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【第2話】神と呼ばれる少女(2)

「おじい様! お母様は、どうされたのですか!?」


 六つの誕生日を迎えた朝、梅雪(みゆき)は祖父に問うた。


「あぁ。あの不信心者は、天罰を受けたのです。それから…」


 にこやかに笑い、感情が読み取らせない祖父の口から紡がれる言葉が続く。


「これからあなたは、人間ではありません」


 突然告げられたことの意味が理解できなかった。

 困惑する梅雪を前に、祖父は高笑いをする。


「はは! はぁ、…ようやく。…ようやくですよ。あなた様を本来あるべき立場へと戻せるのです。ふふっふっ、あっはっはっは!!」

「お、おじいさ…」


「その呼び方はおやめなさいっ!!!」


 眉を吊り上げて豹変した祖父に、身体を震わせる。

 怯んだ梅雪を見た祖父は、徐々ににこやかな表情へと戻しながら諭すように言った。


「神ともあろう御方に“家族”などありません。…やはり、ここまで人間として過ごした()()を取り除くには時間がかかりそうですね」




 その日以降、どのように一日一日を過ごしたかは、もうあまり覚えていない。

 ただ、祖父に言われるがまま、この身に宿る力で村人の傷や病を治す日々が続いた。

 

 人間らしく振る舞うことは禁止された。

 もし人々を癒す際に移った傷や病に苦しんだり、祖父に反抗的な態度をとったりするものならば。


「ああっ、穢れが憑いている!! 神が器から離れてしまったっ! 呼び戻せっ、神を呼び戻せ!!!」


 祖父は木刀で梅雪の身体を殴りつけた。

 祖父にとって梅雪とは、神を宿す器にすぎず、その自我は邪魔なだけだった。

 少女が抵抗をやめても止まらない体罰は、少女の目から感情が消えるまで、永遠と続いた。

 ようやく許されても、追い打ちをかけるように清めの儀式として冷たい泉に数時間入水することを強要される。見張りをつけられ、寒さに震えることも許されず、ただ、ただ、皮膚の感覚がなくなる冷水の中で、時が早く過ぎるのを待つしかなかった。


 誰も、助けてくれる人はいなかった。

 母は、あの日の朝には既に亡くなっていたことを、後から知らされた。

 村の人々は、「わが村に神が来た…!!」と喜び、村長にまつりあげられた祖父の意のままだった。

 __人間としての梅雪に味方してくれる人は、誰一人もいなかった。




 だから梅雪は、ただ感情を押し殺し、黙って従うしかなかった。

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