第二話 ここどこですか?
「「って、ひどすぎでしょ!」」
同時刻に死んだ二人の人間、久代陽凪と三住綾寧はこれまた同時に目を覚ます。
「「あれ、ここどこ?」」
これまた同じ反応をする。面識すらなかった彼らだが、存外気が合うのかもしれない。
見渡す限りの草原、ということもなく、100mほど向こうには大きな城壁?みたいなものがある。確定しているのは、今いるこの場所は先程までいた場所ではないということ。日本ということはまずないだろう。
「ねぇ、あんた誰なの?」
綾寧が口を開く。ぽやーっとしていた陽凪は隣の綾寧に気が付かなかったようだった。綾寧に声をかけられて初めてその存在を認めたようだった。
「あ……、こんにちは」
「こんにちはじゃないでしょ!まったく、他に言うことあるでしょうが」
「まぁ、そりゃあそうだね。俺は久代 陽凪。今年から大学生。世界で一番好きなのは妹と愛犬リリー。嫌いなのはグリーンピース」
朗らかな笑みを浮かべながら良く分からない自己紹介をする陽凪。綾寧は青筋をうかべている。
「…なにこの年上感のない年上……っ。私は三住 綾寧。今年で高校一年よ」
そっかー、とか聞いてるんだか聞いてないんだか良く分からない返答をする陽凪。更にこめかみに青筋を浮かべる綾寧。
「というか、俺死んだって思ったんだけどなぁ」
陽凪の記憶は忌々しい赤いボールで途切れている。体が言っているのだ。お前は一度死んだ、と。
「……私もよ。確実に一度死んだはず」
彼女の記憶はタニシとフナでファーストキスを済ませたところで終わっている。どちらも大概ひどい最後だ。
「死んだのに、私たちは生きてる……ここは日本ではない……まさかっ」
「?なに、三住さん、どうかした?」
三住 綾寧という少女は、わりかしなんでもこなした。
勉強でも学年30位以内には必ず入り、運動神経もよく、体育祭ではリレーメンバーにも選ばれた。容姿は噂になるほどで、学年屈指の美少女としてよく告白されたりもしていた。
そんな綾寧にも秘密はある。
『これは、異世界転移ってやつではぁぁぁぁ!ktkr!wktk!』
重度のオタクであり中二病を患っていたのである。
『えー、どうしよ、私ってば異世界人?最強?無敵?チートな能力手に入れて世界取っちゃう?んでもってちょーうかっこいい王子とかと結婚しちゃって玉の輿的なぁぁぁ!?』
急に異常なテンションの上がりようを見せつけられた陽凪はぎょっとしている。ブツブツ聞こえる異世界転移やらチートやらは一体何のことだろう、と一人考えていたりした。彼はネットやらアニメやらには興味がないタチだったのだ。
「久代さん!」
「ひいっ!?な、なんでしょっ」
先程まで怒りすら見せていた綾寧は、目を別の意味でギラギラさせていた。
「私たち、チートで異世界で最強でウハウハな第二の人生かもしれないですよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」