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革命のデゼスポワール  作者: 宗篤
第一章 王立陸軍士官学校
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第三話 待宵月の夜

 ヴィクトールの攻守の切り替えの早さに、残る二人の上級生のどちらもが付いて来れなかった。

 牽制で軽く放ったジャブに釣られて相手の意識が上に集中するのを確認し、ヴィクトールはすかさずがら空きの脇腹に腰の入った強烈な連撃を叩き込む。

 完全に油断して柔らかなままの筋肉にヴィクトールの拳が深々とめり込んだ。

 胃の内容物が押し出され食道を逆流し、上級生はむせこみながら嘔吐し倒れる。

「これで三人。残るは一人」

 ヴィクトールは三人目もしばらくは戦闘不能に陥ったことを確認すると残る一人に目を向ける。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

 半ば自暴自棄になった残る一人は自らを鼓舞するために雄叫びを上げてヴィクトール目掛けて突進する。

 ヴィクトールの拳闘技術を警戒し、体を低くして腰目掛けて体当たりを狙う。タックルで倒してしまえば自慢の拳も封じられると考えたようだった。

「狙いは悪くない」

 ヴィクトールは体勢を低くし飛び込んでくる男のその頭に膝を合わせて迎撃する。

 だが男はヴィクトールが相手をした四人の中ではもっとも喧嘩馴れしている男のようだっだ。瞬時に顔を背けて決定打を加えられることを逃れえる。

 だが完全にかわせたわけじゃない。ヴィクトールが擦り付けるようにそのまま足を振り切ったことで、強い衝撃が上級生の頭部に加わる。

 一瞬、記憶が飛んで力が抜けた上級生の無防備に晒された後頭部の付け根にヴィクトールは拳を振り下ろす。

 強力な一撃を急所に加えられて、意識を失った上級生は体を痙攣(けいれん)させながら土を舐めるように大地に伏せた。

 ヴィクトールはここでようやくアルマンに気を回す余裕が生まれた。振り仰ぐと、ちょうどそこではアルマンが相手をしていた上級生を沈めたところだった。

「なかなかやるじゃないか」

「・・・一人で上級生を四人も倒してしまうような男に言われたくないな」

 余裕の表情のヴィクトールに対してアルマンは肩で大きく息をしながら返答するのがやっとだった。

「貴族だって話だったけど、君は妙に喧嘩馴れしているね」

 貴族は(たしな)みとして剣術を習い、狩に使う銃や弓にも習熟することはあるかもしれないが、素手で格闘することなどまずありえない。

 だがアルマンの見るヴィクトールはそこらの市井(しせい)の酒場でくだを巻いているような、年中喧嘩に明け暮れているゴロツキよりも喧嘩馴れしているように見えた。

「まぁ・・・ちょっとね」

 ヴィクトールは当初、(さか)しくも教官に告げて事態の収拾を図ろうとしたように極めて計算の働く功利的な思考回路の持ち主であったが、上級生の言葉に激昂して実力行使に切り替えたことからも分かるように、同時に極めて喧嘩っ早いところがあった。そのせいもあって地元の街ではたびたび悪童どもと諍いを起こして乱闘を繰り返したことで喧嘩の腕前ではめったな相手には引けを取らないだけの実力を備えていた。もっともそれが成績優秀で養父母自慢の種であったヴィクトールの唯一の(きず)であり、養父母にとって大きな頭痛の種ともなっていたのでもあるけれども。

 アルマンと会話する間もヴィクトールは足下で(うめ)く上級生に油断なく視線を走らせて警戒を怠らない。

「お前を救出するという目的は達した。長々とこの場にとどまり誰かに見られると後々面倒だ。こいつらが回復してまた襲い掛かってくるのをぶちのめすのだって楽じゃない。早めにずらからないか?」

「あ、ああ・・・」

 アルマンの返事を受けて歩き出そうとしたヴィクトールに突然後方から何かがぶつかった。腰に大きな鈍い痛みが走る。

 上級生全員に気を配っていたはずだったが油断したかと、ひやりと背筋を冷たいものが走る。

 だが不思議とそれ以上、更なる攻撃が加わる様子は見られない。ギュウギュウと腰を締め付けるばかりである。

 振り返り見るとそこにあったのは上級生の姿ではなく、淡いピンク色をした髪の毛を持った小柄な少女の姿だった。制服の袖を見る限りはヴィクトールと同じ一年であるようだった。どういうわけだか顔をぐりぐりと擦り付け、ヴィクトールの腰に一心にしがみついていた。

「すっ・・・」

 この緊迫した場所に似合わぬ、まるで頭頂部が外れてそこから発せられたような、ねじの外れた甲高い声が少女の口から発せられた。

「凄いですぅ! 私を助けるためにたった二人で五人の上級生相手に立ち向かうなんて本当に凄い! 二人は私の英雄ですぅ!!!!!」

 どうやら彼女こそが上級生に囲まれて連れられ、それを見たアルマンが救おうとしたことでこの事件の発端となった少女のようだった。乱闘中にその姿が見当たらなかったことを思うと、どこかに隠れでもしていたのであろう。

 よくよく見ればその顔には見覚えがある。同じクラスの女子である。話したことはそんなにはないが、教室の中でよく他の女子とその甲高い特徴的な声で楽しそうに会話している姿を目撃していた。見ると極めて整った顔の持ち主の美女、いや美少女である。

挿絵(By みてみん)

 だがその美少女に感謝の言葉を捧げられながら抱きつかれるという、男なら万人が羨むはずのシチュエーションなのにヴィクトールはちっとも嬉しくなかった。

 少女の動作が女らしい動きと言うよりはどことなく動物じみた動きだったからかもしれない。まるで興奮した大型犬にじゃれつかれているような感覚でしかなかったのだ。可愛いけど離れてくれないかな、というのがヴィクトールの偽らざる心境だった。

「感謝の言葉は要らないよ。それよりも離れてくれないかな」

 本当のところを言えば、ヴィクトールは彼女の窮状を目撃してそれを助けようと思った訳ではないから、その言葉はくすぐったいばかりだったが、今は彼女の認識間違いをいちいち訂正している場合では無い。

「謙虚なところがまたまた素敵ッ!!」

 だが少女は背中をよじ登るようにしてますますヴィクトールにしがみついて、ヴィクトールの動きの自由を奪う。

「わ、わかったから、とりあえず離れて、ね!」

 ヴィクトールは少女の体を己の体から引き離そうとする。といっても背後からしがみつかれては、上から手を回しても下から手を差し入れても、巧く掴めもできなければ力も入らない。その試みが成功することは一切ありえなかった。

「離さないッ! 一生離さないよン♪」

 しかも少女はむしろぐいぐいと妖怪子泣きジジイのように、非力な外見とは裏腹の強力な力でしがみつき、ヴィクトールはますます身動きが取れなくなる。

「こらあっ!! そこで何をしているか!!!!」

 女の子相手に手荒なことも出来ず、結局身動きの取れないヴィクトールに野太い罵声が背後から投げかけられた。

 複数の靴音が走って近づいてきているのは感じられたが、上半身に蛸のようにからみついた女の子が邪魔になって逃げることすらできなかった。


 旧校舎と新校舎の境にある階段の踊り場、ヴィクトールやアルマンから死角になっている場所がある。そこに立って騒動を眺めていた一人の少女の下に前髪を切りそろえたショートカットの女子生徒が小走りで近づいた。

「お嬢様、お言いつけどおりに教官たちを呼んで参りました」

「ごくろうさま。これで事態のこれ以上の悪化は防げるでしょう」

 どうやらタイミングよく教師たちが現れたのは、この事件を目撃した彼女が通報したからのようだった。

「それにしても・・・貴族であることを利用して平民の下級生に無理難題を突きつけようとするなんて・・・どういう教育を受けてきたのかしら。貴族の恥さらしだこと。でも残念なことにああいった手合いは多いのでしょうね。実に困ったこと・・・」

「ええ」

「でもまさか五人もの上級生相手に殴りかかって救おうとする一年生がいるなんて思いもしなかった・・・しかも勝ってしまうなんて。教官がたをお呼びしたのは余計なお世話だったかしら」

「不確定要素は当てにせず行動なされることこそ何よりも大事なことかと。それに彼らは秩序を乱す不貞な輩です。遠慮斟酌など無用かと思われます」

「あら、窮地の女性を救う御伽噺の騎士みたいじゃない。素敵じゃなくって?」

「お嬢様・・・おたわむれを」

「ふふふ・・・冗談です。さ、私たちの役目は終わりました。後は教官がたに任せるといたしましょう。寮に帰りましょう、カミーユ」

 頭を下げて了承の意を表したカミーユに会釈すると少女は共に連れ立って階段を下っていった。


 少女に抱きつかれて逃げるに逃げられなかったヴィクトールは教官たちにあっさりと取り押さえられた。一人で逃げるのも気が引けたのだろう、アルマンも共に抵抗することなく捕まった。

 もっとも逃げても結果は同じであったろう。学内で起きた出来事であるし、顔もしっかりと見られている。上級生を連れて一年生の教室か寮を捜索すれば、すぐさま正体は判明してしまうのだ。

 一通りの取調べを受けた後、とりあえず解放されたが、翌日、ヴィクトールはアルマンと共に改めて呼び出しを受ける。

 直立不動の姿勢で並んで立たされ、教師から説教を二時間ほど頂戴する羽目になった。

「で先輩方はどういうふうに証言しておられるのでしょうか? まさかとは思いますが我々が理由無く殴りかかったなどと嘘をおっしゃっているのではありませんよね?」

 ヴィクトールの関心はひとつである。どういう処分が自分に下されるかだ。養父母の為にも退学は避けたかった。それにはどちらの言い分を信じたかと言うことが大きくものをいいそうである。

 だが辻褄(つじつま)を合わせて正当性を作らなければならない上級生の話よりは、女生徒の証言もある以上、どちらかといえば信憑性はヴィクトールらにあるはずであるが、信じられなくても信じたふりをする可能性はある。上級生は間違いなく全員貴族だが、こちらは平民二人ともう一人は貴族とは名ばかりの貧乏人なのである。

 社会的地位を考えると、どちらの味方をしたほうが得であるかは深く考えずとも答えが出るところだ。

「いや、二回生たちは転んだだけだと言い張って、君たちの名前など一言も口にしておらんよ」

 意外と男らしいところもあったのだなとヴィクトールはほんの少しだけあの上級生たちを見直した。もちろんまだ圧倒的に侮蔑の感情の方が大きいのではあるが。

 もっとも五対二で下級生に負けたのだ。しかも片方は彼らの嫌う平民である。貴族のプライドにかけても喧嘩があったことを口にすることはできないと考えたのが真実というところであろう。

「ということは私たちは無罪放免ですか?」

 殴られたほうが否認しているのである。すなわち下級生が上級生を殴るという前代未聞の暴行事件そのものが無かったということになる。

 ならば罰される理由が無いはずだ。

「そのようなことが通ると思うか!!」

 思わずヴィクトールの顔に喜びの表情が浮かんでいたのを目聡く見つけた教官はカミナリを落とした。

「ですが先生にも起きてもいない事件で生徒を罰する権利などどこにもないのでは?」

 絶対王政や貴族制といえども法律というものは存在しうる以上、守られる最低限のラインというものが存在するのではないかと思い、ヴィクトールはもっともな疑問を口にする。

「権利は無くても、私には歴史ある王立陸軍士官学校の規律を守るという義務がある! どんな理由があろうとも下級生が上級生を殴ることを見逃しておくことはできん! 君たちはまだ若く、学生気分かもしれないが、この学校に入学した時点で軍人に準じる存在となっているのだぞ! これは上官に反抗したのも同然なのだ! そしてこの今回のことはどういう訳だか、もはや全校中に知れ渡っている。軍の規律を守るためにも、君たちを罰せずにいておくわけにはいかんのだ!!」

「・・・では僕たちはどうなるのですか・・・?」

 アルマンも不安まじりに口を開いた。アルマンの家は区分するならブルジョア階級ということになるが、その言葉の持つ響きとは違ってそれほど豊かであるわけではない。アルマンの父は今で言うなら細々とした零細企業の町工場の社長といったところである。アルマンに勉強を受けさせるのも、それも陸軍士官学校に入れるくらいまで猛勉強させるのも並大抵のことではなかった。

 両親が自分を勉強させるために爪に火を灯すような生活をしてきたことを知っているだけに、アルマンはここで退学になっては両親に合わす顔がないと今更ながらに後悔し始めていた。

「まさか・・・退学ですか?」

「そうもいかん。君たちの話を鵜呑みにするわけではないが、被害を訴え出ないことといい、どうも非は二回生たちのほうにあるようだ。よしんばそうでなくても被害を訴えられてもいないのに君達を罰したら、そのことを間違った解釈で捉える者も現れかねん。士官学校内では上級生や貴族ならば下級生や平民を無条件で奴隷のように従えることが出来るとね。そんな生徒が現れたら大問題だし、そういった空気が蔓延した挙句にエスカレートして隠しきれないような事件が起きて、新聞沙汰になったら我が校の恥辱だ。そこで君たち二人にはこれから毎日、一週間の間、放課後新校舎の廊下の清掃を申し付ける」

「一週間、毎日夜遅くまで清掃・・・ですか」

 寮といっても軍隊式、食事すら決められた時間でないと取れないのである。

 新校舎だけであっても二人だけで清掃するには広すぎる建物だ。とても夕食の時間までに寮に戻ることは出来ないだろう。

 つまり一週間の間、ヴィクトールたちは夕食にありつけないということになる。それに考え至ったために思わずヴィクトールは教官相手に本音の混じった不満な顔を覗かせる。

「退学にならなかっただけでも有難いとは思わんのか!?」

 教官は机を大きく叩くとともに、ぎろりと不満そうな顔を見せる二人を睨んだ。


「腹減ったなぁ・・・」

 罰として新校舎の掃除を命じられて三日、何時間も二人きりでただっぴろい校舎を清掃するという疲労感よりも、まさに食べ盛りである年頃の二人には何よりも一食抜くことによる空腹が堪えた。愚痴を言いたくもなろうというものだった。

「そうですね」

 心なしかアルマンの返事にも元気が無い。

「これで右の階段は終わった。あとは四階を掃除すればやっと帰れる」

 一刻も早く帰ろうと掃除道具を担いで階段を四階へと上がろうとするヴィクトールにアルマンが後ろから声をかけた。

「それよりもヴィクトール、校舎の外を見てみてください」

 ヴィクトールが振り返ると、窓にもたれるように(たたず)むアルマンの姿が目に入った。

「綺麗な月だ。実に見事な景色じゃないですか」

 その言葉の通り、窓の外には満天の星空の中、煌々(こうこう)と輝く待宵月があった。丘陵の上に立つ士官学校から見下ろす街は夜に入って明かりも少なくなり、夜空をいっそう際立たせていた。

「ああ・・・確かにそうだな。素晴らしく雄大な景色だ」

 アルマンにつられてヴィクトールも思わずその雄大な風景に引き込まれ魅入ってしまう。人気の無い校舎の中、静寂の時が流れる。

 やがてヴィクトールは己が貴重な時間を無意味に潰していることに気が付いた。

「だけど今は暢気に月に見とれている場合じゃないぞ。口じゃなく手を動かす時間だ。今は一刻も早くこのつまらぬ仕事を終わらせて寮に戻ることだけを考えるんだ」

 何度もいうようだが士官学校は軍隊式だ。朝は格別に早いのである。一刻も早く戻らなければ夕食を食べられないことで落ちた体力が、睡眠不足で更に失われることになるのである。

「・・・そうですね」

 アルマンもそのことに思い至ったのか消極的ながらも同意を示した。

 だけど言葉とは裏腹にアルマンは少し名残惜しそうにしばらく月を眺めるばかりで、ヴィクトールに失望のため息をつかせたのだった。


 その日、校長室に賓客が訪れていた。賓客といったが、その人物は服装からしてみると女生徒である。しかも袖口の色を見る限り一年生であるようだ。

 だが校長も単なる生徒を叱るためとか褒めるためだとか、あるいはいかがわしい目的のために招き入れたというわけではなさそうだった。

 校長はその生徒に椅子に座るようすすめたり、お茶を出したりと熱心に機嫌を取っている様子が見うけられた。言葉遣いも丁寧でとてもこの学校の支配者たる校長が一介の生徒に対する態度ではなかった。

 生徒も臆すことも遠慮も一切せずに椅子に座る。前に校長を、そして横に屈強な男子生徒一人と、前髪を切り揃えた怜悧(れいり)な刃物を思わせる鋭い目をした女生徒を立たせたままだが気にも留めない。

「というわけで騒ぎを起こした上級生には厳重注意を、上級生を殴った不届きな下級生には一週間の清掃を罰として申し付けました」

 話題はどうやらヴィクトールとアルマンが起こした事件のことについてであるようだった。

「しかしこの程度で本当によろしかったのでしょうか。これでは騒ぎを起こした下級生に少し甘すぎるのでは?」

 校長の立場からすれば上意下達という軍隊の基礎中の基礎を教えるためにも、上級生に反抗するにとどまらず暴力をふるったヴィクトールたちにもう少し厳しい罰を与えるべきだと考えていた。

 なんなら放校処分でも良かった。二人を切り捨てることで綱紀を引締め、全体の秩序を守れるのならば安いものだと思っていた。

 それができなかったのは、王立陸軍士官学校の全権を掌握する校長であってもその意向を無視することの出来ない存在がこの件に介入したからだった。

 そう、目の前の少女である。

「殴られた上級生の方々は重症というわけではなかったのでしょう?」

 校長の目の前に座ったその美しい少女は小首をかしげてそう言い、校長の意見に懐疑的であることを言動で示す。

「一人が顎を砕かれましたが、それ以外の四名は軽症だという話です」

「命に関わる怪我で無いのでしたら結構です。上級生にも咎めだてするだけの非がありましたのですから。わたしの望みはこの件で貴族と平民の間にわだかまりが出来て両者の対立が深まらないように運ぶこと。貴族がこれ以降、下級生の平民に理不尽な命令を安易に下さぬよう、また平民の中に貴族への不満を残さぬように、多少は上級生に不利な裁定をしておいたほうが良いというものです」

 多少片手落ちの不正義な裁定であっても社会的な釣り合いが取れればいいというのがこの少女の考えであるようだった。

 少女は校長の説明に満足したのか立ち上がると、左足を斜め後ろの内側に引き、右側の足の膝を軽く曲げ、両手でスカートの裾をつまみ、軽くスカートを持ち上げて華麗にお辞儀を行った。

「これでお父様の顔も立ちます。校長先生有難うございました」

 校長は少女の挨拶に恐縮したのか深々と腰を折って最敬礼した。

「こちらこそ・・・殿下に余計な御心労をお掛けいたしました。申し訳ございません」

 校長の言葉に少女は鷹揚(おうよう)に頷いてみせた。

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