オレグの生い立ちまとめ
オレグのまとめ
いつかきちんと書きます(笑)
家庭の中に父親はいない。
オレグの幼いころの家庭の記憶に、父親の陰はつねになかった。
物心がつく頃、オレグは大きな屋敷に母と2人と執事、一人のメイドのみと共住んでいた。
その頃は、特に生活に困っていることはなかったと思う。
常に新しい洋服は用意されており、食べるものも三食用意され母も働かずとも生活していた。
時折やってくる、亜麻色の髪の貴族の男が母と親しげに話し泊まっていく。
オレグもその男に笑いかけられ、膝の上に乗せられかわいがられていた。
髪をなでられ、眠る前に絵本も読んでくれるなどそれなりに大切にされた。
男が何者か分からなかったが、オレグも特に嫌な感情などはなかった。
ある日の午後。
中庭で執事が木剣を拾い上げ、冗談半分に「戦いごっこ」を持ちかけた。
幼いオレグは笑いながら受け取り、小さな体で構えた。
そして――その瞬間、風が変わった。
執事が軽く振り下ろした剣を、少年は本能で受け止めた。
刃の角度、足の向き、重心の移し方。
どれも誰かに教わったことのないものだった。
それでも身体は迷いなく動き、次の瞬間には、執事の腕を打ち払っていた。
「お坊ちゃま……!?」
驚く大人の声。
そのやり取りを、ちょうど来訪していた領主――オレグの父が目にした。
男は一瞬黙り、次に目を細める。
「……あの兄に、似ているな」
冷静で、怯えない。
自分にはない資質。
愛人の兄――かつて王国でも名の知れた剣士、ユーリ・ヴォルコフ。
その面差しと同じく、少年の中に“戦士の血”が息づいていると、父は確信した。
その日から、すべてが変わった。
“将来のために”という言葉と共に、オレグは母の元を離れた。
妻子ある貴族の領主であると、理解したのはオレグが7つになったころだった。
将来のために。という一言で、父は自分の城にオレグを呼び寄せ自衛団の騎士の訓練へ息子を参加させ始めた。
特別に父が剣術の稽古に老獪な老騎士を教師にしてくれた。
※
父の城。
重厚な石造りの廊下に、少年の足音がこつりと響く。
その日からオレグは、自衛団の訓練に加わることになった。
息子のため――いや、自分の血を証明するために。
父は最上の剣士を呼び寄せた。
その老騎士の名は、グレゴリー・ドラゴミール。
灰色の髪と顎髭をたくわえ、老いてなお鋼のような肉体を持つ男だった。
琥珀色の瞳は老獪に光り、少年を見る目に、すでに戦士の直感が宿っていた。
初めて持たされた剣の重み。
しかし、オレグの手にそれはなぜかしっくりと馴染み、どう振るえばいいか最初から分かっていた。
老騎士が微笑みながら何の説明もせず、上下左右に剣を巧みに振るいオレグに打ちこむ。
幼い領主の私生児が、それを短剣で受けると踊るように同じ動作を剣術の師に返した。オレグの才能は、最初から突出していた。
そばで見ていた自衛の騎士達が、目を見張るほどの身体の動きであった。
「ふむ」
老騎士はオレグを気に入り、次に足を使ってさらに踏み込み身体のバランスを崩すように連撃を繰り出したが、オレグはそれにも動じない。
あっさり受けきると、おなじ動きを瞬時に返してきた。
「・・・いいですな。本当に、私が育てても?」
老騎士は目の前の少年の能力の高さに満足し、胸の踊りを抑えきれず主人に確認した。
父親は想像以上の息子の才能に微笑み、テラスで中庭の様子を確認しながら優雅に果実を口に運んでいる。
熟れた葡萄をついばみ、正妻の子供達よりも何倍も才能のある愛人の子供の力を幸運としてうれしく感じていた。
「かまわん。私の為にこの国一の騎士にしてみせろ」
その言葉が、オレグの運命を決定づけた。
母の優しい手を離れ、父の打算の手に導かれた少年は――
この日、初めて“戦士”として生まれたのだった。
※
父が病に倒れ、亡くなったのはオレグが十二の年だった。
屋敷の灯は沈み、正妻とその兄が新たな主として館を握った。
愛人の子であるオレグと母に、もはや居場所はなかった。
雨の日の追放から、季節は幾度も巡った。
二人は城下町の外れにある古びた宿屋の一角を借り、そこで慎ましく暮らしていた。
母は酒場で給仕をし、慣れない手つきで木の皿を並べた。
手は荒れ、背は小さくなっていった。
かつて上等なドレスを着ていた面影は、もうどこにもなかった。
それでも、オレグが帰ると微笑んだ。
「おかえりなさい。無事だったのね」
その一言だけが、彼の心を支えていた。
オレグは市場で荷物を運び、用心棒として夜の店先に立った。
まだ十二、十三の少年。
それでも背は伸び、筋肉が固く締まり、灰色の瞳には冷たい光が宿っていた。
荒くれた男たちは、最初はその年若さを笑った。
だが、数日もすれば誰も軽口を叩かなくなった。
オレグの動きは速く、鋭く、正確だった。
酔っ払いが刃物を抜いた瞬間、腕をひねり上げて地面に叩きつける。
一度も殺さず、しかし二度と逆らう気を起こさせない。
その姿を見て、誰もが思った。
――あの子は、剣を知っている。
---
母が倒れたのは、その冬だった。
過労と寒さで身体を壊し、ついに床から起き上がれなくなった。
薬を買う金はなく、食べ物も減っていく。
「俺がなんとかする」
オレグは短く言って、山賊討伐の依頼を受けた。
危険な仕事だった。だが、金が入る。
血を流し、仲間を失い、それでも戻ってきた。
手には銀貨の袋――そして血の匂い。
その帰り、彼の前に一人の老人が立っていた。
灰色の髪と髭をたくわえた、老騎士グレゴリー・ドラゴミール。
かつて父の命で剣を教えてくれた恩師だった。
「……こんなところで何をしている」
「稼いでる」
短い答え。
オレグの灰色の瞳は冷え切っていた。
老騎士は深く息を吐いた。
「お前の剣は、そんな小銭のために振るうものではない」
「なら、母を助けてくれるのか」
「助けるとも」
その声は穏やかで、しかし確信に満ちていた。
「お前なら王都の見習い騎士学校に入れる。
私の弟子として推薦状を書く。半年もすれば正式に取り立てられる。
――行け、オレグ」
少年は唇を噛んだ。
母を置いていくことが、何よりも怖かった。
だが、グリゴリーの眼差しは真っ直ぐだった。
「剣を握る者が守るべきものは、今この瞬間だけじゃない。
未来を守るには、力がいる。お前には、その力がある」
その言葉を胸に、オレグは母の寝床のそばに膝をついた。
「必ず戻る。必ず」
震える母の手を握り、涙をこらえた。
翌朝、まだ夜明け前。
オレグは荷物を背負い、馬車に乗った。
扉が閉まる瞬間、窓の外に見えた母の姿。
その微笑みが、彼の中で永遠に焼きついた。
※
王都の見習い騎士学校――。
朝から訓練場には土埃と怒号が舞っていた。
「姿勢を崩すな! 体幹で支えろ!」
「うわっ、落ちるーっ!」
馬術訓練では毎日のように誰かが馬から落ちていた。
そんな中で、オレグは黙って馬を走らせていた。
手綱を強く引く必要もない。
馬の動きを読むように体を傾け、脚で軽く合図を送るだけでいい。
風の中で、馬の呼吸と俺の呼吸がひとつになる。
(……これが“基礎”か)
グレゴリーの訓練を受けていたオレグには、拍子抜けするほど簡単だった。
周囲のざわめきも、教官の指示も、あまり耳に入らなかった。
※
剣術の授業。
教官が模範を見せるために、生徒の中からオレグを指名した。
「お前、少し構えてみろ」
木剣を握る。軽く息を吸い、相手の足を見た。
――左重心。次は切り返し。
カンッ。
木剣がぶつかる音。
気づけば、教官の剣が宙を舞っていた。
「……すみません」
「……おい、なにをした」
教官の顔がみるみる赤くなっていく。
オレグはただ、静かに答えた。
「教官の踏み込みが甘かったので、反射的にそこを突きました」
訓練場がしんと静まり返った。
何人かの生徒が息を呑み、教官は言葉を失ったまま剣を拾う。
「……お前はもう、自主練をしていろ」
短く言い残して、背を向けた。
オレグは少し首を傾げた。
「……はい?」
(怒らせたのか?)
意味が分からず、ただ馬を引きながら訓練場を出た。
数日後。
昼休み、廊下で教官の姿を見つけ、勇気を出して声をかけた。
「教官。あの……何か、俺は失礼なことをしてしまいましたか?」
一瞬、沈黙。
教官はゆっくりと俺を見た。
その目の奥には、冷たい光が宿っていた。
「……貴様はなぜここに来た?」
「え?」
「お前ほどの腕前なら、どこかの私営騎士団にでも雇ってもらえるだろう。
なぜ、わざわざ見習いとして王立の学校に?」
淡々とした声だった。
けれど、そこには刺すような苦味があった。
オレグは少しだけ目を伏せ、言葉を選んだ。
「……俺は、王の騎士になりたいからです」
「理由は?」
「……母が、誇りに思えるように」
教官は短く息を吐き、目を逸らした。
「……勝手にしろ」
背を向けて去っていくその姿を見ながら、オレグ胸の奥が少しだけ痛くなった。
強さは、どうしてこんなにも孤独を運んでくるのだろうか。
けれど、剣を握る手だけは、緩めなかった。
放課後、誰もいない訓練場で一人、剣を振る。
夕焼けが剣の刃に反射し、茜色の光が舞った。
(強くならなきゃ。あの日、誓ったから)
夜風が吹く。
月の光を受けた剣の刃の中で、オレグの目は静かに燃えていた。
卒業間際に、イーゴリにより第二騎士団に拾われた。
才能はあるが、扱いにくい見習い騎士と教官に評価されたオレグを、ほかの騎士団はみな避けた。
騎士団に入れたのは、イーゴリの聡い見抜きがあったからこそだと思い、オレグは彼に付き従い戦争に身を投じた。
母はグレゴリーに保護され、一命を取り留めて細々と慎ましやかに生きていた。
オレグは己の給与の半分を母に仕送りし、年に一度は会いにいって面倒をみた。
16歳ながらも騎士として成熟した力を持つ少年は、やがて年齢を重ね、騎士としての戦争を重ね…
そして、20歳になる頃には、国では名を知らぬ者などいない、英雄へと成り上がっていった。
※
北部遠征 ――再会
雪が舞っていた。
灰色の雲の下、白銀の山脈を背景に第二騎士団の軍勢がゆっくりと進む。
馬の吐息が白く散り、鎧の継ぎ目に霜が張りつくほどの寒さだった。
先頭に立つのは、黒いマントを翻すイーゴリと、その右隣を並走する若き騎士――オレグ・ヴォルコフ。
亜麻色の髪は短く刈られ、雪の結晶がちらちらと張りついている。
馬上の姿はまっすぐで、まるで一枚の絵画のように整っていた。
そのときだった。
行軍列の中から声が飛んだ。
「――ヴォルコフ! 久しぶりだな!」
低く力強い声。
前列の騎士たちが思わず顔を上げる。
声の主は、別部隊の先頭にいた男だった。
厚手の毛皮のマント、胸には第一騎士団の紋章。
オレグは手綱を引き、わずかに振り返る。
灰色の瞳が、その声の主をまっすぐ見つめた。
「……誰だ?」
ヘルムの下、軽く首を傾げる。
まるで旧友に会っても、近所の犬の名を思い出せないような淡々とした調子だった。
相手の男――かつての同級生だった――は、驚きで口をあけ、それから苦笑した。
「……はは、だよな。そりゃ覚えてねぇか。
昔、訓練でお前に剣のコツを教わった奴なんて、何百人もいるもんな」
オレグは眉を少しだけ上げて、静かに答える。
「……そうか。悪い」
それだけ言うと、また前を向いた。
雪の中、淡々と馬を進めていく。
隣でイーゴリが笑いを噛み殺すように鼻を鳴らした。
「冷てぇな、お前。人気者の自覚くらい持て」
「……人気者?」
オレグは首を傾げ、心底不思議そうに答えた。
「ただ剣を振ってただけだ」
イーゴリは肩をすくめ、空を仰ぐ。
「ま、そういうとこがまた惹かれるんだろうさ」
雪が降りしきる。
オレグの肩に積もった白が、彼の灰色の瞳の中で静かに光っていた。
行軍の後方で、再会した男は仲間に言った。
「……やっぱ、あいつは昔のままだな。強くて、どこか遠い」
その声は雪に溶け、すぐに掻き消えた。
遠征の夜、焚き火の明かりが照らすその若き英雄の横顔に、
もう“少年”の面影はなかった。
16歳のオレグ(模擬戦の頃)は身長160センチくらいで、一応20歳までに170センチにはなれました。
しかし、育ち盛りに兄に母と家を追い出されたので、働きづめでろくにねれず食べられなかった事。
元々母が華奢で小さいという遺伝的要因。
労働と学校での過剰なストレスなど、重複する理由が原因で身長はそこで止まってしまったようです。
私の周りには高身長の人が多いので割と小さめと表現していますが、そこそこ伸びたのでチビと言われるほどでもないのが救いかと。
そのあたりも後々描けたらと思いますが、とりあえずまとめました




