人間なんて、結局変われない。
とてもとても
お久しぶりです。
「スバル?」
7年前と変わらない声や話し方で、彼は私の名前を呼ぶ。
ドキドキで前が見えなくなって、顔もすごく熱くなったけど、やっぱり何でもないふりで、平然を装う。大丈夫、大丈夫、テンパったらアウトだって、思いながら。
「やっぱりハル君だー!すごい久しぶりだねー!
高校卒業してからだから、4年?ぶり?」
本当は覚えてるけど、毎日ハル君のことを考えているけど。
4年と3か月ぶりだねなんて、そんなのは変態みたいだから、ストーカーみたいだから、まぁ言わないけれど。
「ほんとだねー、スバル髪伸ばしたんだー、似合ってるね。
最近どう?」
ハル君は何でもない風に、無邪気にそう言う。
最後に会った時の髪の長さ、覚えていてくれたんだ。
似合ってると、思ってくれて、私に対して、なにか感情を持ってくれたんだ。
それだけのことが、うれしすぎる。
彼氏がいるののに、元彼に対してこういうことを考えるあたり、やっぱり私全然変わってないなとはおもうのだけれど、ハル君の前では、変わった私というものを見せなくてはいけない。
ハル君にフラれたあの頃のまま、私の時間は止まってしまっているけど、
そのままだというのがバレてしまったらいけない。
私があの頃のままだと知ったら、ハル君の私に対する感情は、
あの頃のままの 嫌悪感だ。
「今ねー、実は小説家なんてやってるんだよー。
ハル君は保育士だっけ?」
「あー、うん。そうだね、保育士。」
ハル君の顔が少しだけ曇る。
「すごいじゃん、小説家!
えっ何書いてるの?」
鼓動は、変わらず早い。
心臓は痛い。
ふわふわと宙を浮いている感覚がして、
これが、夢じゃなければいいのに。なんて思うけれど、
彼の抹茶オレの氷が溶けて
カランっていう音が、頭に響いた。