあなたは羨ましいよ。どれにしようかいつも悩んでるわたしは五分でも決めないのに。」
それはとっくに知ったのよ。
「そうでもないさ、長期戦は苦手で、適当な新品を漁るという算段だ。それにしても、女子大生と思ったが、働いているのか?」
「うん、社会人です。ちなみに、今日のおやつはもう決めたのですか?」
「どうかな?君は?」
「迷う中。」
二人が自然に肩を並べ店内で見回り始めた。おれたちどちらも常連だから、店のおかしは大分食べたことがある。見慣れたケーキたちを一つずつ見送って、やった新しい発見に目を奪った。彼女も多分おれと同じのを見ているのだろう。
「これはどうかな?」
「これにしよう。」
二人揃って小さな兎に乗せるロールケーキを指差し同時に声が出した。
驚きも僅か一秒、おれたちは笑いあった。結局同じケーキにした。会計の時奢ると堅く言い出したおれに拒みきれず彼女は「来週わたしの番だからね!」と強く押して約束された。これで来週の金曜日も会えるということね。
ケーキ屋から出てからしばらく一緒に歩いた、おれはいつも通す交差点はどうやら分かれ道らしい。そうだ、先週もここで靄が現れ、フウンを捕まったな。と思ったその時まったくの風景が再現した。
「楽羽、気をつけろ1」
不意にフウンの声が頭の中に響いた。
「ああ、大丈夫、もう一匹のフウンを攫もうか?」
「バカ、そうじゃない。彼女のことだ!」
ええ!?彼女?隣に立っている彼女に目を向けると、先週のおれのようにすごく濃い靄に包まれその姿さえ見分け難くなった。
「あの、靄が濃くて、道渡るとき気をつけてください。」
困惑の顔をあげた彼女はおれをじっと見つめて問い返した。
「靄ですか?どこ?見えませんですが。」
まさかこの靄、おれしか見えないのか?
「では、またね。」
信号灯を変わったのを見て、彼女は渡そうとして、おれに別れをつけた。
「おう、またな。」と言い終らない内、忌々しい光出した車のへードランプを目の隅に囚われ、彼女の歩く方向だ。
「待って!危ない!!」
叫びと同時に素早く歩き出そうとした彼女の腕をつかめ、おれの方に引っ張った。車のテールランプは宙に弧を描いてすごく耳障りのブレーキ音をしながら急に止まった。
「大丈夫ですか?」
腕の中の彼女をいまでも気が失いそうな弱々しく真っ青な顔で小さく頷いた。
運転手さんも急いでこっちに駆けつけ謝った。どうやら車が急に故障しブレーキが利かなくなったらしい。これは運転手さんのせいじゃないというのはおれも理解できるが、でもそれだけの原因じゃないと思った。まだ震えてる彼女をほっとけなく、運転手さんと一緒に彼女の家に送った。もちろん、彼女の家まで知ったということをこっそり喜び余裕もなかった。
その後、運転手さんと分かれ、帰り道につくおれはいろいろ考えた。このことについて、フウンはきっと何か知ってる、後でちゃんと聞くと決めた。




