金持ち男なので依存させた。ジャンの物語
『金持ち男なので依存させた』のジャンの物語です。よかったら感想下さい。
俺の名前はジャン・ダニエル。母が貴族で父が企業家のイギリス人だ。
父の仕事により、日本に来たのだが外国人ということもあり、大きな差別を受けたていた。
「死ね」「キモい」「消えろ」は当たり前、蹴られ、殴られ、お坊っちゃん育ちだった僕はそのことに衝撃を受けた。
「ねぇ!僕が何したの!?なんでいじめるの!?」
「特にねーけど、面白いくて、お前キモいから」
先生が注意しても辞めず、周りの子供は遊びでやっているのがつらくて、苦しかった、
一時期は死のうとさえ、考えていたけど、そんなとき彼女が表れた。
「こんにちは、ダニエルくん。私と仲良くしない?」
ニッコリと笑う彼女はそういって手を差しのべてくれた。
佐原 真由理。この子は目立った容姿ではないがよく見ればちゃんと可愛い子で、今に思えば計算つくした笑顔も、俺にとっては女神だった。
「僕と……仲良く…して…くれるの?」
俺は…当然のごとく彼女の手をとった。それから僕たちはよく遊ぶようになり、仲良くなっていった。
麻百合……マリは一言でいうなら小狡くて要領のいい子であり、人気者という訳ではなかったが、敵はいない子だった。
それは、俺にとっては憧れそのものであり、助けてくれて、慰めてくれたマリは俺にとっての神様になっていた。
「ダニエルくん……リカちゃん人形の服ってさ、可愛いよね~」
「うん!じゃあ、あげるね!」
だから、この行為は俺にとってはごく自然で……神様に対する貢ぎ物とか、友達へのプレゼント感覚で、この時は純粋にマリを信じて従ってた。
そんな日々がある程度つづいた日に、事件は起こった。
「ジャンくん!私と仲良くしよ!」
俺たちの目の前にいきなり表れたのは…酷く美少女な彼女だった。こんな女の子、学校で見たことがない。
「マリ……この子、知ってる?」
「聖条 真理亜ちゃんだよ。別のクラスにいる……って、臭い…」
マリは鼻を押さえて顔色を悪そうにしていた。
聖条 真理亜。すごい名前だし、一度も見たことないから、本当に同じ小学校なのかという疑問が沸いた。
そんなことはお構い無しに、真理亜という女の子はこういった。
「ジャンくん!私と仲良くしよう?大丈夫!私が守ってあげるから!その為にきっと、この時代に来たんだよ!」
何を……言ってるんだ?この子……?余りの意味不明さにマリに助けを求める為に横を向けば……マリは頭を抱えている。
「気持ち悪い臭い……ダニエル……この子と仲良くするの?だったら、私は君との縁を切るよ…」
マリは顔を真っ青にして、そんな絶望的すぎる台詞を吐かれた俺はパニックになる。
「ねぇ!?なんでそんなこと言うの!?やめてよ!!捨てないでよ!!」
涙ながらにいう僕は相当滑稽だけど、そんなことよりマリに捨てられるということの方が怖かった。
「大丈夫だよ!これからは、私が守って……」
後ろで何か真理亜ちゃんが何かを言ってるが、俺には何も聞こえなかった。そして、マリは俺を見やりながら…
「ダニエル……は私と真理亜……どっち選ぶ?……」
「勿論、マリだよ!」
そういった瞬間、マリの顔色はみるみるよくなり、そして何かをブツブツいう女に向かってビンタをかまし……
「ジャンに近づくな!!」
俺を背に、そう叫んだマリは本当に格好よくて、鬼神のごときだった。一方、叩かれた方の真理亜は顔を真っ赤にして…
「ハァ!?アンタみたいなモブの小悪党なんか、見捨てられるのが普通でしょ!?……いいわ!あなた何か消えてしまえ!!」
彼女は最後まで意味の分からないことを叫び、走って帰ってしまった。
「変な子だなぁ…」
ここまでならば、少し電波な美少女が検討違いの同情をしたってだけで終わるんだけど、異常が起こった。
「真理亜?だれそれ?キリスト教?」
次の日、マリは真理亜を忘れていた。いや、マリだけじゃない。学校のみんな全員が真理亜を忘れていたし、資料もなかった。
若干の違和感を残すのみで、真理亜がいたという事実は存在しない。
「ジャン?どうしたの?」
「ううん……なんでもないよ」
まぁ、マリが無事なら僕はなんでもいいけどね。
だから、悪い夢でも見たんだと思っていたのだが、そうは問屋が下ろさなかった。
「ジャンくん!貴女を助けにきたわ!」
「ジャンは騙されてるんだよ~?」
「麻百合はね、本当は貴方の事をなんとも思ってないんだよ?」
第2、第3の真理亜が表れてきたのだ。どういう事かと思うが、本当に何人もの真理亜が表れたんだ。
何かしらの法則があるらしく、「消す」と言ったことや「モブ」等の言葉を言った次の日に、真理亜は姿を消し、僕以外のみんなから記憶は消える。
同じ顔なのに、性格は違う。存在は消えるが、何かしらの爪痕を残す。
例えば……
「僕はさ、マリの性格が最悪だって分かっているんだ」
「うん、そりゃ長年いたらそうなるよね」
4人目か5人目のときの真理亜が『マリは貴方の金にしか興味がなくて、本当は酷いやつ』と言って暴かれた事実だが、彼女は『長年の付き合いで自然に』ということになっているのだ。
自然なもんか。マリの本性が暴かれたとき、自殺まで考える程、絶望したのを理解してるのだろうか。
なのに、僕だけが依存して許してしまう。
「マリ……僕はさ、マリが好きだよ」
「私も結構好きだよ」
『真理亜』が表れ、その度に格好よく撃退するマリの姿をみて、好きにならない筈がない。依存しない筈がない。
僕だけが依存して、僕だけが気持ち悪い程に好きになっていく。マリには何の記憶も残らないから、僕のことは理解出来ないだろう。
それが……酷くズルいなと思った。
「マリ……一緒の高校行こう」
「いやだよ、私は公立にいく」
「学費なら俺が払う」
マリはかなり渋っていたが、俺や両親に説得されて、一緒の学園に入ることとなった。
俺は元々の成績のよさや体格や外見もあったのだろうが、『ストーリー』通りに俺の学園内の地位は高く、神様とまで言われる程だった。
一方マリは、持ち前のコミュ力や小賢しさで立ち回り、当初はいじめには合ってないが、貧乏な家柄と俺が側にいることでマリは孤立した。
そして、いつの間にか表れる、学園の『真理亜』が影でマリをおいつめていた。
気丈にふるまう彼女だが、当然に精神的にはまいる。
「ジャン……助けて…」
「勿論だよ!」
貧乏なマリとは無縁の名門校に誘ったのは、マリを孤立させる為だった。孤立して、僕にしか頼れない状況になれば、必ず依存する。
だから、もっと酷い目に会えばいいと思う。
「今日は何の嫌がらせ受けたの?」
「ん~…靴を隠されたりとか、画鋲入ってたりとか?」
「そっか、じゃあ対処するよ(今回の『真理亜』は手緩いな)」
泣き叫ぶくらい酷い目に会えばいいのに。それでみっともなく、僕にすがりつけばいい。そしたら、僕は君を一度捨ててやる。そして、うんと優しくしてあげる。
真理亜が表れる度に、毎回、捨てられるんじゃないかという恐怖を君も味わえばいい。
そして、恐怖の後に優しくされる人間がどれ程依存してしまうか、知ればいい。
「ジャン?どうしたの?」
「ん?何でもないよ。単にマリが好きなだけ」
「うん、私も結構好きだよ」
嘘つき。
本当は僕のことなんて好きじゃ無いくせに。
単に僕の金目当てのくせに。そして、最近はそれすらもどうでもいいと思ってる癖に。
あぁ、でも俺はそんなマリを愛するよ。どんなマリでも僕は愛してる。
だから、君も僕に依存して。うんと酷い目にあって、傷ついて、泣いて、苦しんで、僕にすがり付いて。
その為ならば、何だってするよ。
もうすぐ、道具が駒をつれてやってくる。それはそれは使い勝手のいい道具だ。
マリと一緒にご飯を食べていたら見慣れた、人工物の気持ち悪い道具が表れ、テンプレ通りにこういってくる。
「ジャンくん!!貴女は騙されてるわ!!」
『真理亜』を利用して、じわじわと依存させてあげるからね。僕はずっと君の味方でいてあげるから安心してね。
さて、1753回目の『真理亜』は僕のマリをどれ程苦しませてくれるのかな?