心強い味方
「わたしの目の前にいるのは瑩さんですが、鏡に映っているのはみどり様になりました。たぶん瑩さんの場合と同じでしょう。」
無月さんは鏡の前に置く古典風の花瓶に花を整理する手を止まずに答えた。
鏡の中に映る男の人をよくみると、無月さんに似ている所もあるらしい。優しそうな表情とか、身長とか…花を見る目元さえも暖かさを満ち溢れている。無月さんの目付きはもっと鋭いだと思う。彼はわたしの視線を感じたらしく、すこし頭を傾けて鏡の中のわたしに目を注いだ。わたしもつられて鏡の中の自分に目をやった、やばり現実感がないな。
彼と無月さんはまだ共通点があるとしたら、彼女とわたしは全然違うと言い切れる。あんなおとなしく一目見るだけて分かるようなお嬢様が、わたしは到底真似できない。多分何度も生まれ変わっても、あんな風になれないだろう。まったく、どうしてこんな役自分に回したのか、最高級の皮肉じゃんないか!
「無月さん、その…キャラの記憶がありますか?」
「何で言ったらいいかな?わたしも明白な記憶が持っていません。ただこんな些細なことをする度に懐かしさが伝わってくる。花をアレンジするこたがないのに、手をつけるとこう自然に動き出した。不思議ですね。ああ、出来上がりました。ご覧になってください。」
「わあ--上出来!無月さんすごい!」
綺麗にアレンジした花々が麗しい花瓶の中に微笑んでいるように見えた。
「あの、無月さん、わたしここについての記憶がないよ。これからどうすればいいかな?」
わたしは俯いて呟いた。この先への不安がごろける雪球のように段々大きくなった。
「瑩さんは本当に考えるを好きですね。それはそれでいいことと思いますよ。でもマイナスの感情に陥るのはよくないです。なりうる人はなすべきことをなすと言う諺があるじゃないか、そんなに不安にならないでください。状況を観察しながらすこしづつ調整しましょう。わたしも出来る限り支えますから。正直、名前を呼ばれた時はこっそり嬉しかったのです。」
無月さんの真摯の笑顔と言葉に感動しました。よし、やってやるじゃんないか!
「やる気が出たのですか。よかった。これから、わたしのことを葵と呼んでください、みどり様。」
どうやら、わたしの役のお嬢様はみどりと言う名前だった。
「先ず、わたしが把握した情報を教えましょう。心して聞いてくださいね。」




