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自社に戻って……

私は久しぶりに休日をゆっくりと過ごした。

ミマツ産業に出張しての作業かなり大変であったが、なんとか工程通りに、しかも仕様追加も盛り込んでなので、私は充実感を味わっていた。

今日、休み明けの月曜日はいちど自社に戻り、ミマツ産業での作業を報告することとなっていた。私は意気揚々と会社に向かった。


朝、会社に着くと玄関先で営業の寺崎が声をかけてきた。


「秋村さん、出張大変でしたね。」


「いや、まあ残業続きだったけど、もう先が見えてきたからね。」


「そうなんですか?それは良かったです。なにやらとても大きなトラブルがあったと聞いていたので…」


「トラブル?」


「はい。出張先で秋村さんが大トラブルで大変だと……」


「トラブルって、別にトラブルは起こしていないけどな。追加仕様があったので工程通りに作業をするのに苦労はしたけど…」


「え?そうだったんですか。原田さんは、秋村がまたトラブって大変なことになってるって言ってましたけどね。」


「………」


私は一気に不快になった。

また原田か…。適当なことを社内で言いふらしているようだ。

あれだけの追加仕様があったにも拘らず、工程通りに作業を進められて良い気分になっていたのに、会社ではトラブルを起こして毎日深夜残業して、しかも休日出勤までしてるということになっているらしい…。


まあ、思い返してみると、そんなことも過去には何度もあったのは事実だか、今回はまったく違う。


「寺崎さん、吉沢部長も原田さんと同じように私がトラブってると思ってるのかな?」


「さあ、でもほとんどの人は秋村さんがトラブって大変だと思ってますよ。」


「そうか……。」


「あの…秋村さん、気を悪くされたのならすみませんでした。」


「いや、なにも寺崎さんがあやまることじゃないよ。話してくれてありがとう。今日の会議での報告ではっきりさせるから大丈夫。」


「はい。わかりました。私も会議には出席させていただくのでよろしくお願いします。」


私は自席へと向かった。おそらく険しい顔をしていたのだろう。その後は私に話しかけてくるものはいなかった。

席に着くと原田が話しかけてきた。


「秋村、ご苦労さん、大変だったな。」


「いえ……」


「まあ、おまえはいつもトラブってるから慣れっこになってるんだろうけどな。今回もかなりひどいことになってるみたいじゃないか?」


こいつは何を言ってるんだ?


「原田さん、ひどいことって何ですか?」


「おまえの残業時間を見れば状況なんてすぐにわかるんだよ。」


「報告書は読んでいただいてないのでしょうか?」


「そんなことを言ってるんじゃない!おまえの残業時間が異常に多いと言ってるんだ。少しは仕事のやり方を工夫したらどうなんだ?

それともそんなに最多残業時間のタイトルが欲しいのか?」


「私だって好きで残業してる訳ではありませんよ。」


私は既に冷静さを失っていた。

いくらなんでも我慢の限界だ……。


「原田さん、もうあなたと話すことはありません。あの作業をするのに残業が多すぎると言われてしまったら、私はもう今のプロジェクトの仕事はできません。ここで降ろさせていただきます。」


「秋村、おまえ何を言ってるのかわかってるのか。仕事を放り出すと言うのか。そんな無責任なことが許されるわけないだろう!」


「マック電子の社員でなくなれば責任も何も私には関係のない話ですよね?明日、退職届を持ってきます。今日は有給としますのでよろしくお願いします。」


「退職届けだ?何を言ってるんだ、おまえは……?」


私は原田を無視して、足早に会社を後にした。


ついに言ってしまった。退職という言葉を…。

ここ何年か積もっていた思いが一気に爆発してしまった。

しかし、たしかに感情に任せて吐き出した言葉ではあるが、日々思っていたことでもあるので、後悔の念は無かった。

私は自宅へ向かう電車の中では冷静さを取り戻していた。

いままで口に出せなかった退職という言葉を言えたことになんだか嬉しくなって、不思議とうきうきした気分になっていた。


さあ、明日は退職届けを出してすっきりしてやろう。

明日が楽しみだ。


その頃、会社では報告者である私が不在のまま会議が行われていたらしい。

内容は想像もつかないが……。


今の私には既にどうでもいいことだ。

好きにやってくれたらいい。

とにかく明日は退職届けを提出して、あんな会社とはおさらばしよう……。


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