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オレグと魔女1

そのうちちゃんと書く予定のオレグのロマンス(笑)

めちゃくちゃかんたんにまとめてみました。


【騎士団詰所】


20歳になったオレグ。

もう少年ではなく大人。身長も10センチほど伸び、今では単独任務も任される凄腕の騎士となっていた。


「任務の前に、薬を買いに行きます。森に“よく効く薬”を売る魔女がいるとか」


詰所の静寂を破るようにそう言った瞬間、団長イーゴリの顔が露骨にしかめられた。


「魔女だぁ? そんなもんに頼らんでもいいだろ。お前はケガなんて滅多にしねぇじゃねぇか」


眉間に皺を寄せる合理主義者。オカルトを一番嫌う男である。


「オレグくんが薬なんて意外ですね」

書記官のケンジが、不思議そうに首を傾げた。


「……怪我は少ないですが、腹を下しやすいんです」


「腹?」


「拾い食いするからでしょうか」


「まずはそれをやめてから薬を買えぇぇ!!!」


ケンジの絶叫が詰所に響き渡る。

オレグはぽかんとした顔のまま、犬のように首を傾げていた。


そこへイーゴリが腕を組み、ふと思い出したように言う。


「お前……女も拾い食いしてなかったか?」


「そういえば」

オレグは淡々と頷いた。


「この前、宿無しの女が家にいましたね」


「……は?」


「最近、消えました」


静寂。


イーゴリは次の瞬間、腹を抱えて笑い出した。

「はっはっはっ! 相変わらず適当だな、オレグ!!」


対してケンジは真っ青になって絶叫する。

「め、めちゃくちゃだ……っ!! そんな生活、やめてくれぇぇぇ!!!」


オレグは首をかしげたまま、きょとんと一言。

「……でも、助けてあげたんですよ?」


その言葉に、イーゴリの笑いが止まった。


いつもと変わらぬ無表情。

だがその奥にある「ためらいのない優しさ」に、イーゴリはほんの少しだけ、眉を上げた。



【出会い】


森の奥はひんやりとしていた。

朝露を含んだ草の匂いが、足元から立ち上る。

馬を木に繋ぎ、オレグはローブのフードを深く被りなおした。


木漏れ日が差す一本道の先、蔦に覆われた小屋が見える。

戸口の上には乾かした薬草が束になって吊るされ、

扉の前には、野花の鉢と小さな木の椅子が置かれていた。


トントン。

扉を軽く叩くと、奥から小さな声がした。


「……どなたですか?」


「薬を買いに来た。第二騎士団の者だ」


中から、ぱたぱたと慌ただしい足音。

しばらくして、控えめに扉が開いた。


現れたのは、深い茶色のローブを纏い、

顔を影で隠した若い女だった。

手にはすでに、薬包をいくつも抱えている。


「……腹痛止めと、傷薬、ですね?」

「……ああ」

「破傷風止めは……念のため、こちらも」


手際よく包みを並べていく。

乾いた草と煎じ薬の香りがふわりと漂い、

オレグは無言のまま、視線を少しだけ落とした。


(……女だ。醜女か?)


顔はよく見えないが、すすで汚れた顔は黒く薬草の匂いもきつい。

だが、余計なことは言わない。

金を置き、受け取る。それだけ。


すると、彼女が慌てて小さな紙包みを追加した。


「えっと……その……たくさん買ってくださったので……おまけです」

「おまけ?」

「はい。朝に飲むと、お腹ぽかぽかして……その、体が温まります」


声はおずおずとしていたが、誠実で、どこか安心感がある。

オレグは小さく頷いて、紙包みを受け取った。


「……ありがと」


女は少し驚いたように目を瞬いた。

フードの奥で微かに笑みが浮かんだのを、オレグは見逃さなかった。



翌朝。

森を出て宿に泊まったオレグは、言われたとおりそのお茶を煎じて飲んだ。


ほんのり甘く、草の香りとともに体の芯が温まる。

それだけで、胃の重さがすっと消えるようだった。


その日一日、彼の腹は穏やかで、

戦闘訓練の後も不思議と体が軽かった。


それから彼は、森へ行くたびに

薬を買うのが“恒例”になった。



-※


小屋を訪ねるたびに、

彼女はおずおずと手を動かし、薬草を刻みながら言う。


「……お腹の調子は、どうですか?」

「悪くない」

「よかった……この前のは、少し苦かったかもしれませんが……」

「いや。効いた」


いつものように淡々と答えるオレグ。

だが、出会うたびに彼女の声色の柔らかさが

ほんの少しずつ彼の胸の奥に残っていった。



【森の小屋】

それから数年後。

いつもの森の奥にある薬草小屋。

窓からは湯気と薬草の匂いが立ちのぼり、吊るされた乾いた葉が風に揺れている。


机の上には、いくつもの瓶と粉薬。

その間で、ヴァシリサは器用に手を動かしていた。

淡い金の髪がローブの隙間からのぞき、首筋にかかる。


「……はい、これが腹痛止め。こっちは傷薬です」


淡々と告げながら、彼女は木箱を押し出した。

オレグはいつものように無表情で受け取る。


「……ありがとう」

「どういたしまして」


二人の関係は、もう何年も前からの“知人”だった。

薬を買いに来る騎士と、森に住む魔女。

それだけの間柄。


けれどその日、ふとした拍子に、ヴァシリサがローブを脱いだ。


「……熱いですね、今日は」


汗を拭おうと、ふわりとローブのフードを外した瞬間――

陽の光が差し込み、黒い濡れたように綺麗な髪がこぼれ落ちる。


白い頬、長い睫毛。

想像していた“魔女”という言葉からは、あまりにもかけ離れた顔。


オレグの呼吸が、一瞬止まった。


(……若い女、だったんだな)

(しかも……きれいだ)


言葉も出ないまま、ただその横顔を見つめた。

不思議と胸の奥が熱くなる。

その正体も、意味もわからないまま。


次の瞬間、彼は迷いなく動いた。


「え……きゃっ!?」


ヴァシリサの視界が一瞬で逆さまになる。

床の上に押し倒され、息を呑む。


「ひぃっ!?!? な、なにをなさるんですか!?!」


顔を真っ赤にして、手足をばたばたさせる。

オレグはその上から淡々と見下ろしながら、

ごく真剣な声で言った。


「……ヤるのかと思って」


「ちょ、ちょっと待ってください!! だめですだめですだめですっ!!!」


「……だめ?」


「だめです! お付き合いもしてないのに押し倒すなんてっ……捕まりますよ!!」


「……捕まる?」


「警察のご厄介になってしまいますっ!牢屋です牢屋!」


涙目でオロオロしている彼女に、オレグはしばらく沈黙した。

考え込むように目を伏せ、それから真顔で言った。


「……じゃあ、付き合えばいいのか」


「ひぃぃ!?!? 血迷わないでください!!!」


「?血迷ってない」


「だめですだめです!だめったらだめです!まずは……おともだちからです!!!」


その言葉を聞いたオレグは、すっと体をどかした。

そして立ち上がり、身体についた埃を払いながら淡々と告げる。


「……わかった。知人から友だちになろう」


差し出された大きな手。

ヴァシリサはおそるおそる、自分の小さな手を重ねた。


「よ、よかったです……!お友だちですね」


「ああ」


にっこりと笑うヴァシリサに、オレグも小さく頷いた。

だが次の瞬間、彼は首をかしげて尋ねる。


「友だちって、やるのか?」


「ひぃぃぃ!?!?!?やりません!!やりませんからっっ!!」


「そうか」


「そうですっ! 友だちはお茶を飲んだり、お話したり、時々一緒にお出かけしたりするだけですっ!!」


「なるほど」


オレグは妙に真剣に頷いた。

そして、まっすぐに言い放つ。


「……じゃあ、お出かけもしよう」


「そ、そういうことでは……っ!」


オロオロしたヴァシリサの悲鳴まじりの声が、森の中に響いた。

乾いた木々の葉が、ふたりの頭上でさらさらと音を立てていた。





【スケートリンク】


冬空の下。

リンクの上をオレグが無表情のまま、獣のようなスピードで滑り抜けていく。

しなやかな足運び、鋭い加速。まるで氷上の戦士。


観客席の端。

ヴァシリサは分厚いマフラーに顔を埋め、両手でカップのココアを抱えながら、ぽつりと呟いた。

「……完全に独壇場」


そこへ偶然やってきたケンジ。

「なにあれ……保護者が見守ってるの?」


振り返ったヴァシリサは、ぎこちなく微笑む。

「あ。けんじさん」


次の瞬間、オレグがスーッとリンクを滑り抜け、ケンジの目の前で止まった。

白い息を吐きながら、淡々と告げる。

「スケートは地元でいつも一位でした。速くて気持ちいいですよ」


ケンジは目を細め、隣のヴァシリサをちらりと見やる。

「ひとりか?……あの人は?」


オレグは珍しく固まった。

一瞬、氷の上で転びそうになりながらも、真顔で答える。


「……お友だちです」


「え!?」

ケンジの声が裏返る。

オレグに「友達」などという概念が存在したこと自体が驚愕だった。


だが当人は淡々と続ける。

「先ずは友達から…と言われまして」

「ま、まずは!?」


ケンジのこめかみが引きつる。

(……誰だよ、オレグを教育してるのは)


オレグはわずかに首をかしげ、さらりと言い放った。

「そのうちヤりますけど」


「前提なの!?!?」


ケンジの絶叫が冬空にこだました



【スケートリンク】


休日の午後。

青空の下、リンクは親子連れと恋人たちでにぎわっていた。

その中に――いつもの無表情で滑る青年、オレグの姿があった。


しなやかな脚さばき。

氷を切るたびに白い粉雪が舞い、陽光を受けてきらきらと光る。


観客席では、ヴァシリサとケンジが並んで見守っていた。

「……やっぱり速いですね」

「速いどころじゃないよ!あれ、もう競技会レベルだよ!」

ケンジの声は若干引きつっている。


そこへ、近くで遊んでいた子どもがつつっと寄ってきて、

興味津々にオレグを見上げた。


「お兄ちゃん、トリプルアクセルできる?」


オレグは無表情のまま首をかしげた。

「……トリプル?」

「3回まわるやつ!」

「…なるほど」


理解していないような返事を残し、

オレグはすっと氷の中央に移動した。


「……ちょっと待って、まさか――」

ケンジが止めるより早く、

オレグは助走をつけて跳んだ。


ひゅっ、と軽く1回転。

見事に着氷。


「わぁぁ!!!」

子どもたちが拍手する。

オレグは一礼して、静かに呟いた。

「……回るだけですか。簡単ですね」


ケンジのこめかみがぴくりと動く。

「いや、それ簡単じゃ……」


言い終わる前に、オレグは再び滑り出していた。


二回転。

拍手。


三回転。

歓声。


三回転半。

悲鳴。


リンクの端で転んだスケーターが思わず叫んだ。

「な、なにあの人!? 空飛んだ!?!?」


ケンジは頭を抱えた。

「ちょっと! 物理法則の限界超えてるから!!!」


オレグはつるりと着氷し、淡々と息を吐いた。

そして、周囲がざわめく中、あくまで真面目に告げる。


「できました。簡単ですね」


ケンジは氷点下の気温の中、汗をかいていた。

「いや……やべぇよ、君」




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